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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第1章【動き出す運命】
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【望みの開花】

青い空の上に佇む白い雲。その中から太陽がゆっくりとこちらの方に顔を出してくる。


時刻は朝の6時前後――――――。


私は、ある理由でここ旧東京都へと足を運んでいた。


さっきまで私は廃墟となっていた室内でピンチに陥っていた天堂政希こと……政希さんを助け、そしてなんとか2人の殺人者(マダラー)を倒したわけだけど。


それから私達2人は廃墟をでて、近くにあったベンチでお互い話している。


さっきまで、政希さんの様子がとても変だった。


例えれば、なんか誰かに蝕まれているような感じ。


口調が急に変わり、荒い言動ばっかり言っていた。


その表情、姿勢からは、“怒り”、“憎しみ”、そして“疑い”というもの伺えた。


政希さんの言動を聞き、私は涙が止まらなくなり、心が痛くなる。


でもその政希さんの言葉を聞いて、私は“彼を救いたい”という決意が強く(みなぎ)った。


「折り入って頼みたいことがあるんだが…………いいか?」


その一言を聞いて――――――。


政希さんは辛いこと、背負っているものがあまりにも多すぎると思う。


何にせよ、彼は仲間を失ってからずっと1人で生きてきたのだから。


私はずっと前からあなたのことを知っている。


あなたが前の戦いで戦いを終わらせるきっかけとなった人だということを。


だけど、その戦いで失ったものがとても多い。


そんな政希さんの力に私はなりたい。でも私は彼の足でまといにならないだろうか。


1番の心配がそれである。


「いいですよ……話して下さい、その()()()()()()()()()


でも人は答えの鍵を見つけない限り、前へは進めない。


歩き続ければきっと道は開ける。そしていつかきっとその道は“平和への道”へと行ける…………私はそう信じている。


……政希さん、辛いのはあなただけじゃない。私だって、他のみんな……いや、この星に生きている者はみんな……それぞれ少なくとも1つは、辛いこと、悲しいこと、憎いことはあるはず。


けど、それを1人で背負っても自分がさらに辛くなるだけ。


そんなあなたの力に私はなりたい。


「お前を……」


閉ざされた道を人はいつだって――――――。


「俺の……」


道端で咲きそうな花の(つぼみ)みたいに人は開花できる。


だから私は政希さんの――――――。


「お前を俺の組織に入れさせてくれ!」


政希さんは頭を下げながら、私に手を差し出す。


組織の勧誘か。これは悪くない。


だって人をまた手助けできるのだから。


今まで色んな組織には入ってはいたけれども、まともに長く続けられた組織はなかった。ほぼ入っていた組織は、入って数日後にすぐ辞めるというパターンを私はずっと繰り返していた。


でも今回は違う。 何故なら目の前には、父が信頼していた人がいるからだ。


拍子抜けのところやドジな面もあるけど、彼は根はいい人。信頼していい人だ。


「政希さん……」


「駄目……かな?」


不安そうに頭を上げ、私の方に視線を向ける。


「足でまといにならないか心配です」


「大丈夫だ、そこは俺がなんとかするって」


「“なんとかする”って政希さん、ろくに上手く戦えないじゃないですか」


「ハハ……そうだよな、俺そんなに他の殺人者(マダラー)より弱いし、強くもない」


「それでもな、俺はお前の手助けにはなれると思うんだ」


「……政希さん」


「でも政希さん、それで万が一あなたの身に何か起きたら…………」


「その時はお前がきっと守ってくれる、俺はそう信じてるから」


“守る”それが政希さんの意思の結晶か。なら私は……。


「そうですか、いざという時の私ですか でも私がもし……」


先を言おうとしたら、政希さんが“待て”と手のひらを私に向けた。


「死なせない…… 俺も……お前も」


「…………」


「全員生き残るってことですか?」


「あぁ……」


「無理ですよ、こんな殺人世界で全員が生き残るだなんて」


無理な話だ。 犠牲1人も出さずに生き残るなんて……。それは夢のまた夢。可能性は0に等しい。でもそれでも政希さんは………………。


「可能性を信じる 僅かな可能性、そして希望を 例えその可能性が0だとしても俺は、その可能性にかける…………!」


「その言葉、嘘偽りないですね?」


「当然だ、仲間にそんな嘘つくわけないだろ」


政希さんは、その“全員が生き残る可能性”をかけた。その不可能に等しいその僅かな可能性を。


なら私はもう迷うことはない。だって今の私の居場所は此処にある。


太陽が顔を出す。 暖かな眩しいその光を出して。


「政希さん」


「…………ッ!」


私は差し出された政希さんのその手を、しっかりと自分の手で握った。


彼の手はとても暖かった。優しい感じの温もりみたいだった。


私は彼について行く。何があってもだ。


政希さんは私を導いてくれる。そして私は見たい。政希さんが作ろうとしている“未来”を。


きっとそこに明るい未来が私達を待っている。きっと…………。


「ついて行きますよ、そして作りましょう 私達の明るい未来を」


「蒼衣……」


政希さんの目から涙が零れ落ちる。


「政希さん、あなたはもう1人じゃない、私があなたを守るから」


「そのセリフ、お前のお父さんが、よく似たようなことを言っていたよ」


「そうですか、まぁ父の親譲りですよ」


父とよく似ている。それは嬉しいような、そうでもないような。


「それじゃ、東城蒼衣、お前を俺の組織、ノヴァ・マスター・オペレーションズへの入隊を許可する」


「はい! よろしくお願いします政希さん」


「あ、因みに言っておくが試験なんかは必要ないからな?」


試験必要なしの組織ってなんなの? まぁ政希さんらしいからいいけど。


「そうだろうと思っていましたよ」


「気づいていたのかよ!?」


政希さんは驚きを隠せないような表情で、私の方を見た。相当驚いているみたい。


「フフ……政希さん、お手柔らかにお願いしますね」


「いや、むしろそれはこっちのセリフなんだが?」


「早い者勝ちですよ なのでこの勝負私の勝ちです!」


「いつから勝負だったんだよ? まぁいいか」


つくづく政希さんは面白い人だ。貧弱レベルの殺人者(マダラー)ではあるけど、やっぱりイジったら楽しい人だな。


それから暫くして――――――。


「さてそろそろ行くか」


政希さんは歩き出す。


「電車乗って、帰るつもりですか?」


「当たり前だろ、帰ったらお前のことで色々やらないといけないことが山積みだ」


「でも、政希さん今、朝の7時ですよ? 」


「それがどうしたんだよ」


政希さんは苦い顔をする。


「新東京都の便、次は11:00ですよ? 仮に駅まで歩いたとしても9:00ぐらいです」


「なに?え、じゃあ……」


「そうです、今行ったところで帰ることはできませんよ」


「………………」


「まあ政希さん、ゆっくり話ながら行きましょうよ」


ここは時間潰しに話しながら歩く方がいいだろう。


少しは時間潰しにはなると思うし、それに政希さんのことをを沢山今のうちに聞いておいた方がいいかなと考えたからである。


「さぁ行きますよ、政希さん!」


「おい、こら…………!」


私は政希さんの手を引っ張った。


それから私達はゆっくりと歩いて、駅へと向かった。


だが、丁度そうしていたら――――――。


ブ――――――! ブ――――――!


マダラースコープの警告音が鳴った。なにかあったのだろうか?


「政希さん…… これって……?」


「ちッ、厄介なことになったな、見ての通りだ蒼衣何者かがここの小さな使われていない工場にいるみたいだ」


政希さんはマダラースコープのマップ機能を使い、ある場所を指で指した。


そこはかつてXウェポンを開発していた、工場だった。当然そこには誰もいない。


何も無いし、あるものといえば、跡形も無くなった機械、資料など。そんなところに何故人が…………?


「蒼衣、よく聞けそいつは間違いなく敵だろう 恐らくさっき戦ったやつとは比べ者にならないくらい強いだろう」


比べ者にならない? 一体どういうこと?


「政希さんは知っているんですか? そいつを」


「あぁ…… 合っているかどうかは分からんが、いやせめて俺の読みが外れていればいいのだが」


「教えてください……そいつを」


「…………アだ」


「はい? もう一度お願いします」


「反ロシアだ……」


「反ロシア……」


“反ロシア”その名前を頭に入れながら私達はそこへと向かうのだった。


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