表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第5章 反ロシア禁制地帯を調査せよ
138/139

【砂漠に住む殺人者 その3】

 戦地から巻き上がるのは広大な砂。


 後ろからは逆巻く砂の竜巻が押し寄せる。


 目前にいるのは、武器の能力によって作られた2足歩行の恐竜。


 砂でできているとはいえ、その威力は十分で。


「蒼衣!」


 政希さんから一声。


 恐竜の大きな体を駆け上がろうとするものの。


 途中で体が沈みやすくうまく登り切れない。


 例えれば。


 蟻地獄の巣を、駆け上がっているような感覚。


「くっダメだまた体が……」


 持ち前の速度を駆使しても、やはり届かず一打撃すら与えられない。


 一旦引き下がり。


 みんなの方へと集まり体制を立て直す。


「ダメです。あの砂の恐竜、体が柔らかいせいか駆け上がる最中、体が沈んでしまいます」


「沈む? あんなに大暴れに動いているはずなのにどうして柔らかいんだ。普通固まっているなら柔らかいはずがないだろう?」


 敵の恐竜に違和感を抱く政希さん。


 確かにあれほどに暴れているなら、固いのが一般的。


 明らかにそれは不自然。


 だとすると1つ考えられるのはたった1つ。


「……Xエナジーですね」


 その可能性を真っ先にあげてきたのは礼名だった。


「Xエナジー? そうかなるほどな」


 察しがついた政希さんは。


 こくりと頷いて納得のいった様子をみせた。


 どういうことかというと。


 Xエナジーは色んな。


 性質や成分の役割を担うことができるからだ。


 今回の場合。


 あの恐竜は砂が硬くて柔らかい性質の。


 Xエナジーを蓄えた恐竜なのだと思われる。


「……どうして蒼衣さんの体が沈んでいったのか。……それはあの恐竜に入っているXエナジーには別の物質がその上に乗るとその部分だけ、次第に柔らかくなるそんな性質になっているんじゃないかと」


 なるほど。


 つまり、別の物がその上に乗ると。


 その箇所がだんだん柔らかくなり沈んでいく。


「なら、滑空戦じゃないと無理じゃないの?」


「……蒼衣さんそれではいけません。戦闘形態はそんなに長くは持ちませんよ。……精々30分が限度です」


「でも、蒼衣の速度ならそうすることだって可能なんじゃないの礼名ちゃん?」


 美咲の質問に対して礼名は首を横に振った。


「……妙だと思いませんか? 美咲さん。3人固まるって今私達の次の攻撃を待つように恐竜の頭の上で様子を伺っています」


 礼名はどこか慎重な様子。


 恐竜には少し遠い場所にある。


 岩に隠れながら作戦会議しているが……敵は自分から動こうとしない。


「ふん、見失ったか。まあいいこのサンドレックスに勝てる者なんぞいやしない。……次あの殺人者の顔が見えたらコイツに仕留めてもらうとするか」


 足で2回トントンと突く。


 喜ぶように恐竜は一喝。


「ギャアアアアアアアアアア!」


「喜んでいるみたいだな。……さて俺は強い竜巻を散りばめるように作っておくか」


 違う方向から何個か竜巻が現れる。


 凄まじい勢いでこちらに促進するように、前へ前へとまるで生き物のように動き出す。


「無理矢理は殺すなよ? 仕留めるのは俺だからな……だがお前」


 先ほど礼名を捕まえていた殺人者。砂の短剣を持つ男を呼び。


「お前ならあいつらの場所を突き止められるだろ? また潜って何匹かエサを持ってこい」


「分かった」


 そうするとその男はまた体を砂に変え。


 地面の砂に混じり身を暗ます。


「どうする? 時間はもうないぞ。……いずれここが分かれば袋のネズミだ」


「作戦時間はもう長くないってことですね」


 恵美が深刻そうな顔で答える。


「……手はなくもないですよね蒼衣さん?」


 一同が考えを巡らせる中、礼名が私を名指しして言いかける。


「まあそうなるか。でもうまくいくか分からないよ?」


「……蒼衣さんの素早さならなんとかなります。……あとは自分に自信を持ってください」


「分かったよ。まだ使い慣れていないけど新しくもらった武器を試すか」


 こうして1度身を引き。


 短時間の作戦会議を終え、再び私達は砂漠の殺人者へと反撃に出るのだった。


⧖ ⧖ ⧗


 恵美が大きな積み石の上に立って銃を構える。


「? あいつは。……さっき俺達を撃ってきた紫髪の女か。サンドレックス!」


「ギャアアアアアアアアアア!!」


 顔を出した恵美の方に駆け出す恐竜。


 恵美は違う、周りの積み石を足場に飛び移りながら距離を詰めていく。


 だんだん恵美はその恐竜と殺人者の距離が近くなり、気がつけば2人の近くへと立っていた。


「ふん、積み石を踏み台にして近づいてきたか。だが1人で何ができる」


「……私達を甘く見ない方がいいですよ」


 恵美は武器の引き金を引き、恐竜の上頭部に向けて連射する。


ドドドドドドッ。


 紫色の火球が何発も、恐竜の頭部、そして上にいる殺人者2人に飛んでいく。


 乗っていた2人は反射的に飛び降りて回避し。


「やっぱり効かないか」


 弾により頭部を被弾する恐竜だが、瞬間的に再生し元通りとなる。


「連射か、確かに厄介な技ではある。……だが」


 後ろから忍び寄る影。


 砂を巻き上げながら襲ってくる砂。


 恵美は違う積み石へと場所を移すが。


「しまった!」


 不用意にも、その方向には。


 敵の1人である竜巻を作り出す、殺人者の竜巻に直面。


 飲み込まれようとする寸前、恵美は後ろに下がろうと回避しようとするが。


 地中から短剣を持った殺人者が恵美の背後に跳躍。


 先ほど礼名にやったように、羽交い締めを図ろうとするが。


「へへ! このまま斬ってあの竜巻の餌食にしてやる」


「……ふん。2度同じ手が通用するとは思わない方がいいですよ」


 すると恵美は、カバンから小型のある物を取り出して。


 それを背中につけると、恵美は男の後方へと後ずさる。


 ……あれは緊急脱出用に使う滑空装置(エナジー・ジェット・ブースター EJB)。


 小型のバーニアが付いており、それを背中に装着すると数秒間だけ空中飛行ができる。


 瞬発的にマッハ2~5の速度に及ぶ直進と引き下がりも可能で、非戦闘形態でも多少は戦える優れものだ。


 その俊足で、彼女は敵の後ろに回り言い放つ。


「飲まれるのはあなたの方です!」


 不意をついて連射。


「なに!? く、くそ間に合わない! ぐああああああああああ!」


 射撃に対して、能力が間に合わなかった敵殺人者は。


 そのままうなり声をあげながら竜巻に呑まれていった。


「仲間の能力が仇になりましたね。さて成り行きでも見ておきますか」


 収まりそうにない竜巻からは、とてつもない斬り裂く音が聞こえ。


 それがようやく収まると。


「はぁはぁ……」


 その中からは、片腕の欠損した男が出てきた。


「あら、まだ生きていたんですね。あんな攻撃を食らったのに」


「ち、ちい!」


 再び砂の中へと潜り姿を暗まして、仲間の元へと帰る。


「情けない奴め。自分から飲まれてどうする。……まあ片腕を失おうが俺達3人でかかれば造作もない」


「だがよ、あの連中俺の竜巻が一切通用しないぜ? どうするんだよ」


「なあに簡単なことよ。サンドレックスがあいつらを片付けてくれる」


 恵美の近くには恐竜が、積み石を破壊しながら暴れていた。


 距離は約数メートルほど。


 先ほど回避した場所より、少し先にその恐竜が中ぐらいの大きさに見えるぐらいのスケール感だった。


 私と政希さん、そして礼名、美咲は。


 互いに肩を付け合いながら、こちらへと向かってくる恐竜を迎え撃つ準備を行っていた。


「俺が先手で行く。美咲援護ぐらいはできるよな?」


「当然。でも回復能力は使えないので、あまり深手は負わないでくださいよ」


 いつも同様に平然とした素振りをみせる美咲。


「美咲さんらしいです。……蒼衣さん私達は2人とは逆方向に行きますよ挟み撃ちです。……指示は通信で追ってするので指示通りに動いて下さい」


「了解。それじゃ政希さん達お願いします」


 美咲と政希さんはこくりと頷いて右方向へと進む。


 私達はその逆方向である、左へと進み恐竜の挟み撃ちを狙う。


 走る最中。


「いいですか? 蒼衣さん。 私が高火力の弾丸1発をあの恐竜に撃ちます。……再生がはじまりましたらその一瞬をついてストライク・ブレイクを」


「政希さん達は?」


「政希さん達は敵の足止めです。私が撃つまでの時間稼ぎですよ」


 無力組は援護に回すといった感じか。


 政希さんはともかく。


 美咲は場所が悪いから、真価を発揮できないので致し方ない。


 そうなると足止めで、時間稼ぎの攻撃に回すのは妥当と言えるだろう。


「それに向かった方向には恵美もいます。ちょうど3:1になるので問題はないはずです。……場所まできたら私は逆方向に行って技を正面から仕掛けます。蒼衣さんは背後から技をお願いしますね」


「おっけー。じゃあそっちは任せたよ礼名」


「……お任せを」


 まずはあの厄介な恐竜の排除が最優先。


 本体側を先に仕留めるのもいいが、そうしているといつあの恐竜に襲われるかわからない。


 そこで、私達は先に恐竜を仕留めることにした。


 まあ倒したところで相手はまた恐竜を作ってきそうだが、そこは私の持ち前である素早さを駆使してなんとかしてみせる。


 移動を続け政希さん達は。


「恵美ちゃん? 無事だったのね。敵の弱点は何かわかった?」


「いいえ、これと言って何も。どうやら完全にあの殺人者に作り出された物のようですね。……倒したとしてもまた再生される可能性が大ですが」


「とりあえず、攻撃するぞ。礼名と蒼衣が来るまで足止めするんだ!」


 そうして3人は3方向に散らばり、美咲は手に持つ大剣で敵の足を斬り裂いて応戦。政希さんは空中から腹部目がけて攻撃をする。


 恵美は敵の背中を散けるような射撃で迎え撃つ。


 3人の連携により、敵の恐竜は苦しみ標的を失う。


「何をしている! そんなやつら尻尾でなんとかしろ! ……ちっ敵は散けて攻撃してきたか」


「たあああああああ!」


「はあああああああ!」


 美咲と政希さんによる、斬撃の交差攻撃。


 そのタイミングで、恐竜は尻尾を使って払おうとする。


「ぐふ!」


「ぶは!」


 2人は跳ね飛ばされ近くにあった壁へと激突。


「……ふん。やってくれるわね。図体がデカいわりに主の言うことは聞けるのね」


「どこかの誰かさんと違って、ちゃんと言うことは聞いてくれるみたいだな」


「政希さん……。私を悪く言うなんて酷いじゃないですか」


「すまんすまん。さあデカい1発をお見舞いしてやろうじゃねえか」


 戦いの途中にも関わらず小馬鹿にされる美咲だが、すぐに持ち直す。


 全く。


 こんな時になにやっているんだか。


 果敢にも直進し攻撃に回る。今度は攻撃の息を合わせるように2人の剣が敵の腹部へと向く。


 浅い傷を斬りつけて1歩下がり、再び様子を見ていると。


「では蒼衣さん、仕掛けてきますね。……私の後ろを着いてきてください」


 距離が近くなると礼名が声を再び掛けてきた。


 その方向へと進むと、苦戦しながらも戦う政希さん達の姿があった。


 息を切らしながら衣服をボロボロにさせながら、彼らは戦っていた。


 遠くに飛ばされようとも再び立ち上がり、その度にまた攻撃をしかける。


 私と礼名がその方向へと赴くと、真っ先に気がついたウチのリーダーが反応。


「き、来たな…………。よし礼名いけるか?」


「……おっけーですよ。いつでもいけます」


「じゃあデカいヤツ頼むな!」


 承認を確認した礼名は飛び上がって、すぐに距離を詰めていく。


 その間に私は敵の背後に近づいて待機。


 礼名は恐竜の目前でジャンプして、銃を構え尖った目つきで相手を見つめ引き金を引く。


「シュナイダー・ショット!」


 一発から放たれた弾丸が敵の体を貫くと、恐竜の体を爆発しながら崩れていった。


 がしかし。


 直後にまた再生が始まり。


 今だ。


 私は体全体に。


 力を行き渡らせ駆け出す。敏捷に駆け出すその足は、数秒も経たない内に敵の背後へと近づいた。そのまま目前で再生する途中の恐竜目がけて私は剣に力を込めて渾身の一撃を敵に撃ちはなった。


「ストライク・ブレイク!」


 恐竜は再生する前に、私の強力な高速斬撃の前に跡形もなく崩れ去った。


 ⧖ ⧖ ⧗


 ち、畜生こうなったら!


 3人が出てくる。


 4人集合して生存を確認した直後に、彼らは私達の前に現れ。


「しかけるぞ! お前ら二手に分かれて攻撃だ」


「おう」

「おう」


 他2人が左右違う方向に分かれなにやら攻撃を仕掛けようとしてくる。


 それぞれの手には短剣が。


 恐らくあれが他2人のXウェポンだと思うけど。


 その迫る速度は、私にはゆったり見えた。


 あの恐竜、作るのに時間がかかるとみた。


 なら今しかない。


 新武器を試す絶好の機会だ。


 私が1人。敵の方へと足を踏むと政希さんが一言。


「蒼衣行くのか?」


「ええ。新武器を試すには絶好のタイミングですからね」


 すると彼は表情を綻ばせると。


「行ってこい。但し生きて必ず戻ってくるんだぞ」


「当然です。政希さんとの約束は必ず守りますよ」


 そう言うと、私は持ち前の速さを解放させ敵の方へと赴いた。


⧖ ⧖ ⧗


 移動しながら、私は武器を変える。


 開発部から譲渡させてもらった私の新たな武器の1つである『ストライク・アロー』


 射撃の速度は私の常時速度と同じくらい。


 手を弓の方に寄せ、矢を持つイメージで走っていると。


「うん? あの女? さっきと持っている武器が違うぞ?」


「……手から矢が? 構うな! 俺のサンドレックスが再び使えるまでもうちょっとだ! それまで辛抱しろ」


「おう!」

「おう!」


 2人は声を上げる。


 やはり時間差でようやく使える品物だったらしい。


 なら恐るに足らず。


 お前達に次なんてない。


 私の手に出現したのは、神々しく青く光る青みがかった矢。


 その矢に力を込め。


 余すことなく敵に放った。


「スピーニング・アロー!」


 迸るような風を断つような、凄まじい突風を引き起こしながら放った矢は俊敏に飛ぶ。


 道中。


 その矢は3方向に分かれ分離。


「な、なに!?」

「な、なに!?」

「な、なに!?」


 敵はそれをみて、予想外な声をあげる間もなく。


 その閃光の矢と共に身を包ませ消えていった。


「ふう。本番は初めてだけど、うまくいった……かな?」


 仲間の元へと戻る最中。


 安堵しながら私は喜びを感じ。


 かくして砂漠の殺人者と言われる3人を倒した私達は。


 次の目的地に向けて再び足を運ぶのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ