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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第5章 反ロシア禁制地帯を調査せよ
133/139

【苦痛を伴う犠牲 その1】

 敵の基地内部を進み、私達は基地内を駆け巡る。


 通る道の各場所からは、戦闘待機するマダロイドが数機顔を出して襲ってくる。


 最初の通り道で遭遇したのは、片手に短銃を構えた単眼を持つ漆黒の機体だった。


 一見強そうな見た目の機体ではあるのだが、しょせんは量産機。たいした性能は持ち合わせていない。


 数機道を阻むその機体を私は、後ろで前の様子をひたすら見る仲間達を庇いながら自ら率先して手に持つ剣でなぎ払った。


「蒼衣さん……」


 途端に銃を構え撃とうとした機体は一瞬で八つ裂きにされ、地面へと落ちた。


 速度的には私の方が上手(うわて)だが、どうせこの先に今遭遇した敵を何機も破壊しないといけないとなると、それはそれで体力は持つのだろうかと心配でままならない。


 だが私は心の中でどうしても許せないことがあった。そうそれを果たすまでたとえこの体が疲労を感じたとしても機械的に目の前の敵を私は倒さなければいけない。


 無残に利用され、そして散っていった少年少女の敵をこの手で討つまでは。


「たいしたことないですね」


 そんな敵を破壊し前の道を空け率先して進む私をみながら、仲間達はなにか不安を抱くような素振りで。


「……蒼衣さん大丈夫ですか? 私には蒼衣さんがいつも以上に無理しているようにみえますが」


「蒼衣、ちょっと……」


「……」


 美咲が声をかけてきたが無視した。すると彼女は私の返事が返ってくるまでずっと呼びかけるのであった。


 次第にその呼びかける小さな声は一声ごと大きくなり、気がつく頃には耳元に響く鳥肌が立つくらいの罵声へと変わる。


「蒼衣ッ!」


 途端、過敏にその声に反応し私は後ろを振り返った。他のメンバーは浮かない顔をする中、美咲だけは普段見せないしかめ面をしていた。


 何か言いたげな様子。その苛立ちする視線は明らかに私の方に向けられていた。


「なに? そんな顔してさ。……大声出して敵に動きを悟られでもしたらどうするの」


「あなた、今自分がなにやっているかわかっているの?」


 美咲は私の近くへと近づいて言ってきた。


 だが私はまわりのことを気にせずに目の前の敵をまた破壊しようとする。…………だが。


「…………なにするの? その手は何早く離してよ」


 次私が剣を振り落とそうとすると美咲が、二の腕を掴み攻撃を止めた。


 その力量は、動かそうとしてもびくともしない力で私ではどうしようもできなかった。


「……私達は仲間でしょ? さっきのことは確かに悲しいことだったけど、今のあなたは普段のあなたらしくないわよ」


「美咲さんの言う通りですよ。自分勝手な行動は死に直結しかねません。ここはみんなと一緒に動くべきですよ」


 私は歯を食いしばる。


 誰一人とて自分の苦しみと怒りをまるで分かっていないと。


 そんな甘さで果たして子供達の無念を晴らせるのかと、仲間の一言一句が躊躇しているような物言いに聞こえてくる。


 まるでそれは今の私が正気では無いように。


「なあ蒼衣。怒りに身を任せても何もかえってこない。今のお前は怒りで我を忘れている殺戮マシン同然だ。……1回頭を冷やせ」


 そんなこと頭の中では分かっている。でもなんだか収まらない。この胸の中で湧き上がる怒りの衝動が。


 そう、今でも目の前の物を殺したくて殺したくて非常に飢えているのだ。


 正直邪魔しないで欲しい気持ちがある。


「政希さん、邪魔しないでくれますか? 私は速くて強いです。分かってますよね他の誰よりも」


 自分でもなんでこんな他者を能なしと言うようなことを吐いてしまうのか、不思議でならない。


 本当はこんなこと口に出すべきではないと自分の中で分かっているはず。


 ……私は焦っているのだろうか。それともおかしいのだろうか。


 …………。


「確かにお前は強いよ。正直俺も欲しいくらいの力だ」


「「じゃあ全部任せればいいじゃないですかこの私に」」


 自棄(やけ)になり、怒りを込めた大声で本音を言い張る。全部私に任せればいいと。


 この次の返答で「勝手にしろ」の返事を予想し、易々話を終わらせてくれるだろうと勝手に思っていた。 


 だが彼からの返事は私が思う返事とは反するものが返ってきた。


「だがそれじゃだめだ」


「一体どういうことです?」


 私に何が欠けているというのか。


 不安となる盲点は1つもないというのに、そこまでどうしてここまでして拒絶するのだろう。


 何かを訴えようとしている。その感じはひしひしと伝わってくる。


 強さ以外に私に何か欠如しているものがあれとすれば、その証拠となることを正確に述べてほしいものだ。


 そうでもしないと、ここで仲間を殺めてしまうかも知れないから。


「……美咲その手を離してやれ」


 美咲は首を縦に政希さんに向けて振ると、私を縛りつけてい手を離した。


「ここは俺に任せろ」そういった次第だろうか。


 どういった根拠で私を説得するかは分からないが、聞くだけ聞いてみよう。


 もしかしたらその欠陥部分に気づくことができるかもしない。


「……いいか蒼衣。いくら強くても救えないものだってある。そして単に自分が強ければいいそういうことは絶対思わんことだ」


 強さが全てじゃないってこと?


「いい機会だから教えてやる。俺はな、お前みたいな殺人者をこの目で何人も見てきた。その中には当然仲いいやつや、強い殺人者だっていたんだ。……だが中には自分のことばかりで仲間を頼らん身勝手なやつもいたんだ。……そいつら今はどうしているかお前わかるか?」


「……今でも組織で戦っているんじゃないんですか?」


 身勝手な人でも、強くないと意味がない。


 この世界は弱者は殺され、強者が生き残るのだ。そういう弱肉強食な境遇に私達は今立っているのではないのだろうか。


 政希さんが言っているその仲間は、強いから当然今でも存命しているであろう……そう思っていた。


 だが次の言葉で私は目を丸くした。


「……そいつらは死んだ。勝利目前で自分から突っ込んで敵の餌食になってな。……「任せろ」その最期の言葉を残してな」


「……そんな……嘘ですよね」


 当然いつもの軽い冗談や作り話だと思った。政希さんはどうせこの状況で場を和やかにさせるためこう言ったことを言っているに違いない。でも彼の顔色はどこか悲しみを隠しているようなそんな様子だった。


 ……まさか。


 冗談抜きで?


「嘘じゃないんだ。作り話でもない全て実話だ。その時俺は一緒にいた当時のリーダーに教えてもらった。『いくら力が強くても、自分勝手なやつは死ぬ。不足部分を互いに補いながら助け合って仲間と一緒に戦う』そう俺は教えられた」


 その言葉で私は目を丸くし、その場で座り込み顔を俯く。


 私はその言葉を聞いて……仲間が何を心配しているのかをようやく理解した。


 不足部分。それはただ単に武器や能力による力が全ての強さを言い表す今までの私はこれまでにずっとそう思っていた。


 だがそれは間違っていた。


 力全てを強さとは言わず、人との繋がりそしてそれからなる固い絆それがもう1つの強さなのだと。


 自分の不足部分を誰かが補いつつ助け合いながら共に戦う。


 そうか、仲間の存在を忘れちゃいけないんだ。


 人と人の架け橋を決して断ち切ってはいけない。絆は人との大切な繋がりを現すのだから。


 そうすれば私は……ううん私達はどんな強敵達相手でも戦っていける。この頼もしい仲間達と一緒ならば。


 ……どうしてそんな簡単なことを分からなかったんだろう私は。


 私の元に近づいた政希さんは手をポンと置く。


「ねえ政希さん。政希さん達が言いたかったことって」


「ようやく気がついたか。……あぁお前が死んでしまうんじゃないかって心配していたんだ。……それと蒼衣」


「え?」


 私が俯いた顔を上げると、屈んで私の視線を合わせている政希さんの姿がそこにあった。


 いつもの微笑んだ顔で。


「自分ばかりで問題を解決しようとするな。時には俺達を頼ってほしい。俺達は仲間だろ」


「そうですよね。ご迷惑をかけましたね」


「ヴェルダ達がやったことは許しがたい行為だが、お前がやられたんじゃ話にならんぞ」


 私がほかのみんなの方を見上げると、にやっと笑う仲間の姿が。


「本当ばかねあなたは。だから言っているでしょ困ったら頼りなさいって」


「……考え無しに突っ込むのは危険ですよ。蒼衣さん私達は会って日は浅いですが仲間じゃないですか」


「蒼衣さんは本当に強いですよね。勿論憧れる先輩殺人者でもあります。でも少しは私達に頼ってもいいんですよ」


 仲間の言葉で私は立ち上がり、いつもの笑みを浮かべた。


「……やっぱりあなたはその顔が一番よ」


「えぇ……それが蒼衣さんらしいですよね」


 両隣に立つ2人は顔を合わせながら言った。


「迷惑かけちゃったけど、一緒に行こう。……よく考えたら私1人だとやられてしまうかも知れないし」


 みんなはこくりと頷いた。


 また1つ、仲間に大切なことを教えられた気がする。










 基地の奥近くまできた。


 敵マダロイドの数はわんさか言わんばかりにひしめいている。


「…………!」


「…………ピピッ」


「ツーツー」


 先ほどのマダロイドより種類が増えてきた。


 宙を舞いながら砲弾を撃つマダロイド、壁に隠れながら敵の様子を伺う偵察型のマダロイド、そしてごつい体でひたすらこちら目がけて特攻してくる如何にも知能が低そうな機体と種類は豊富。敵の防犯対策はきちんと行われているらしい。


 戦闘形態になっているので、地上は無視しても構わないのだが、空中にいるマダロイドが鬱陶しく感じる。


「ちょっうわっ!」


 飛びかかってくる敵を瞬時に避け次の迎撃する準備をしようとするが、あまりにも敵の速さが尋常ではなく避けるのが精一杯だった。


 その敵が各方向から何体も交差するように来るので、攻撃になかなか集中できないのだ。


 何より機体に付いているコウモリみたいな翼は、飛行中に微かなかまいたちを発生させるのでこれも厄介。


 さてどう戦うべきか。


 というかさっきから気づいたのだけれど地上にいるマダロイド、射撃の1つもしてこないのだけれど銃もなにも遠距離用の武器を所持していないのだろうか。


 空飛ぶ敵は範疇に入っていないそう見込んであの物理特化の機体にしたのかも。


 とても甘く見られたような気がする。


「みんな、気をつけろよ。振り落とされでもすれば地上にいるマダロイドの餌食だぞ」


「そうは言ってもこの速さでどう瞬時に攻撃しろと。……礼名なんか策ある?」


「……一掃してもいいんですが、そうするとXエナジーがほとんどなくなってしまいますね。エナジーボックスを使えばなんとか……ッ、なりそうですがッ!」


 私の問いに礼名は襲ってくる敵を必死に避けながら答えてくれた。見る暇もないのだがこれはとても辛そうに聞こえる。


 策を講じようと避けながら熟考する。


 剣で振り払うかとりあえずは。


 渾身の力を手に持つ剣に集める。


 剣は瞬く間に煌めき、攻撃準備が整う。


「今だッ」


 確信して突進してくる敵の群れに向かってその斬撃を解き放った。


どごーん……。


 何機か破壊することはできたが、射程が小さくそんなに破壊することはできなかった。


 考え込んでいると斬撃によって巻き起こった爆風の中から、次から次へと後を絶たない敵がまた襲ってくる。


「もうしつこいッ!」


 呆れのあまりに声を漏らしてしまったが、それほど敵が鬱陶しかった。


 もう少し溜める時間が長ければ、広範囲の斬撃を放つことができたのだが、それも無駄のようだった。


 そう私が考えていると。


「これで仕込み完了ね」


「……? 美咲」


 周りが焦りながら戦う中1人だけ余裕の笑みを浮かべていた。そうあたかも勝利を確信したようににやっと。


 美咲は先ほどから他のメンバーと同じく、避けながら交戦していたが戦っている最中に策を既に取ってくれたようだ。


 次の瞬間、美咲が指をパチンとならすと飛んでいた敵は跡形もなく全て吹き飛んで木っ端微塵になった。



「今なら……。それ!」


 隙を狙い、地上で待機しているマダロイドに下斜め方向の斬撃を3発ほど放った。


 攻撃は全て見事命中し、機体は倒れていった後大破する。


 美咲が植物の爆弾を空中にいる機体全てに仕込んで爆発させてくれたお陰で地上の敵を難なく撃破できた。


 本当たいしたものね美咲は。


 続く礼名、恵美は互いに背中を合わせながら、下の敵を射撃し撃破する。


 政希さんは持っている大剣をブーメランのように投げて攻撃していた。……剣ってそういう使い方もできるんだ初めて見たけど。それも政希さんらしい戦い方か。


「とりあえず片付いたわね。」


「あぁ……でもあんな敵もうこりごりだぜ」


「……大丈夫です政希さん。空中の敵はあれで最後みたいですからもう心配いりませんよ」


 私も政希さんに同意するが、あんな敵あまり相手にしたくないものだ。


 …………それほど徐々に敵も強くなってきている何よりもの証拠なのだろう。


 そう考えるとこの先同じような強敵が待ち構えているとなると先が思いやられてくる。


 私もまだまだ力不足ということになるのかな。


「それならよかったが……じゃあ先いくぞ」


 更に奥へ進み、敵の隠れている部屋を探す。


 殺人者同士が近づけば近づくほど気配を感じ取ることができるから、そう感じられるということは敵が近くにいるということになる。


 因みに仲間と混合しないのかとよく聞く話だが、そういうのには私達は慣れている。人によってXエナジーの質量は大きくことなるのでそれで判断が可能。まあできなくてもスコープ使えばなんとかなるしね。


 と歩みを進めていると使われていない暗い部屋を見つけた。


「なんだここ?」


 少し入ってみると見知らぬメモらしき、紙が何枚も部屋中散乱していた。


「……紙にはマダロイドやXウェポンの設計図が書いてありますね。……一体何の為に?」


「まあ今は気にする場所ではないから先急ぐか」


 特に関係もなさそうだったので部屋を出て先を急いだ。


 その時私の足下にあった紙に目が止まる。


 とある文に書かれた1つの一行。


「……? これは一体」


「どうした蒼衣行くぞ」


「あ、はいすみません。なんでもないです」


 今はやるべきことを優先し、そこの部屋を後にした。


……移動中その一文を思い出し考えを巡らせていた。


(『IGSーW01、IGSーW02……』……あの型番は一体何だったんだろう。何かの武器だってことは分かるんだけど)


 何か心に引っかかるそんな物だった。








「ここか」


 生体反応がする部屋があったので、私達は一旦立ち止まる。


「……みたいですね。でも1人しかおられませんはて?」


「でも油断するなよ、もしかしたら何かあるかも知れねえからな。……それじゃ行くぞ」


 政希さんの合図すると、固い鉄扉は瞬時にセンサーに反応してその扉は自動的に開く。


 部屋の内部に入ると、様々な機械やモニターがいくつも置かれた部屋だった。


 そのモニターをひたすら凝視しながら私達に背中を見せている軍服をきた女性が立っていた。


「…………派手に散らかしたわねまた」


 緑の長髪をしたその女性はそっけない呆れた様子で嘆息をしながらひたすらモニターを一瞥する。


「……ヒューマンリボーン、体数いくつになったかしら。……」


 キーボードで手慣れた動きで手を動かして何かの確認をする。


「………………この街にもう人はいないのね。……また、……また尊い犠牲が。……?」


 こちらに気づいたその女性は、口を止めこちらの方を振り返り目を合わせた。


「……まさか敵が乗り込んで来るなんてね。私はヴィネラ。ここでこの街を牛耳っている反ロシアの人間よ」


 私達はいつでも反撃できるようにそっと身構えた。

読んでくださり、ありがとうございます。

いや最近出すの遅くなって申し訳なく思います。

蒼衣をどのような展開で心境の変化を作ろうと思いましたが、いかがだったでしょうか。

人によってはサイコパスな一面で見て取れてしまうかも知れません。ですが今後彼女の成長する一環として必要な課程だと思いこの描写を取り入れています。

さて次回は研究室にいるとある反ロシアの軍人と蒼衣達は戦います。

少年少女の無念ははたせるか。そして彼女の正体は一体。

それではまた次回お願いしますではでは。

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