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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第5章 反ロシア禁制地帯を調査せよ
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【死の降り注ぐ地 その2】

 少女に誘導されるがままについていくと、半壊した張りぼての小さな家へとたどり着いた。


 その家の中はとても充実しているとはいい難く、貧相で木のボロボロなテーブルだけがポツンと置いてあるいかにも貧しい家だった。


 ここに住む人達はみんなこんな家ばかりなのだろうか。心の底で救ってあげたい気持ちを露わに私は手で服を力強く握りしめた。


「まったく何もない家だけどそこは大目に見てね」


 少女は苦笑いしながら、床に置いてあるバケツから1枚の雑巾を取り出すと掃除しようと木のテーブルを拭きだした。拭くと軋む音が聞こえた。


 そのテーブルはもう少しで壊れそうなのにも関わらず、ひたすら心を無にして私達をもて成しをする。


 少女は心苦しくないのだろうか。私が逆の立場なら自分が情けなさ過ぎて人を招くのが非常に苦痛なのだが、その笑顔はどこからでてくるのだろうか。


 だが少女の顔からは無理をしているようにも感じ取れた。それはどうみても顔を作っているようにしか思えなかった。


 ……。


「……気にすることないですよ。それで話とは?」


「ええとね……」


 彼女が話をしようとした合間、私は室内を見回した。だが1人とてその少女以外人はいなかった。


 一体どこにおられるのだろうか。外出中あるいはもう既にここ一帯を牛耳っている殺人者か誰かにやられてしまった可能性も。


「蒼衣? どうしたんだ」


「……ねえご両親はどこにおられて?」


 少女は掃除している手を止めて、こちらの方に目を合わせてきた。険しい表情をしたのち再びまた顔を作り出す偽りの笑顔で。


「お父さんとお母さんは前にねここに来た殺人者達に殺されちゃったんだ。私だけはなんとか見逃してもらえたんだけど……」


「そうなんだね。ごめんね悪いこと聞いちゃって」


 少女は首を振り。


「ううん、大丈夫だよ。"あの人達"が来てからこの町は変わっちゃったんだ。街は大幅に変えられて、気づけば知らない建物がたくさんできてしまい……そしてこの町そのものがその人達に乗っ取られてしまったんだ」


 つまり平和な町がある日……反ロシアによって占領され、町そのものが大幅な改造をされてしまったということか。やり方があくどく感じる。


「当然最初反発する人もいたよ。でもその人達は逆らった者は全員問答無用で殺すって言ってきてね。……大人の何人か立ち向かったけどみんなその人達に殺されちゃったんだ」


「なんてきたねえヤツらだ。なにも殺すことないのに」


「私達はね、その人達のお手伝いをしているんだけど、失敗するといつもムチや色んなもので叩かれるの。おまけにろくな食事もくれなくて……今困っているんだ。だから偶然通りかかったお姉さん達に声をかけたってわけ」


 少女の体のいたるところには何かで叩かれた青いあざが浮かんでいた。


 そのあざの数は見るに絶えないほどに、残酷な有様だった。


 一体この町の人達を手荒くこき使って、反ロシア達は一体なにを考えているのだろうか。


 政希さんは言う。


「蒼衣。これはそうとうやべえぞ。放っておいたらこの町の人達はみんな殺されてしまう。だからと言ってこの少女の頼みを聞けば危険な場所へと足を踏むことになる。……いずれにせよ危険な道は避けられないなこれは」


 確かに言う通りだ。どちらも危険を回避できるとは言い難いし、それに相手はあの反ロシアだ。どんな禁忌をこの町で犯しているか分からない。正直未知の領域だが…………。


 私は少女に向かって答える笑顔で。


「分かったよお姉ちゃん達に任せておいて。必ず悪い人達をやっつけてあげるから」


「ありがとうお姉ちゃん」


 こうして反ロシアに支配されているこの町を救うべく、私達は再び反ロシアがひしめく基地の方へと赴くのだった。






 少女を1人にすれば何をされるか分からないので、美咲と恵美で護衛するよう政希さんは指示をだした。


 まああのまま家に残らせておいたら反ロシアになにされるか分からないし、この方法が正当だと思う。


 ……基地の手前、警備員も誰も相変わらずいないが、なにやら違和感を抱いた美咲と恵美は足を止めた。


「ねえ恵美ちゃん」


「どうしたんです? 美咲さん」


「この子のうなじ。なんか小さな赤い豆みたいなものがついているんだけど、あれなにかしら?」


 恵美がその少女の背中をちらっとみると確かにそのようなものがついていた。


「これね、数日前朝目覚めたらなんかついていたの。なんともないけど……」


「……ちょっと失礼」


 恵美は指でその部分を突いて確かめた。そしてスコープの感知機能を使って詳細を確かめようとするが。


「金……属? これ皮膚からできたものじゃなくて何かの金属ですよ。一体何の……」


「分かったわ。あとで私が取り外しておくわ」


「でも……なんか点滅してますしなんなのでしょうか?」


「きっと太陽に反射してそのように見えるだけでしょ。気にすることないわ」


 そういうと話をおえて再び前を向いた。


 ……私はとてもそうとは思えないのだけれど。


 なんだろう、この少女からは全く怖さも微塵に感じないのだけれど、心底胸騒ぎを感じるのだが、これは一体。


「どうしたの蒼衣大丈夫よ。私を誰だと思っているのよ。心配要らないわよ」


 気にしていた私を悟るように声をかけてくる美咲。


 いや違う。心配とかそういうのじゃなくて。……その子には違う恐ろしいものが潜んでいるような。


 そのまま私は何も言わずに仲間と共に基地内へと入っていった。






 中は広々としていた。鉄板のようなものがところどころ張り巡らされているような機械建造の建物。


 だが妙だ。なぜこんなにも広々としているのかが。


「結構広いんだな。でも何故だ兵も誰もいないが」


「……蒼衣さんどうしたんです? そんな浮かない顔なんかして。これから戦いだっていうのに」


「ううん違うの。ちょっと緊張しているだけ」


 本当は違う。


 いつもならこんな時、平然と仲間と笑い誤魔化したりするのだが、今回はその気力すら沸かない。


 政希さんをからかったり、美咲と口喧嘩したりとその活力さえも消えかかりそうな灯火のごとくおきない。


「リラックスですよ、蒼衣さん私達は仲間じゃないですか」


「お前らしくもないぞ。帰ったらポリッキー好きなだけ買ってやろうと思ったのに」


 普段ならここで頭のスイッチが入ったかのようにハイテンションになるのだけれど、どうしてなの? 少女からそんなXエナジーは感じ取れないというのに、気にすること1つもありはしないというのに。


 すると少女は。


「大丈夫だよ、お姉ちゃん私のことなんか気にしないで」


 そう言われると逆に気にしてしまうのだけれど、今はそうすることにしよう……思っていないことではあるけれど。


「……はっ! 何者かがこちらにやってきます」


「なに?」


 敵のXエナジーを感じ取った礼名は一声をあげた。


「敵は……1人です」


「1人? …………確かに1人だな。随分と舐めてくれるじゃねえか敵さんは」


 嘘だろと思い政希さんに続く他のみんなもXエナジーを探ってみたが、敵数は紛れもなく1人だった。


 強がっているのか? 相手は。


「なるほど、大勢の客を連れ込んで来てくれたみたいだな」


 黒いコートを着ており肩には黒赤の模様をした、反ロシア紋章を付けている。


 明らかに上官辺りの立ち居にいるであろう服装、そしてただならぬ異彩を放ちながら男はニヤリとこちらを睨み付けると余裕そうな表情で語りかける。


「ほう、日本人か。我々反ロシアの宿敵と言える相手だな。して、我々の居場所を突き止めるか何か誰かに言われここへとたどり着いたのかね」


 なかなか相手も鋭くこちらの動きがまるで分かっているかのような事を言ってきた。少々図星を突かれたような気もする。


「まあいい、おおかたの検討はつく。我々の動きか何かを突き止めようとここへときたのだろう?」


「下らない推測ばかり言ってないで掛かってきたらどうなんです?」


 ここで実は口先だけで実力はたいしたことはなかったとかそういう期待外れな殺人者であっては欲しくない。


「ふむ、少々おしゃべりが過ぎたと。そう言いたいのかね青髪の殺人者よ」


 その名前安直過ぎる気がする。


「言ってくれますね、……あとそのネーミングセンスなんとかならなかったんですか」


「日本人は、神経質な人が多いのかね? だがいずれ分かる。このヴェルダ・ダフィーラの恐ろしさがな」


 このヴェルダという人物の言うその恐ろしさとは一体。武器も未だに全く身構えていなくただ無防備状態の自分を相手に見せつけているような感じにしか思えないのだが。


「おい、蒼衣気をつけろ身構えるのはいいが、アイツ……なんかあるぞ」


 攻撃の準備をしようと私がストライクを身構えると、政希さんが危険をうかがうったのか私に一言忠告する。


 何かあると思いはするのだが、相手のその様子からして曇った様子さえつかみ取れない。


 一瞬にして片を付けようと私は持ち前の力でヴェルダの背後に一瞬で距離を詰めそのまま斬りかかった。


「やッ!」


 周囲に突風が発生し激しい風の波が巻き起こる。


 なのにも関わらず相手は不動のまま、自分に振り落とされたその刃を指2本でその攻撃を受け止めた。


「なにっ!」


 たちまち目を丸くしてしまい言葉を失ってしまう。


「蒼衣!」と仲間一同私の名前を叫ぶ。


「いい攻撃だったな。うむ見事な腕だ俊敏さといい的確な位置にしかも一瞬にしてこの私との距離を詰めてこようとは。だがそんな詰めの甘い攻撃では私は倒せぬよ」


 すると捕まえた私の刃を持ち上げた。


 ……まさかこのまま私ごと投げ飛ばす気か。


 引力によって私の体は徐々に真上へと持ち上げられそのまま。


「受けるはずだった痛みをそのまま君の痛みとして返してやろう」


「蒼衣逃げろ!」


 しかし時既に遅く、抵抗も何もできないまま私は向こう際の壁へと飛ばされてしまった。


「いくら蒼衣でもあれは無理よね」


「……えぇ。なので美咲さんあのままだと蒼衣さんが」


 心配する礼名と美咲。しかしその様子はどこか余裕そうな素振りだった。


 美咲は次の瞬間指を鳴らし。


「当然策は取ってあるわよ」


 パチンっ。


 衝突する壁からツタ状のネットが現れ、私を受け止める。


「た、助かった」


 だから余裕そうな表情をしていたのか。……というか補助するならするって口で言って欲しいのだが。…………待てよそうすると逆に相手に悟られてしまうから逆効果か。それでわざと口にしなかったわけだ。


 全く美咲は仕事が早いな助かる。


「仲間のお陰で助けられたな」


 壁を蹴って再びヴェルダの元へと瞬時に今度は正面に移動し、連続斬りをしかける隙を狙いながら何度も。


 だが全て余裕でかわされる。今度は掴まれないように1回後ろ側へと引き下がり再び身構え、相手の様子を見ることにした。


 さてどう出てくる? 仕掛けてくるなら仕掛けてこい。


「怖じ気づいたか」


「その馬鹿力で飛ばされたらひとたまりもないからね」


「なるほどな。……そして君は今こう考えているな。『いつになったら武器を使うのだろう』と。答えてやろうその君の質問に。……使うまでもないこの戦況は」


 どういうことだ。


 使うまでないって?


 そして次、思いがけないことを相手は言った。


「武器を使っていないわけではない、"既に使っている"のさXウェポンではない別の武器が」


 爆弾か何かか? ……辺りを見回すがそれらしきものは見当たらない。上下左右どこにも。


「無駄だ。君は分かるはずもない。いやその仲間全員もかな。……なら答え合わせでもしようか」


「なに? あなたは何を言っているの」


 答え合わせって。もう攻撃の仕込みは整っているって事?


 でもそれらしき武器は見る限り認知できないのだが。


 私が深刻な顔でヴェルダの方をみると。


「…………仲間の方を見ろ」


 政希さん達の方を見る。


「……あれ体が勝手に」


 付いてきた少女が意思のないまま勝手に動きだした。そして私の仲間を一方的に拳で人間とは思えないほどの速さで攻撃してくる。


「な、何をする。君どうしたんだ!?」


「……ぐっ。どうしたんですか急に私達を……」


 1人また1人とまるでマダロイドみたいに攻撃をする。


 拳1つずつ仲間全員の腹部に叩き込まれ、みんなはそのまま腹を痛める。


「み、みんなっ!」


「こ、こんなことしたいわけじゃないのに。体がいうことを聞かない」


 涙目になりながら少女は次の攻撃をしかけ、美咲目がけてパンチをしてくる。


 瞬時礼名がシュナイダーで応戦し、攻撃を凌ぐのだが。


「よーく目に焼き付けておくんだな。君が守ってきた者……いや"物"の最期をな」


 危険を察知した礼名は。


「……美咲さん。あの点滅している金属。……やっぱりなんかおかしいです。恵美、政希さん、この女の子から離れて下さい!」


 礼名は慌てた様子をしながら少女から離れるよう声を呼びかけた。そしてその少女から距離をおいて。


「チっ避けられたか」


 次の瞬間、少女は動きを止めて、異常なまでに苦しみだし光りだした。


「く、くるしいいいいいいいいい。アガァ。オネエチャン達……たス、たスけテぇぇぇぇぇぇ。あ、あがああああああ」


 私はそれを見たのち、頭の中が真っ白になった目を丸くしながら。


ドゴオオオオオオンッ。


「えっ。どういうこと…………。 嘘でしょ」


 少女は……爆弾のように爆発して、木っ端微塵に砕け散った。……少女いた範囲には大きな穴が空き、黒い黒煙が上がっていた。


「……おわかり頂けたかな。外しはしたがとてもいい見せものになったと思うのだが」


 私の前にはニヤリと笑いながら立ち尽くすヴェルダがいた。


 そして私はこの時知った――――ごく一部の人間に潜む歪んだ性癖を。

こんばんは夜分失礼します。

少し重い内容になりましたがいかがでしたでしょうか。

なぜ少女は爆発したのか。そしてヴェルダの策略とは。

小説では少し表現しづらい面々もありますが、そこは皆様の想像にお任せして中身の雰囲気を感じ取って下さると幸いです。

この章では徐々にこのような重いような展開が多々増えていくのでその辺りご理解頂けるようお願いします。

取り敢えず各回は2~3回構成にし、分けながら投稿していきます。

中身の隅まではまだ作成中ですが。

さて蒼衣達は無事敵からの刺客ヴェルダを倒すことはできるのだろうか。それでは次回またお会いしましょう。

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