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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第4章【都市部編】
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【言付けの知らせ その1】

~新ロシア~サンクトペテルブルク国家軍基地~


 通信が切れた。


 急に発信音が聞こえたので応対したのだけれど。


 本来なら護衛長であるヴィセットさんが引き受ける事柄なのだが、生憎今は当の本人は部下の訓練に勤しんでいる。


 時折、外から聞こえてくる轟くような声がこちらまで聞こえてくるのだが、恐らく護衛長他ならないだろう。


 まったくどうしたらあのような声を腹の外から吐き出せるのやら。


「さて、ヴェナルドさんに伝えないと」


 広い部屋の壁際に掲げられた時計を見て時間を確認する。


 現在時刻は17時30分。


 沈みかけの夕日の外からは、涼しい風が吹きガラス窓から見える木は緩やかに踊っている。


 広範囲の敷地には、ロシアの兵が入り交うように建物の方へと向かう様子が見え透く。


 もうじき夕飯の時間帯なので、兵達は一斉に食堂の方へと向かっている。 


 予定を立てるべくまずはヴェナルドさんに伝えないといけないのだが、もう済んでいるだろうか。


 今日の昼過ぎ会議に出かけられ、私は見送りに行ったのだが、帰省する時間をその時聞いてみたら20時に帰ってくると言われた。


 会議の内容がどういったものなのかは知らないが、相当難しい内容なのだろうか。


 あと数時間あたり猶予があるが、早めにこれは電話するべきか迷うところ。


「……とりあえず帰るのを待った方がいいか」


 遅速(ちそく)問わず、ここは帰って来られてから話すのがよさそうだ。


 もしかしたらまだ要件が終わっていない可能性もあるし、ここは加減しておくことにする。


 時間的に切りがいいので、今から私も腹ごしらえを済ませに行くことにした。


 部屋を出て、食堂の方へと向かう。


 総理の部屋を出て左手方向に真っ直ぐ進めば食堂へとすぐつけるので、割と近い。


 私が歩いているとすれ違う兵の人に一言ずつ声をかけられる。


「お疲れ様衛兵、これから食堂にいくの?」


「ええ。それにやることも特にないですし」


「そう、ちなみになんだけど今日はピロシキがでるみたいよ」


「楽しみですねそれは」


 細々と引き締まった体が特徴的な男性からは。


「おや、衛兵お勤めお疲れ様です」


「あ、はいありがとうございます」


 軽く会釈してきたのでこちらも軽く首をこくりと振る。


 そして食堂近くまで行くと。


「よう」


「シャルロさん」


 ギャリソンキャップを被る金色短髪の女性。半目をしながら偉そうに壁にすがり足を組むこの方はシャルロ・グロムさん。


 普段は軍事指揮を主に行っている方。


 軍事教師も務めており、時々軍の学校で生徒を指導していたりする。


 兵の話によれば、教え方は厳しいけど頭に入りやすいと評判はいいみたい。


 教え方は達者なのだろうか。


 彼女に教わったことは1度もないので、上手いかどうかは分からないのだが周りがそう言うのだから実力は確かなものか。


 目つきは怖いが、実は優しい人。


 昔軍に入りたての私に、優しく接してくれた事を今でも覚えている。


 因みに護衛長とは訓練校からの馴染みらしい。


「おつかれ。一緒によかったら喰わないか?」


 気軽に声をかけてくれた。


 それにここで断ってしまえばシャルロさんに失礼だし。


 1人で食べるより2人で食べる方が何倍も美味しくなると言うし、一緒に食べて損はないと思う。


「私で宜しければ」


「本当は? 嫌なら無理に付き合わなくてもいいんだぞ」


 とどめにもう一度聞かれる。


 嫌々そうに思われていると懸念でもしたのだろうか。


 けれども私の中で嫌だと思う気持ちは一度もない。むしろ嬉しい限り。


「正直だなお前は。逆にこれから嘘言ってこないか心配になるくらいだ」


 急にそんな人は変わったりはしないと思うが。


 いやするつもりすら一切ない。


「……それにシャルロさんいつも1人で食べているじゃないですか、それはなんか寂しそうだなあって」


「衛兵、それはこの孤独の身の私にかわいそうだから仕方なしに一緒に食べてやると言っているのか」


 なにもそこまで言っているわけではないのだけれど。


「いえいえ違いますよ。別におちょくっているわけでは」


「……まあいい。よしそれじゃ行くか」


「ふっ」と彼女は笑った。そして今夜はシャルロさんと一緒に食事することにした。


 ――――食事の最中、私はシャルロさんと話す。


「ほう、そんなことがあったんだな。でもまたノヴァの連中がここにくるのか」


「なんか嫌そうですね」


 少々深刻な表情を浮かべながらそう言う。それはまるで頻繁に訪れる客に対して嫌気のさす人みたいな目つき。


「そういうわけではないんだけどな。…………単に面倒くさそうだなあって感じはする」


 頭をかきながら照れくさそうに言うシャルロさん。


 すると話を切って私に言う。


「衛兵、このあと総理にちゃんと言っとけよ」


「もちろんそのつもりですよ」


 そういえばとある人物が見当たらないが。


 大勢の人混みにいつも目立つその人がいるわけだが、どこにも見当たらない。


 周りを見渡してみるが一向に。


 どこにいるのだろう。


「どうした? キョロキョロ周りをみたりして」


「あの……ヴィセットさんは?」


「…………あいつか。あいつは」


 一呼吸おいてシャルロさんは。


「あいつ物覚えの悪い兵に今ガミガミ叱ってるらしいぞ。どうやら全然自分の指示通りにやってくれないとかなんとかで。……私も一応見かけて止めはしたが無駄な時間だったな」


「お説教中なんですね。そこまでやる必要あるんですか」


 正直ヴィセットさんは結構神経質な人らしいからこればかりはなんとも。


 物覚えが悪いとはいえこれはかわいそうだ。


「まあ一応軍の人間だからな。あいつなりの矜持というものがあるんだろうなきっと」


 大人は色々とため込んでいることがたくさんあるらしい。


 私達二人が呆れるような素振り見せていると、1人の体格の大きい男性がやってきた。


 その人……その方は、ロシアの中心的なまとめ役の人と言っても過言ではない人物。


「何やら不安そうな顔つきをしているではないか2人共」


 周りより人一倍の声を張り上げながら優しい眼差しでこちらを見る。


 彼は心躍る様子だった。


「ひ、秘書官!? どうしてここに」

「ひ、秘書官!? どうしてここに」


 目を細め口を揃えて言う。


「ふむ、何やら気になる声を伝っていたらここにたどり着いてだなうん」


 偉大な地位についている人でも休憩時間に初心に帰るらしい。


 この方は総理の秘書官及び全ての兵に命令を与える総合司令官ニベルトリウム=シュームさんである。


 


 ロシアの指令する階級では一番高い位についている。それをしながら総理の仕事を手伝う秘書を担っている。とても偉く周りから尊敬される人だ。


 ……ということはヴェナルドさんはもう帰ってきているのかな。


「会議もうおわったんですか?」


 私がそう訪ねると。


「イズヴァニィィィィィーチェェェェェッッ(すまん)!!すまん御兵ッ! 私は今日総理と共に言っていないのだッ! よって私に聞いてもその情報は手に入れることは不可能なのだァッ!」


 声を張り上げ天井を仰いだ。


 この方は申し訳ない時常々大声で返事するのだが、いつもうるさい。


 私達の方へ唾が頬についた気が。


「……失敬少々もし分けなさすぎて気が立ってなすまぬ」


 とハンカチを渡してくれた。


「いやいいですよ別に」

「私もです。それほど気にしてはいません」


 シャルロさん明らかに絶対私に便乗して言っただけだろう。


 失礼になのは分かるけど。


「だが、そういえば先ほどもうじき帰るとの連絡が届いたな。なのでごへーいぃッッ! これで問題なーし!」


「は、はあ」


「部屋で待機しておればそのうち総理が顔を出してくれるであろう! おやもうこのような時刻か早いものだな時間が過ぎるというものは」


 ニベルト指令が手に通していた懐中時計を確かめると、何やら時間が過ぎていることを察する。


「では2人共、私は仕事に戻ぉぉぉる、のでこれにて失礼する。ではダスヴィダァァァァァーニャッ!!(さようなら)」


「…………行っちゃいましたね」


「う、うるせえ」


 ニベルト指令が立ち去ったあとに、ため込んでいた言葉を漏らす。


 シャルロさんはほっと安堵しながら目線を落とす。


「なあ御兵、話してて辛くはないか?」


「つらくはないですがどうしたんですか」


「ヴィセットには及ばんがな……これ以上騒音をまき散らす軍人を増やさないために、御兵お前だけでもああはならないでくれると助かる」


 口やかましい方が増えることに不安があるのだろうか。


 別に私は構わないけどあれは人によっては苦痛となりえない問題だ。


「……なるわけないじゃないですか寧ろ嫌です」


「そ、そうかなら安心した」


 それからというもの止まっていた手を動かせて、再び食事を摂った。




「じゃあ私はこっちだから……そんじゃあな御兵」


 そういうとシャルロさんはテキパキとこちらを振り向かずに去って行った。


 食事後、シャルロさんと別れ、それぞれの持ち場に戻る。


 この軍事基地では自室は完備されてはいるものの、階級によって部屋の品質が違う。


 一番最下位の兵に支給されている部屋は素朴というか、質素というかとにかくボロボロな部屋である。


 なので日に日に昇格を目指して上の階級に上ろうとしている兵が何人もいるらしいが。


 因みにわたしの部屋は総理……ヴェナルドさんと共有して先ほどの部屋で暮らしている。


 つまり一つ屋根の下に住んでいる訳だ。


 ヴェナルドさん曰く、私に貧しい環境で暮らして欲しくないらしくそれで私はその話に応じてそこにいるけど。


 ……私が部屋に戻ると小さな少女が黙々と熱心に資料を片付けていた。


 近くまで駆け寄り私は声を掛けた。


 「ヴェナルドさんお疲れ様です。お時間のほどいかがでしょうか?」


 その少女――この国の現首相ヴェナルドさんは手を止めて私の方を見上げた。


 すると彼女は微笑ましい笑顔で答えてくれた。


「リサさん。お疲れ様です要件があるなら伺いますよ」


「あの……実は」


 華奢な体を器用に使い私の方へと近づかせた。


 ――――私はリサ・スヴェード。理由あってヴェナルドさんの性を貰い、このロシアで軍事関係の仕事をおこなっている。



 


ロシア視点からの話ですが執筆に苦労しました。

こんばんはみなさま、もえがみです。

日数が少し空いてしまいましたね。まあ自分の手が中々動かなかったこともあれですけど。

建物のイメージは特にまだ目処は立っていませんが、だいたい宮殿みたいな感じの基地を想定しています。

あれ、そういえば最後に出てきた語り手の名前……どこかで聞き覚えがあるような。

さてどうでしょうかね。ある程度ネタバレは自重するとして敢えてそこは伏せておきますが彼女の正体はいかに。

次回は後編を寒さの奮闘に耐えつつ書く予定ですので、みなさまできれば次回もまた見て下さると嬉しいです。ではでは

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