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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第4章【都市部編】
122/139

【偽りの形貌(けいぼう) その2】

 夕暮れの街。


 空から見渡す限りの新東京都を私達は眺める。


 夕日は、私達が乗車する観覧車を通過し、色鮮やかな空間を作り出していた。


 私は理奈と会話する。


 彼女――理奈は、なぜ組織を入るのを拒絶するのか。


 それを聞くために今こうして話している。


「私ね、やっぱりあの時に戻るのが一番嫌なんだ」


「…………」


 彼女の言うあの時というのは、恐らく昔虐められていたということ。


 以前に打ち明けてくれて、おおかたの私情を把握し彼女のことを理解したつもりだけど。


「この夕日、綺麗だけど私には濁っても見えるの」


「なんで、こんなに綺麗なのに」


 見晴らしがいい街の風景。それは誰もがそう思う答えだ。


 でも彼女は違う。


 優しい素顔とは裏腹に、彼女にとって夕暮れの時間は心の傷のような存在。


 それは過去のできごとが関係するからだろう。


「あの日も夕方の時間帯だったよ。……その日色んな人に一方的に攻撃されてね。何か話があるんだろうなと軽はずみに駆け寄ってみたんだけどそれが罠だった。……あの時に知ったよ。誰もが全員自分に優しくしてくれるとは限らないって」


「でもあなたはそれを乗り越えて私と出会った。違う?」


 理奈は首を横に振った。


「……それは山田さんの力あってのことだよ。私1人じゃそんなことできなかったもん」


「でも……」


「それよりも……ここまで来るまでの代償が多すぎたと思うの。だってあの人が……」


 視線を落としながら言いづらそうに小声で言う。


「千草先輩が私のせいで死んでしまったから」


 その人物は理奈がここにくる以前に住んでいた場所で、彼女が一番信頼をよせていた人物。


 千草さんは、理奈を守り息絶えたと聞いていたけど。


「私と関わらなければ彼女が死ぬことはなかった。…………私のあんな能力のせいで。私と関わらなかったら…………」


「理奈、自分を責めてもきっとその千草先輩は喜んでくれないよきっと」


「え?」


「理奈、千草さんはあなたに背中を押す言葉を残して逝かれたんだよね。…………殺人者にとって死は隣り合わせ。そうなるのは仕方ないよ。……千草さんは自分が助からないことを分かった上であなたに最期に言葉をあなたに残して……理奈に後を託したんじゃないの?」


 もしそうだとしたら、千草さんにとってその決断は非常に辛いものだったのだろう。


「蒼衣ちゃん……」


 理奈は下に向けていた顔を私に分かるように上へとあげて表情を見せた。


 顔をみると、両眼からは涙を流していた。


 相当彼女にとってその千草さんの死は痛いできごとだったのだろう。


 私はその現場にいなかったからその時どんな状況だったのか、想像はできないけど恐らく私が思う以上に辛いものだったのだろう。


「そうだよね。ありがとう。……こんなところで泣いていたら千草先輩に笑われちゃう」


 笑顔を見せ、涙を拭う。


「それにあなたが虐められていたこと、それは今となっては不要なんじゃないの。……あなたがこの場に立っているということはそれを理奈自身が乗り越えたという唯一の証拠よそれは」


「うん」


「あなたがこれからどんな組織に入るかは分からないけど、そろそろ自分に自信を持ったら? 誰ももうあなたを虐める人はここにはいない。……今は無理でもいずれ入れるよう心構えを自分で決めるようにするといいかもね」


「うん、いつになるかわからないけど、その日になったら私も組織の一員になってみんなを支えたいな」


 観覧車が下まで降りてきた。そろそろ話時間もおわりに迫る頃合いだ。


 そして地面が近づいてきた時に私は観覧車のドア開け降りる。


 降りる前に理奈の方を向いて一言告げた。


「理奈、その力はきっと誰かを助けるにあると思うんだ。だからさっきも言ったけど自信持っていいんだよ自分に。行こ理奈」


 私は理奈の片手を握って一緒に降りた。


 その時彼女は涙を垂らしながら小さな声で言った。


「……蒼衣ちゃん、ありがとう」


「なんか言った?」


「ううん、なんでもない」


 微笑むその顔はいつもの理奈だった。






 遊園地の中はもう真っ暗だった。


 周りは外灯が灯っており、暗闇の道を光りが照らしていた。


「すっかり暗くなったね。ごめんね蒼衣ちゃんこんなに遅くなって」


 閉店時刻は19時。そして現在時刻は18時。


 あと1時間と言ったところ。


 ひとけも少なくなり、周りは静寂と化していた。


 この時間帯にあまり浸っている人は少ないのだろうか。


「大丈夫気にしないから」


 このまま帰ろうと2人で道を歩いていると。


「……なにあれ」


 理奈が指さすその方向には黒い謎の物体があった。


 丁度水溜まりくらいの大きさ。


 これは一体何なのだろう。


「ちょっと理奈」


 理奈は危険をかえりみずにその物体へと近づいた。


 その場で中腰になり、ぼっと見つめ始めた。


「…………そこに君は誰だ」


 黒い謎の物体から囁く声が聞こえてきた。


 どうやら物ではなく生物らしい。


 でもこんな生物聞いたことも見たこともないな。


「少し頼んでいいかお嬢さん」


「……なに?」


「私と握手してくれないか。そうしないと私実体が持てなくてな」


「いいけど……手は……ひゃっ!?」


 物体は1本の手を象った黒い手を作る。


 理奈はおそるおそるに握ろうとするが。


「早くしてくれない?」


 急かされる理奈。


「……分かったよちょっと気持ち悪くて勇気いるけど……」


 ようやく決心がついたのかその黒い手を握る。すると。


「……………………う…………そ? …………あなたは」


 その黒い物体は二足歩行の人型へと姿を変えた。


 ブレザーを着たポニーテールが特徴的な女性の姿だった。


 色の人と変わらない色白とした肌色で。


 だが人型の姿へと変えた物体に対して理奈は言葉を失った。まるで亡くなった知人に再会したかのような反応で。


「……お嬢さんどうしたんだその顔は。……おっと言い忘れていた私の能力はな」


「ち、千草先輩!」


 急に抱きつく理奈。


 物体が何か喋ろうとしたがそれも理奈の抱きつきで遮られてしまった。


 よほど嬉しかったのだろうか。その姿をみて。


「待て待て」


 慌てて抱きついてきた体を腕で押し返す物体。


「あ、すみません。ついビックリしちゃって」


「…………そのこう言うのは悪いんだが、…………今君が見えている人は君が知っている本人ではないのだよ。先に謝っておくよ」


「…………ごごめん」


 距離を置き、離れる理奈。


 状況をのみ込めたらしい。


 私は理奈達の方へと近づいて。


「すみません、説明してくれませんか? 私の親友がうまく状況を整理できていないみたいなので」


「りょ、了解だ」


 苦笑いをしながらその物体の人は答えてくれた。





「私はゲノムというマダロイドだよ」


「マダロイド?」

「マダロイド?」


 口を揃えて言う。


「と言っても昔作られたマダロイドだがな」


 遊園地を出て入り口付近で私達は話すことにした。


 周りには照明器具が所々設置されている。


 でもこんな時間に学生2人が見知らぬこのゲノムという人と話すのもどうかと思うけど。


「私はなかつて第一次ロシア戦線で旧ロシアに作られた最初のマダロイドだ。他に3体いたんだが今は行方知れずだ。海に放り出され数百年間ずっと放浪し最近ようやくこの日本へとたどり着いた」


「なるほど……取り敢えず破壊されにきたんですか?」


「は、早まるな。そしてだな私は公式では存在が認知されていない存在のマダロイドだ。ごらんのとおり人工知能も持っている」


 確かに他のマダロイドと違って知性もあるな。


 昔作られていたマダロイドはこのような物が多かったのだろうか。


 でもなんで今理奈の知人に化けて……。


「私は実体が存在しない」


「実体が存在しない? それはどういうことですか」


 私がそういうと。


「……普段の姿はあのような液体のような体なんだ。そして私は接触した相手の記憶の中にある人物、物を読み取りその姿に変える」


 特殊な変身能力だな。


「だが私は実体がないから他人の記憶にある人物の姿をコピーしないと生きていけない。今までは魚だとか動物の体を借りて生きてきたが、どれも動きづらくてな。それでそこのお嬢さん、理奈さんの記憶の中にあるこの人物の姿をコピーしたわけだ。人の体は動きやすいからな……それにしても人間の体は動きやすいな」


 まあ理想の動きやすい体が欲しくて、理奈と接触しこの体を手に入れようとしたわけか。ということはこの千草さんの姿は理奈の記憶にある千草さんそのものの姿なんだな。


 やり方は少し悪いような気はするけど、悪く言うのはやめよう。


「……そうなんですか。急に千草先輩が出てきてビックリしました」


「それであなたはここへ何しに? まさかとは思いますが私達の街を侵略しにきたんじゃ」


「……今の私は誰とも無関係だ。まあ自由人さ。戦う気も一切ない」


 どうやら敵意のある相手ではなさそうだ。


 それに旧ロシアはもうこの世には存在しない国。ゲノムさんにとってそれは都合のいい話なのだろう。


「これから私は街を探索しながら自由に暮らしてもらうことにするよ。……1つ忠告しておくが邪魔だけはしないでくれようるさいのは嫌いだからな」


 個性のあるマダロイドは初めてみたが、こうも勝手すぎるものとは。


「それじゃ……またな。どこかであったらまたよろしく。あとしばらくはこの体をつかわせてもらうから」


 そう言いながらゲノムさんは手を振りながら去っていった。ゆっくりと。


 彼? が何者かは知らないがマダロイドにも色々いるのだろう。


「理奈?」


 理奈はぼっと立っていた。遠目でゲノムさんを見送るように。


「あぁごめん蒼衣ちゃん。なんか…………ねちょっとだけ嬉しくて」


「でもあの姿は……」


「それでも嬉しかった。もう一度先輩の姿をみられて。大事に使って欲しいな千草先輩の体」


 理奈は満足するような顔をすると一足先に歩き出した。


「あ、ちょっと待ってよ」


「早く早く置いて行っちゃうよ」


 そのまま私達は別れるところまで仲良く笑いながら帰った。


 ……結局ゲノムさんが何者かは分からなかったけど、古いマダロイドも新しい生き方しているらしい。


 なぜ人と共存するのかは分からないけど。


 ――――理奈がいつ組織に入るかは分からない。


 でも私は影ながら応援するつもりだ。


 1人の親友として。


 今日という日が彼女にとって背中を押すことになったのなら彼女が組織に入るのも夢ではないかも知れない。


 理奈、私はいつでも待っているからね。あなたが恵まれた組織に入れることを。



こんにちは。

今回少々説明が難しくなりましたが説明の修正は追々することにします。

ゲノムは、昔作られたマダロイドです。能力としては人など生物の記憶の中にある、人物、物のかたちを読み取ってその姿を自分にコピーして自分の体として使うような、ようは変身能力ですね(少々複雑ですが)

今後彼が出るかは分かりませんが、今回は理奈と千草(偽)を出演させるといいかなと思い書いてみました。

さて次も頑張って引き続き書いていく予定ですので何卒よろしくお願いします。ではではまた

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