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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第4章【都市部編】
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【偽りの形貌(けいぼう) その1】

 今日は理奈に遊ぼうと誘われ、街にある広場へ来ていた。


 待ち合わせにここを選んだけど変ではなかったかな。


 広場の中心には、大きな噴水が湧き出ており、ベンチが噴水の周囲に並んでいる。


 端の方には、飲食店や雑貨屋など様々な店舗が建ち並んでおり私は、中心方面に設置されたベンチに私は座り理奈を待っていた。


 集合時間まで少し早く来てしまったけど、そんなに退屈しない。


 周りからは人々の喧噪(けんそう)が耳を伝って聞こえてくるからだ。私以外にも人は数名といる。


 子供と一緒に歩く親子連れ数組、路上で電子新聞紙を読む中年ぐらいの男性、屋台でひたすら購入するものを迷うスーツ姿の男性など様々な人がいる。


 誰もが1度は来たことがある、有名な広間だけどいつもながら賑やかな場所だ。


 こんな大きな声を聞いていれば時間感覚なんて気になることはない。


「騒がし過ぎて平和よね」


 空をみて、独り言を言う。


 巨大な数々の雲は悠々と青空を動いており、とても呑気そうだと感じる。


 人もあんな雲みたいに自由にでもなればいいと常々思う。


「…………」


 ……理奈はどうしてどこの組織にも入ろうとしないのだろう。


 あのような再生能力があれば、こちらとしては非常にありがたいのだが一体なぜなの。理奈、あなたは何を拒んでいるの。誰にもその力をみられたくないから?


 恐らくこの前に話してくれた、昔その能力が災いして虐められていたことが引き金になっているのだろうか。


「でも言ってくれないと何もわからないよ。私達友達でしょ」


 小声で言う。周りの空気を気にせずに。


 もし思い悩んでいることがあるのなら遠慮なくいってほしい気持ちがある。


 少しでも彼女の力になれればいいと思っているから。


 でも今は敢えて言わないことにする。


 ()かしても何も解決しないから。


 すると誰かが私の方へと近づいてきた。


「早かったね待った?」


「ううん全然。じゃあどこ行こっか」


 キャミソールとミニスカートに身を纏った理奈が、曇りない笑顔でやってきた。


 彼女はそっと目を閉じる。そして笑みを浮かべ口を開くと。


「遊園地でも行かない? 私この間学校で先生のお手伝いしていたら、先生がお礼にチケットを2枚くれたんだ」


「なんで貴重なチケットを2枚もくれたんだろう。家族で行けばいいのに」


 どの先生がそんな太っ腹なことを。


 全く誰なのか見当もつかないんだけど。


「因みにその先生誰なの? そんな大胆なことするのは」


 苦笑しながら聞いてみる。


 さて一体誰なのか。


「ええとね照依先生。なんでも『私には一生縁のないものだ』って言っていたんだけどね。……渡してきた時非常に苦そうな顔していたんだけど」


 ……まさかあの照依先生だったとは。


 非常に衝撃的な答えが返ってきたがこれは想定外だ。


 てっきり優しい男性教師かと考えていたが。


 でも他の生徒、教師から非常に怖がられていると聞く。


 一人暮らし独身で、未だに彼氏ゼロの二十台らしい。だから持っているだけで自分は不幸になるとでも思ったのだろうか。


 正直私は、あの先生嫌いではないんだけど。


 前に1度、助けてくれたし別に悪い人とは到底思えない。


 教師の間では、全くモテていないらしいし私としてはかわいそうにみえる。


 先生も辛いことあるんだな。


「そ、そうなんだ。まああの先生他の人からは悪い噂を立てられてるみたいだし」


「……蒼衣ちゃん照依先生をいじめちゃダメだよ」


「ごめんそうだよね」


 悪いことを言うなと理奈に少し叱られてしまった。


 あまり先生を悪く言うのはやめよう。





「色んな場所があるけど、まずはどこへいこう」


 移動手段は容易であった。


 遊園地行きの電車便は渋滞しておらず、理奈と途中はぐれることもなかった。 


 そして現在午前10時。来たときには大勢の人が長蛇の列を作りながら遊園地付近で待っていたけど、そんな苦難を乗り越え今ようやく遊園地へ入ったところだ。


 案内図を見ながらお互いアトラクションコーナーを確認する。


「ジェットコースター……はやめたいよね。なんか落ちそうだし」


「なんか分かるかも。昔乗ったことあるけどとても怖かった」


「じゃあどこにする? 私はどこでもいいよ理奈の行きたいところで」


 正直こういう遊園地なんてあまり行ったことないから、どれをどう楽しめばいいのかわからないし。


 なのでここは理奈に任せることにした。


「じゃあ最初はコーヒーカップにでも乗ろう」


 そのまま理奈に任せるがままにアトラクションを体感した。


 コーヒーカップ。目が回ったけど大丈夫。


 メリーゴーランド。乗っていたら幼い子供に見られ「おねえちゃんここでなにしているの」と言われ「えっ」となった。正直あの時は恥ずかしかった。


 遊園地ってこんなに辱めを受ける場所だったかな?


 そしてようやく昼を回った。小腹を少し満たすため近くにあったレストランで休憩。


 外にいくつか置いてある丸いテーブルの椅子に腰掛ける。テーブルのすぐそこには注文用の電子パッドがあった。


 これは注文品を頼むと注文品が完成した次第、注文品を持ってきてくれるのだが、それは基本全て接客用のマダロイドが持ってきてくれる。


 人はあくまで調理全般だ。


 昔は全て人の手で行われていたらしいのだが、流石に今の時代はそんな手間暇かかるようなことはしない。


 でも普通の喫茶店など、まだ普通に人が接客する場所も中にはある。


 さて何を頼もうか。


「じゃあ私はこれで」


「それじゃ私はこれ」


 私はサンドイッチとジュースのセット。理奈はホットドッグとジュースのセット。


 意外とまともなもの頼んだな。


 理奈はてっきりケーキでも頼むのかと思った。


「同じようなもの頼んだね」


 理奈が薄笑いをした。


「まあこっちの方がいいし」


 注文のボタンを押すと、『送信しました』の画面が表示された。


 数分後、時間はあまり経っていないのにも関わらず私達の前に人型をした二足歩行の白いロボットが現れた。


 ロボットは胸部のハッチを開き、中から私達が頼んだ注文品を手渡しでテーブルに置いた。


『ゴユックリ』


 そう言うと次の席の人の方へと歩いて行き、姿を消した。


 あんなにあっさりなんだ。


「凄くシンプルだね」


「う、うん」


 まあアトラクション用のロボットだ。そんなに予算は掛けられないなど、営業側のなにかしら理由があるのだろう。


 それから暇つぶしに食べながら、理奈と話をした。


「今日はごめんね。急に呼び出したりなんかして」


「ううん、全然気にすることなんかないよ」


「最近どう? 組織のみんなとは上手くいっていけてる」


「そうだね、半々って言った感じかな。リーダーはダメダメな人だけど、やるときにはちゃんとするけど、1人は無口で明確に動く戦いのエキスパート、その連れは連射武器が得意な殺人者。それでもう1人は……なんかちょっと意識が高いお嬢様なんだけど」


 私のいる組織には個性豊かな人達が多いけど、揃ってきてから分かったんだけどまとまりがあまりない。


 でもやるときには力になってくれるから頼りがいのある仲間が多いのだけれども。


「その()にいないから私にはよくわからないけれど、みんなと仲いいんだね正直羨ましいよ」


 理奈は少し羨ましそうに微笑んだ。


「……理奈はどうして組織に入ろうとしないの?」


 話の展開で一応聞こうかと理奈に理由を聞いてみた。


 すると目線を少し落として、目を半開きにして語りだしてくれた。その顔はどこか悲しそうな表情だった。


 いつもは見せない深刻な顔。


「……前にも話したけど、自分の能力が災いして、私昔虐められていたんだ。今でもそれ引きずっているんだ。またあれを見られて虐められたらどうしようって。もしそれでまた同じようなことをして周りに迷惑をかけたらどうしようってね。…………私が組織に入らず戦わないのはそれが理由なんだ」


 やはり私の予想は当たっていたらしい。


「でもどうして。もしダメなら私達のところに来ればいいじゃん。……みんな優しい人達ばかりだよ。躊躇う理由なんて」


 しかし理奈は首を横にゆっくりと振った。


「それじゃだめなんだ。結局その人達にも迷惑が掛かっちゃう。…………私の居場所は今この時間だけ……蒼衣ちゃんと私が居られる時間だけが唯一私の存在価値を発揮できる場所なんだ」


 理奈はこんな抱え込むような人だったっけ。


「……上京させてくれた山田さんにも申し訳ないしそれだと。そうなれば私の人生は逆戻りだよ」


 理奈は「場所を移そう」と言い夕焼けの空を見渡しながら観覧車に乗った。


 そこならば遠慮なく話せるらしい。


「夕焼けきれいだね」


「うん」


 見渡す景色には、新東京都中が夕焼けに染まる綺麗な街並みが広がっていた。


 日は燃えさかるように光り、辺りを照らす。


「あの日もそうだったな。私が虐められた日もこんな夕方の日だった。……ねえ蒼衣ちゃん。蒼衣ちゃんは私のこと怖くないの?」


 その時の光景は今でも覚えている。


 屋上の地面に広がった血痕。切断された理奈の腕。


 しかし切断された箇所は一瞬で再生し元の部位へと一体化していた。


 あれは衝撃的なものだった。どの殺人者でも未だにあのような能力を持っている者は少ないだろう。


 正直あれは怖くはあった。


 確かに。


 でも嫌いになるほどではなかった。


 その時私は彼女の手を握り「そんな事をしたからって私達の(えん)が切れることはない」と堂々と答えた。


 なぜなら私の親友だからだ。それが他人にどんなに嫌がられているものだとしても、それを私は全身全霊で受け止める。なにがあろうとも。


 それは今この時もそう思える。


 倒れそうな彼女に対して私は、握っている手のひらに力を込め、真剣な眼差しで彼女をみる。


「何言っているの? この間も言ったけど変ってないよその気持ち」


「蒼衣ちゃん……」


「だから話そ。まだ下まで降りるまで時間あるからたっぷりと。私は心置きなくあなたと話したい」


 すると安心して立ち直ったのか彼女は、私に普段の顔をみせた。


 曇りのない普通の顔だ。やはり理奈はこの顔が一番よく似合う。


「…………ありがとう蒼衣ちゃん。……じゃあそれまで話そうか」


 私は理奈の悩み事を聞くことにした。

3日遅れですがこんにちは。

久々に理奈を登場させ話を発展させようと登場させました。

なぜこの時に出したのかと言いますと、それは補足説明で出そうかなと思い出演させました。

まあ彼女には色々悩んでいることがいろいろとある訳なんですが、次回蒼衣がそれを解決しようと話に乗りだします。

さて蒼衣は理奈の悩みを聞き、解決できるのか。

因みに今回は、敵殺人者は一切登場しないです。

代わりにある方が……?

それでは次回またお願いしますではでは。

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