【特殊任務発令その3】
2815/4/22. 19:00 旧東京都 デパート廃墟_
勢いよく斬りかかった……。しかし俺のスタードの先端部分は2人の足元にも届いてなかった。
次第に体の生命エネルギーを吸い取られるような感じがする。
「……っ!?」
現状何が起きているのか理解できず、戸惑う。
「どうしてだ…… 何故届かない…………?」
それに加え体が金縛りでもあったかのように、思い通りに動かない。
「迂闊ね、坊や……ふん」
シルファは手で俺の体を吹き飛ばす。
「グハッ!」
壁に飛ばされ、ぶつけられた瞬間に、強い激痛が頭から迸る――――――。
その痛みはよく効いた。
すると、頭から血が流れ、片目にその血が覆い被さり、片目の視界が赤く染った。
だが、辛うじて気を失わず、意識は保てた。
しかし、さっきのダメージは非常に痛い。だがまだ大丈夫だ。
「どういうことだ? 何故俺の動きは一瞬止まった?」
「理解できてないか…… 周囲のものをよく見てみろ…… そこにヒントがある」
「ヒントだと……?」
周りを見渡す。 だが動きを止められそうなものはない。
起き上がりもう一度、周囲を見渡す。 それでもまだそれらしきものはない。
……。
……。
……。
ひょっとしたらさっきのスポットライトが関係しているのか?
俺は視線をスポットライトに向けた。
「そうだ、そのスポットライトをみるのだ……」
……。
……。
まさかな……。
だがそのスポットライトをよくみる。 そこにはちょっとした違和感のある箇所があった。
それはスポットライトにしては、ちょっと構造が違う。内部にアームのような物がある。
もしかしてこのスポットライトはダミーか? だとしたらあのシルファが操っているのって…………。
『あらゆるものを操る』……いや、正確にはちょっと違うんじゃないのか? ……だとすれば――――――。
「もしかして、シルファお前“あらゆるものを操る”というのは、正確には、物の構造をちょっと変えて操っているんじゃねえのか?」
シルファはニヤっと笑う。
「今さら? そう……あなたの言う通りよ」
「つまりそれで、どんなものでも粘土みたいに練って構造を変えたんだな? そしてその電気の源は――――――」
「Xエナジーだろ? Xエナジーなら電気の代用とすることは朝飯前だ……それ以外考えられない」
するとシルファは軽く俺を褒めるかのように拍手する。
「ビンゴ〜! ビンゴ〜! 大正解!」
「ならもうわかるよね? コイツはもう単なる照明じゃないってことを…………!」
「あぁ!」
認めたくはなかった。 それがアレだなんて……。
するとスポットライトライトは、突如変形を始める。
それは、まるで機械でできた竜のように姿を変える。後ろからは巨大な刃物の付いた尻尾。両サイドからは人を軽々しく持てそうな腕が出てくる。
3体が同時に姿を変えた。――――――。これは間違いなく……。
殺人機体兵器。殺人機体兵器には色々な種類があるが、これは、天井に突くぐらいの大きさをしているので、中型の殺人機体兵器だ。
この竜の姿をした殺人機体兵器の名称は“ドラグーン”。 遠距離での砲撃が得意であり、口腔の砲門から放たれるビームは凄まじく辺りのものを一掃できるぐらいの火力はあり、近距離戦では尖った両腕の爪が相手の体を一瞬で切り裂く恐ろしい機体だ。
恐らくこれはシルファが作ったものだろう。 ドラグーンは誰でも簡単に製造できるので、他の殺人機体兵器と少し異なり、作るのにそんなに手間がかからない。
機体にXエナジーを注射器のように機体に与えるだけで、まるで生き物のように殺人機体兵器に意思が宿るのだ。
分け与えた本人のXエナジーを所有する者を我が主と認識し、指示を聞く……。 まさに命を与えられたロボットって感じだ。
「だけど……気づくのが遅すぎたわね」
シルファがニヤっと微笑む。
「どういうことだ!?」
「そのドラグーンのライトには特殊なXエナジーを一定時間弱らせることの出来る成分が含まれているの」
「なに……?」
「あなたがさっき私達に斬りかかったのにも関わらず、行き届かなかったのは、ライトの成分をまともに浴びすぎてXウェポンが動かなくなってしまったの」
「Xウェポンってね弱体化成分にはとても弱いの……まぁ殺人者にも寄るけど」
「だから今のあなたのXウェポンは貧弱武器も同然……勝算はどこにもない」
「坊主大人しく観念して、大人しく俺たちに殺されな……野郎共」
ガイナ操っている人間に指示を与えた。すると、彼らは俺の体を群れで絡まってきて俺を羽交い締め状態にする。
正気か? 機体を使って裂いて殺す気だぞ……!
「く……くそ」
せめてあの機体の弱点である足を切断できれば……。 しかし力は一向に入らない。
……。
……。
……。
もう駄目なのか? もう俺はこんな所で死ぬのか……。 そんなの嫌だ……。
目を瞑りながらそう考えた。 そして俺は微かに願う。 もう一度生きるラスト・チャンスを――――――。
でも神はきっと俺の願いを叶えてはくれないだろう。
“死”を覚悟した。
3体のドラグーンの砲門が俺の方へと向けられ、ビームが一斉に収集され発射する準備がされた。
続いてシルファは片方の腕を大きく振り上げる。 恐らくビームの発射する合図だろう。
シルファの腕が振り下ろされる――――――。
「死ねぇぇぇぇ!」
シルファの大声が響く――――――。
再び俺は“死”を覚悟した………………。 その時だった――――――。
天井の窓からガラスを突き破る音がした――――――。
目に止まらぬ速さで、ドラグーン3体の砲門を何かが破壊する――――――。
がしゃああああンン!!
砲門が大破する音が周囲に轟く――――――。
スピード感のある凄まじい音。 それはまるで吹き荒れる風のような音みたいに………………。
俺を羽交い締めしていた人間を刃物のような物で切り裂いてくれた。
血が飛び散る……。が俺は傷1つさえ負わなかった。
それどころか、部位のどこも切断されていない――――――。
ひょっとして、誰か助けにきてくれたのか?
「何事!?」
「前見えねぇよ!」
急なできごとに2人は困惑する。
「……1対2とは……ちょっと卑怯じゃありません?」
暗くなった場所から足音と女性らしき高めの美美しい声が聞こえてくる。
ゆっくりと近づいてくる足音。 その音は、急かさず、冷徹な足音だ。
徐々に後ろから誰かが姿を露にする。
かかっていた影が少しずつ消え、外の光がそれを照らす。
するとある人物が俺の目の前に姿を現した。
その人に俺は見覚えがあった。
この数日間に出会った“あの子”だ――――――。
右手に蒼い色をした縦長い刀――――――。
青のロングヘアをし、美しい青い眼をする。愛らしい少女。
何故君がここに――――――。
「ちょっと通りかかったんで……寄ってはみたんですが」
彼女はXウェポンを横に振った。
闇の空間を青い眼が照らす。その神々しく煌めく青い光は空の色そのものようだった。
「なんで君が……こんなところに……?」
すると彼女は眉をしかめ、殺気の表情を作る――――――。
「話はあとです……今は…………」
彼女は俺の方へと向かい俺の前へと立つ。
「新しいお客さんか? 偉いダイナミックだなさっきの演出」
「せっかくのドラグーン3体をよくも…………」
「悔しいならまとめて相手になりますよ」
「なに!?状況わかってんのかこの小娘!」
怒りの表情をガイナは彼女に向ける。
すると彼女は、Xウェポンを彼らの前に向けた。
その彼女の威勢になんの戸惑いすら感じられない。
「最初に言っておきます…………あなた方はここで今日私が斬り裂きます……」
自分のXウェポンをゆっくりと中腰になって構えた。 いつでも襲いかかってきても反撃できるように。
「さぁ……勝負です……もの頼りの間抜けさん……」
そして彼女は迅速で2人相手に向かって、斬りかかった――――――――――――。