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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第4章【都市部編】
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【難所の壁(てき)を突破せよ】

「じゃあ説明するわね、私の作戦を」


「了解です」


 千草智さんが私に作戦の指示を出す。


 敵は一筋縄ではいかない敵だ。先ほどのようなヘマでもすれば次は確実に仕留められること間違いなしだろう。


 今頼れるのは年上である千草智さんただ1人。


 私が違う戦法で攻撃を仕掛けるのもいいのだが、そうすると不意を突かれてしまう。


 いつもなら政希さんや礼名が率先して指示された通りに動くが、今回は状況が違う。


 なので今は千草智さんの力が頼りだ。


「いい? 無闇に1人で突っ込んで行くんじゃないわよ。さっきみたいにやられる可能性高いから」


 そういえば少しだが、痛みがだいぶ癒えた気がする。これも彼女の能力なのだろうか。


 随分気前がいい気がする。ここからはきつい戦いになるから覚悟しておけ的な、千草智さんの些細な警告なのだろう。


「さあ行くわよ」


「はい」


 私達2人は廃墟の入り口で隠れ、外の周りを見渡すミスチを覗きみる。


「見逃す気は一切ないようね」


「それほど相手も“殺しにかかってきている”そういうことなのでしょう」


「心のない機械でも目についた敵は仕留めるまで逃さないわけね。……というかよくみてあれ」


 千草智さんが、さっき破壊したミスチの腕の方を指さした。


「再生している?」


 破壊された腕の方を見ると、何事もなかったかのように修復されていた。


「どうもあのミスチは、再生機能装置を内蔵したマダロイドのようね。でもあの装置が作られたのはつい最近のはずということは」


 従来のミスチには再生機能は存在していなかった。前の戦い終結後、資材が大量に手に入れられるようになり色々な装置が作られるようになった。


 マダロイドもその1つに当たる。前の戦いまでは再生機能が存在していなかったが現代では、1部だけではあるが再生機能搭載のマダロイドが作られるようになったのだ。


「参ったわね、よりにもよってあんな敵を相手にするなんて。そりゃ何人も殺されて無理もないわね」


 話によれば、その装置を作るのに高コストの費用がかかるらしい。


 でもそれを作ったのは、日本と同盟を結んでいるロシアと日本だけだ。なのになぜこんなものが敵の手に?


 反ロシアにはこの技術力は伝わってないはずなのに。


「勝算はあるんですか」


「そうね、あるとすれば再生装置その核となるものを潰すしかないわね」


「なら、相手のハリボテが見えるまで攻撃するしかないですね」


「……じゃ作戦開始よ」


 私と千草智さんのツーマンセルである戦闘が始まった。


 堂々と出口へと私達は飛んで前に出る。


 すると即座にミスチはこちらに反応して、こちらに向かってくる。


 どうやらある程度の距離なら敵を感知できるらしい。


「頼んだわよ蒼衣」


 私は前に出て先ほどのように攻撃を仕掛けた。


 そして相手との距離が、ゼロ距離になった瞬間、手に持っている武器で私は振り払う。


「…………!」


 先ほどのように関節を自由自在に稼働させ、古いものとは思えない機動力をみせる。


「さっきみたいにいくかッ」


 今度は頭の部分を狙い攻撃を仕掛ける。


 千草智さんが私に指示したのは、頭部を集中的に狙うことだった。


 頭ならそんなに起動範囲も広くないので狙いやすいんだとか。


「この」


 頭を切り裂くように振り払う。すると。


 コンッ!


 今度はその攻撃を腕で受け止めた。


「やっぱりそこが弱点なわけね。でも意外とやるわね、攻撃されないように腕で受け止めるなんてね。……でも」


「……!」


 その受け止めた腕は私の斬撃に耐えきれず切り落とされる。


「あいにくこの武器の切れ味非常にいい方なの」


 するとミスチの腕は再び再生を始める。


「腕が再生するまで何分かかるのかしら? みた感じ数十分はかかりそうに見えるけど」


 再生と言っても、実際に直で見るとちょびちょびと再生していく感じだった。


 そう例えれば、下に砂が落ちていく砂時計を逆再生しているようなそんな感じ。


 ならその隙を狙って私は連続で突きを行う。


「はああああ!」


 ザザザザザザッ!


 しかし容易く左右に1回も当たることなく避ける。


 繰り出した攻撃はとんでもない速さだというのに。やはり手強い敵らしい。



「ならこれならどう?」


 ストライクの柄の部分を口に咥えて体制を変えてみる。


 手で駄目なら口で。この戦法が正しい選択なのかはわからないけど、試す価値はある。


 頭に狙いを定め、目を顰めながら攻撃をする。


 攻撃は弾かれながらではあるが、確実に相手に当たっていた。


 でもそれはかすり傷程度。


 だが私も全く傷を負わなかったと聞かれればそうでもない。


「くっ」


 斬り合いの途中何回か負ってしまったせいか、痛みが染み染みと感じてきた。


 身体中から血の気が伝わってくる。


「ちょっと捨て身の戦法だったかな……」


 次食らったら肉が裂けそうだが、私はもうちょっと踏ん張ってみる。


 ミスチは戦法を変え、胴体部分を開いた。中からは中型の小型銃口が3つ。


「……!」


「剣なら銃で対抗か。悪くはない戦法だけれども」


 八相の構えをする。どうしてこんなことをしたのかというと私には秘策があった。


 それは銃を扱う相手に使う唯一の攻撃手段。


「はっ」


 刀を空中で回し、銃弾をそのまま弾き飛ばした。


 弾いた球はミスチの方へと飛んで行き、そのまま頭部へと3発直撃した。


 タイミングを間違えれば隙を突かれてしまう技だが、上手く行ってよかった。


 だがXエナジーはもう少しでそこがつきそうになっていた。


 せいぜいあと1発が限界か。


 使えるなら大技をお見舞いしたいところだが。



 すると遠くから高速回転しながら、何かが飛んでくる。あれは。


「ナイストライよ、蒼衣」


 向かってきたのは千草智さんのXウェポン。上方向に向かってきたので、私は瞬時にしゃがむ。


 そして千草智さんの投げた短剣は、そのままミスチの胴体に直撃し亀裂を入れた。


 グサアアアアアン!


「驚いたわ、まさか刀を回転させて反射させるなんてね。全く若い子って無理することが好きなのかしら」


 千草智さんの短剣は、そのままUターンし彼女の元へと帰っていく。


「おっとそこのポンコツまだ私の攻撃は終わっていないわよ」


 千草智さんは指を1回パチンと鳴らすとミスチは爆発する。


 どうやら亀裂を作った間に爆破種を忍ばせたらしい。


 ミスチは爆風に巻き込まれ渦の中へと姿を消す。


 さすが千草智さんと言ったところだろうか。自分の力を最大限まで効率よく活用している。


 私もあれほどの力があったらと、少し羨ましい気持ちもある。


 でも殺人者の力を最大限まで発揮できるのは、他人じゃない。それは自分自身なのだ。


「どうかしら」


 爆発の後にも関わらず立ち尽くすミスチ。しかしその姿はあまり原型を留めておらずハリボテ露出している状態だった。


 爆発の威力に驚愕する。小さな爆発がたくさん起きているだけなのにこれで十分な火力を持っている。


 ミスチをここまで追い詰めることができたのも彼女のおかげであろう。


 ベテランの殺人者になればここまで強くなれるのか。


「もう虫の息ね。再生には時間がかかりそうだし今がチャンスね」


 千草智さんは申し訳なさそうな顔で、マダロイドを見下ろす。


「……」


「どうしたんですか」


「ううん、なんでもないわ」


 何か今気にかけたような気がしたが。


「それでトドメは」


「そんなの決まっているでしょう。蒼衣あなたがやればいいでしょう」


 元々私の任務なんだし、トドメを私が刺すのは当然か。


 中心に見える起動する機械。どうやらあれが再生装置らしい。


「……あれを壊せば」


 私は、ストライクを大いに構えてトドメの一撃を放つ。


「ストライク・ブレイク」


 ミスチは私の放った強力な斬撃に巻き込まれ、残骸1つも残さず粉々になっていき、消滅した。






 翌日。ミスチを倒した後、私達は町に戻り倒したことを人々に伝えると宴に誘われて、そのまま一晩泊まることになった。


 まあお酒はまだ飲めないけど、宴の様子は賑やかで人々は私に快く接してくれた。


 そして千草智さんとの別れがやってきた。


「送らなくってもいいのに。私1人で帰れますから」


 帰りの電車を待つ私。ベンチに座る私の真隣には彼女が座っている。


「いいじゃない、一緒に戦った仲間じゃない」


「まあ別にいいですよ」


 どうやら非常に別れが名残惜しいみたい。


 私も実際のところ、彼女と別れるのは非常に辛い。


 でも住んでいる場所が違えば、帰る場所も違う。


「結局、あの産物は一体なんだったんでしょう」


「……きっと私達に忘れちゃいけない何かを思い出させてくれそうな、そんなものだったわ。きっと古い忘れ物みたいなものだと思うわ」


「……戦いってこれからも続くのでしょうか」


「人が戦うのを止めない限り、きっとこれからも戦いは続くわ」


 すると彼女はくすっと笑い。


「でもあなたならもしかしたら」


 今まで見せなかった笑顔。これが彼女の本当の顔なのだろう。


「私は仲間全員失ったからもう守るものは何もないけれど、あなたは違うでしょう。……ほら来たわよ電車」


 私は言われるがままに、帰りの電車に乗る。


「千草智さん、私達はもう仲間です。だからよかったら」


 でも千草智さんはその話には乗らずに。


「それはできないわ。……今の私には。でももしまた何かの縁でまたあなたと出会うなら、その時は再び力を貸すわよ」


「千草智さん、また会えますよね」


「ええきっと。蒼衣あなたはきっと今よりもっと強くなれるわ。だから自分に自信を持って」


「はい。……千水智さんさようなら」


「またね蒼衣。元気で」


 彼女が微笑んで笑うと自動ドアが閉まり、電車が動く。


 私は遠ざかっていく旧東京都を見ながら思いを巡らせる。


 人はどうやったら真の平和が手に入るのだろうかと。


 争いもなく、差別もなく、平和で暮らせる世の中を手に入れることができるのかということを。


 私は千水智さんとの出会いでそれを感じた。

ようやく出せました。お久しぶりです。

最近暑い日が続いてますね。

私は日々、暑さと奮闘しながら毎日を過ごしていますがなんとか1日1日を無理なく過ごしています。

さてそんな私事はさておき本題に移りましょう。

ゲストキャラとして千水智というキャラを出しましたけど、彼女は作中語られている通り仲間を多く失っている人物です。

今後再登場させるかは分かりませんが。

次回はまた都市部での話でも書いてみようかと思っていますので出来上がった次第また上げていく予定です。

次現れる強敵殺人者は一体誰なのか。次回も見てくださると幸いです。

ではでは!


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