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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第4章【都市部編】
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【置き去りにされた遺産 その2】

 物音を立てながら歩く1つの機体。


 古びているせいか全身至る所にサビが付いており、剥がれているパーツの部分もある張りぼてのまだロイド。


 その姿を目の当たりし、私と草水智さんは言葉を失う。


「古い遺産がまだ残っていたのね」


 草水智さんはわかりきったようにそう小声で言う。


「どうしてあの機体が?」


「……私もよく分からないけど、恐らく何者かがあのミスチを改修して、再利用して使えるようにしたんじゃないかしら」


「でも数年前、ロシア残党が拠点にしていたのは、旧東京都ではなくユーラシア方面だったはずですよ。なのに何故?」


「考えられるのは1つ、秘密裏に機体を何体か配置し、侵略活動を行っていたていうのが一番納得がいくと思うわ。でもその指示を出していたとみられるロシア残党の集団がいないってことは、その軍隊は敗退し滅んでしまったということになるわね。そしてつい最近何者かが残っていたミスチを改造して再利用できるように修理したのかしらね」


 なるほど。


 あのマダロイド、ミスチはジャンク品として埋もれていたものを誰かが、改造して再び動かしたということらしい。


 そういえばミスチは目についた殺人者を見つけ次第、殺しにかかるプログラムが仕込まれていたって教科書に書いてあったはず。


 かつてはその恐ろしさから殺人者の間では恐れられていた。


 主にユーラシアエリアでその目撃情報が多く見られていたが、旧東京都に出現があったという情報はどの本にも記述が一切ない。


 真意は不明だが、コイツが殺人者達を大量殺害していたのは間違いないだろう。


 私と草水智さんは、身構えて手に武器を持つ。


 草水智さんの武器は、短剣ナイフのXウェポンで植物のツルの柄がナイフに描かれている。


 なんか最近入ってくれたお嬢様が1人いるけど、植物や花って聞くとどうしても彼女を思い浮かべてしまう。


「どうかした? 興味深そうな顔なんかして」


「い、いえその植物柄のナイフなんか格好いいなあって」


「ああね、ありがとう。でも褒めても何ももらえないわよ」


 気にしすぎたせいか草水智さんの目に入ってしまった。仕方なくいいところアピールしてみたけど、さすが草水智さん。まさに大人の対応という感じだった。


 政希さんも少しは彼女のような大人びた対応をしてもらいたいんだけれども、……まあ元団体リーダーということもあってこういうのは慣れているのだろう。


「いい蒼衣? アイツはコンマ秒で方向転換してくるわ。注意して」


「そんな手強いマダロイドなんですか」


 過去の機体とはいえ、厄介な敵に絡まれたものだ。


「まあね、油断していると部位を1つ持っていかれるかもね」


「演技でもないこと言わないでくださいよ」


 コンマ秒で方向転換するってことは胴体が360度回転するとかかな。重々注意しながら攻撃しないと。


「でも私、速さは最大の武器なんです。()()()()()()()()()()()()


 礼名と恵美に負けたことは言わない、ここはそういうお約束。


「そうなの。新東京都の人って前々から強い人が多いって聞いていたけど実力はどうかしらね」


「なめない方がいいと思いますが」


 草水智さんはふと笑い。


「それじゃ見せてもらおうかしら。あなたのその強さを」


 するとその後に「大丈夫、後ろは任せておいて」と小さな声で言ってきた。心配は要らないということなのだろうけど、それほど戦い慣れしているのだろう。


 そして私は挨拶代わりにミスチの方に一瞬で距離を詰め、先制攻撃を仕掛ける。


 狙った箇所は足。胴体だけが回転するとなれば、回転箇所ではない場所を狙えばいい。


 それに足ならば1回でも切断してしまえば起き上がることは、まずできなくなるだろう。


 足目がけて横切るように斬る。


 だがしかし――――。


 瞬時にミスチは両足をもの凄い勢いで回転させ、足の向きを変えた。


「なにっ」


 そしてそのまま相手からの攻撃がからぶるように足を曲げて、胴体ごと倒す。私の放ったその攻撃は僅かながら行き届かずからぶってしまった。


 からぶり間もない私にミスチは体制を元に戻すと同時に私を蹴り飛ばした。


「ぐはっ」


 反動で後ろに飛ばされ、その場に倒れてしまう。


「蒼衣!」


 駆け寄ろうとする草水智さん。しかしミスチは機械音で草水智さんを察知すると、急接近して一気に彼女との距離を詰めると、手からは凶悪そうな電動斧を出して斬りかかった。


「させるものですか」


 だが草水智さんは瞬時に持っていたナイフを、ミスチの斧と合わせるように受け止め攻撃を防ぐ。


 でもこれじゃさっきみたいに。


「これでどうかしら」


 するとミスチの腕は徐々にへこんで行き、斧を持っていた腕が破壊される。


 ドォン。


 そして私を荒廃した建物の中へと草水智さんは連れて行く。


「草水智さんあれは?」


「私のXウェポン『グラスナイフ』は生物なら触れたものに異常などを引き起こさせる力があるわ。逆に無生物だと擬似的な強力な爆弾1個分の威力に相当する種爆弾を作って、その種を内側に忍ばせておいて爆発させる。今やったの正にそれよ。大きさは大体0.2mmの小さな種爆弾よ」


 忍ばせて攻撃するタイプの武器か。生命体なら状態異常を、無生物ならああやって小爆弾を無数に生成させて破壊することだってできるわけだ。


 でも爆弾1個なら穴が空くぐらいの威力はあるはずだ。……威力や範囲も自由に調整できるのかな。


 そうだ念のためこれも聞いておこう。


「1ついいですか」


 植物系の殺人者が全員こういう特徴持っているかは知らないけど。


「なに?」


 眉をひそめながら恐る恐る恥ずかしめに聞いてみた。


「その植物の種って“意思”とかあるんですか?」


 思い切って聞いた。


 すると草水智さんは「くすっ」と笑いながら答えてくれた。


「蒼衣、あなた変わっているわね。グラスナイフには、独立した意思なんてないわよ。……なんでそんなこと聞いたりしたの?」


「いいえ、あの私のいる組織には植物と意思を通わせる殺人者がいるんですけど……もしかしたら草水智さんも同じ植物のXウェポン使うから同じような能力なのかなあ……なんて」


「そうなのね、残念だけど植物のXウェポンを使う殺人者が必ずしもそういう力を持っているとは限らないわ。持っている人もいれば持ってない人もいるわよ」


 要は個人差があるってことなのか。


「あの種は武器そのものの意思で動いているんじゃなくて、“私が頭で思い描いた通りに動かしている”のよ。だから私がここでこう爆発させるって念じればその通りに決まった場所でイメージ通りにその種は動作をする。……ようするにラジコンみたいな感じよ。脳がラジコンのリモコンの役割を果たしているって言えば分かるかしら」


「あぁなるほど。……ふと思ったんですけど、遠距離系の武器って全部そんな感じなんですか」


「ものにもよるけど、大体はそんな感じね。銃だとライフルスコープが付いているものはそれができないけど、普通の銃のXウェポンやその他の遠隔系のXウェポンは大体そうやって操作するのよ」


「なんか規模が大きいように思います。遠距離系の武器って」 


 礼名は平然とバンバン自前の武器使って撃ってるけど、あれってそんなに難しいのか。


 そういえば学校の教科書に書いてあったな。銃のXウェポンは扱いが難しいから、普通に使えるようになるまで相当時間がかかるって。


 私は銃の操作法をちらっとしかみたことしかない。だからその扱いに関してはうろ覚えだったが……よく読んでおくべきだったと今更の後悔。この間恵美にもっと聞いておくべきだった。


「さてと話を戻して」


 草水智さんは話を戻す。


「質問タイムは終わりよ、敵が話している間に感づいてもう近くまできているわ」


 私はマダラースコープを起動させ、距離を測ったりする機能を使用する。透視でシルエットだが敵の陰がやや大きく見える。


 画面上には相手との距離が200mと表示されていた。


 そう草水智さんのいう通りもう近くまで接近していたのだ。


 先ほどの攻撃で腕を片方失っているが、それでも機械音を立てながら動くのを止めないミスチ。


「もうここまで近づいてきているなんて」


「……あのマダロイドはどうやら僅かだけど、敵がどこにいるか感知できる機能が搭載されているらしいわね。戦時中に使われていたミスチにはあんな力なかったけど」


「勝算はあるんですか」


 正直、手はなくはない。ストライクを頭部目がけて投げて頭を破壊するという方法が。


 これが上手くきまれば相手の視界をシャットアウトさせることができるのだが、避けられれば私の最大の攻撃手段はなくなったも同然となり、もう打つ手も一切なくなるのだ。


 加えて相手はすぐさま方向転換する強者。さてどうしたものか。


「その剣が今回のキーね。私でもあんなマダロイド1人じゃ倒しきれないわ」


 やっぱり剣に目がいくみたい。


「でも相当難しいですよ? あのマダロイドを倒すのは。……普通に考えたら無理そうですが」


「蒼衣、やる前から“諦める”って言葉はあまりよくないわよ。理由は簡単よ」


 すると草水智さんは人差し指を私と自分自身に向け「私とあなたがいるじゃない」と言った。


「今は私とあなた合わせて2人いる。その意味……あなたには分かるはずよ」


 多少の沈黙の中、草水智さんの言ったセリフの意味を私は瞬時に感じ取った。


 そうだ、力を合わせればいいんだ。……どうしてこんな簡単なことに気がつけなかったんだろう。


 政希さんは言っていた「俺達は決して1人で戦っている訳じゃない。常に皆と一緒に力を合わせて戦っている」って。


 私の脳裏に組織の皆の顔が浮かんだ。


 リビングに入ると皆が私の方を見て、呼んでくれるその素顔が。


「蒼衣」


「蒼衣さん」


「蒼衣遅かったじゃない」


「蒼衣さん、待っていましたよ」


 とその声も。


 人は決して常に1人で戦っている訳じゃないんだ。遠く離れていても信じて待ってくれている仲間がいる。


 なら最初から諦めるなんて言葉をここで口にするべきじゃない。


「“力を合わせる”ですね」


「そうよ、分かっているじゃない。それが分かればあなたは立派な殺人者よ」


 どうやら私が思っていることは正しかったらしい。


 ――後はどうやってこの難所を突破するかだ。

すみません遅くなりましたが、皆さんお久しぶりです。

なかなかここ最近書けていませんでしたが、今日ようやく最新のエピソードを出せて自分はほっと一息ついています。

この間もペース落とさず書くと言いつつも結局また間が空いてしまい申し訳ないと思っています。

ですが、無理しない程度でこれからも更新を続けたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。


では本題ですが。

このエピソードで分かることは蒼衣が人と人を信じ合う大切さに気付く話となっています。手を貸してくれるのは旧東京都で出会ったばかりの少し上のお姉さんである草智さんです。そんな出会ったばかりの2人はお互いに声を掛け合い、助け合いながら敵であるマダロイド、ミスチを倒しに行きます。次回ではその2人が協力関係を作り、ミスチの討伐に臨みます。


それではまた次回『難所の(てき)を突破せよ』お楽しみに。

果たして2人は無事にマダロイドを倒すことはできるのか。

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