表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第4章【都市部編】
109/139

【掴め 新たな力 後編】

 技術者長が持っていたそのXウェポンは、大型の青黒い色をベースとした大剣だった。


 刃先部分には発光している青いラインが描かれている。


 恐らく内部にXエナジーが流れ込んでおり、武器の能力向上を発動刺せる何かの担う機能かなにかなのだろう。


「これが新しいXウェポンなのですか」


「あぁ。でも大剣とはたまげたな。……一応作れたはいいが使いこなせるかどうかは君次第だ」


「それってどういう」


「調べてみたんだが、このXウェポンどうにもエネルギーが膨大でね、本来殺人者のXエナジー1割と人工的に作ったエネルギーを使用して1つのXウェポンを作る……つまり1:1の素材で武器ができあがる。しかしだ何故か作ったXウェポンは本来のエネルギー数十倍を持つ武器になったんだが……何故だろうね。下手に扱うとぶっ壊れる危険性や身体にも影響が及ぶかも知れないから要注意が必要だということだな」


「そういえば聞いたことあります。まれに膨大なエネルギーを持ったXウェポンができることがたまにあるって。沢山のエネルギーを持った人が一番なりやすいみたいですよ。……その反面人体に影響が及びやすいみたいですね。それ相応の性能はあるらしいですけど」


 正に諸刃の剣ということか。拙劣な扱いでもすれば最悪死ぬ危険性もあるのだろうか。


 しかし私のXエナジーは意外に多かったらしい。


 となると今までの戦いで私はあまり自分の力を、十分に発揮できていないということになる。美咲がもしここでいたら半ギレしそうなので、今日ここで聞いたことはここだけの話ということで黙っておくことにしよう。


「とりあえず渡しておくぞ。もし不調が発生するのであればこちらでメンテナンスしてもらうぞ。あと」


「あと?」


 技術長は浮かない顔で、注意を促すような様子でこちらに武器を渡しながら言ってくる。


「いいか。何事でも決してこれを使いながらバトルフォームを使うのはやめろ」


 その忠告一言だった。




 代金を支払い領収書を受け取って技術部を出た。


 技術長の連絡先を交換し、いつでも話を聞いてもらえるようにした。まあXウェポンの不調が一番心配だからここぞって時は連絡して聞いてみよう。


「それでテスト行わなくて良かったんですか? 私なら蒼衣さんにいつでも付き合ってあげますのに」


「いつでも練習できるしね、また今度ということで」


 正直な話、礼名相手では質が悪いということが本音であり、本人には言いづらい話である。それに彼女ならどんな攻撃にも動じない様な気がする。


 寧ろやられるのが目に見えているというか。


「まあ別に気に留めはしませんが、よかったですねようやく新しい力が手に入って」


「あはは、そうだね」


 褒めているか嫉妬しているのか分かんないけど。


 と私達が技術部の敷地を出て行く最中――――。


 ドゴーンッ!


 突如として爆音が建物から聞こえてきた。


 踵を返して建物側に視線を向けた。


「あれは!?」


 礼名が建物の上へと指を指した。


 その方向は技術部とは、反対側の部屋だという事が分かった。確かあそこは案内地図に『マダロイド製造室』とか書いてあった気がする。


 主にマダロイドを作っている場所だったはず。


 聞けば軍や組織などに支給されているマダロイドは、ここで生産されているらしいが。……中には世に出回っていない門外不出の機体もあるんだとか。


 とりあえず急いで行ってみよう。


「なんか嫌な予感がする。行ってみよう」


「……私も同意です、行きましょう」


 私達は走って製造室へと向かった。




 急いでその部屋へと入った。


 奥は黒煙が渦巻き、先はよく見えなくなっている。


 周りから警告のアナウンスが流れてくる。


『警告。警告。マダロイドに不調あり、持ち場に着いている係員は直ちに対処して下さい。繰り返します。マダロイドの不調あり、持ち場に着いている係員は…………』


 聞く限りマダロイドに何か問題があったらしい。


 私の周りには大勢の研究員がざわつきながら、現状どうなっているか調べ回っている人や話し合っている人がおり、大急ぎという感じで辺りの機械を手慣れた手つきで触りながら問題を調べている。


 その中には先ほどの技術長もいた。


 周りに蛮声を上げながら周りの人に声を掛けているので、彼女が中心となって指揮していると思われる。


 技術長は周りを細かく一瞥していると、途中私達と視線が合った。


 私達の存在にようやく気づいた彼女は、早歩きで深刻そうな顔でこちらへと向かってきた。


「来ていたのか」


「はい、礼名と私もあの煙が気になってそれできたのですが」


「……そうか。緊急事態だ。開発中のマダロイドが暴走して、今この部屋の奥で暴れているんだ。対処しようとガラスの壁を下ろして奴を閉じ込めたが時間の問題だ。どうにかしたいものだが何か手はないのだろうか」


 だからか。ガラスの壁が奥に下ろされているから、煙が中で舞っているということか。内部は隙間もなにもない部屋のため、今でも黒煙の部屋となっているということか。


 奥の部屋からは多少の物音が聞こえてくるが、その正体は恐らくマダロイドなのだろう。防音対策されているせいか音は目立たないくらいの大きさとなっている。


 これは私達がやるしかないのだろう。この状況は。


 礼名を見ると意見があったかのようにお互いに相槌を打った。


「私達が止めましょうか。見た感じ殺人者の1人も派遣されていないようですが」


「あぁここには生憎有能な力を持った殺人者はいない。……そうだななら頼まれてくれないか?」


 あっさり承諾してくれた。どうも私達以外に戦力となりそうな殺人者は本当にいないみたいだ。


「壊しても構わん無理に止めようとすれば、命を投げ出す行為になり兼ねないからな」


 と係員に声を呼びかける。


「おい、煙を吸い上げろ。内部が見えるようにし、この2人を中に入れ戦ってもらう」


「しかし……」


「いいからやれ。それ以外手はないのだ。なあにアレを壊してもまた作ればいい」


「……了解しました。煙吸い上げます!」


 係の人は機械のボタンを押すと、風の音が立ち、部屋内部の煙を吸い上げる音が聞こえた。徐々に中の煙はなくなっていき部屋内部が鮮明に見えてきた。


 その中からは、通常の人型のマダロイドより少し身長が高い中型の大きさをした、マダロイドの姿があった。


 テスト段階のためか全身黒いボディをしており、1つ目のつけた頭に、右手には銃、左手には大剣を携えている。


 機体は、闇雲に辺りを大剣で床と壁を斬りつけて攻撃している。 


「それじゃ頼んだぞ。あのマダロイド『ザンバル』は腹部に柔らかい箇所が1箇所ある。そこを狙えば破壊できるはずだ。だが高い火力の斬撃でないと破壊できない。銃にも耐性がついており普通の射撃じゃビクともしない」


 なんかとても面倒くさそうな機体だった。いくら礼名でも射撃が効かないとなると完封されたも当然だが、対抗策は彼女にあるのだろうか。


 心配そうに私は礼名を見つめる。


「大丈夫です、秘策はありますから」


 どうやら問題ないらしい。なら戦っても支障はないか。


「それじゃ行くよ」


 お互いに合図を出すと、私達は奥の部屋に入ることができる扉の前に立つと、その扉は自動的に開き、私達はその中へと入っていった。


「気をつけろよ」




 ようやくご対面。近づいてみると意外な大きさをしているということに驚いた。


「礼名それは?」


「えぇ。射撃が効かないのではとこれをと。美咲さんや蒼衣さんほどの長身をした剣ではないですが十分に戦えるはずです」


 礼名の両手には、初めて見る諸刃部分が高熱電流で発光している短剣が手に握られていた。……というか刃物系の武器あったんだ。


 前を見てザンバルの方へと目を向ける。


 機体と私達との距離は、だいたい数十秒走れば間合いを詰められる程度。部屋も十分な広さをしているのでさほど時間はかかる事はない。


「蒼衣さん来ます!」


 ザンバルは挨拶代わりに銃で私達目がけて撃ってくる。途端に回避したが、避けた箇所には中くらいの穴ができあがる。


 この火力からして一筋縄ではいかないということが分かる。食らえば即死だろう。


 私は八相の構えをしながら、相手の出方を伺う。


するとザンバルは私の方を躱した隙を突いて瞬時に私と距離を詰め、もう片方に持つ大剣を使い斬撃を仕掛けてくる。


 振り下ろされる剣に対して私は剣でその攻撃を受け止める。……だが体格差と重さの影響か圧力に押され気味になる。


 危険を察した私は引き下がった。


 なんという力だ。隙のない攻撃、そして俊敏な動き。思ったのだがあの機体相手の動きの先を読んで次の攻撃をしかけているような。


 精密プログラムかなにか搭載されているのだろうか。


 礼名は腕と違う箇所、足と腰部分を背後に回って攻撃する。しかしどの攻撃も弾かれるような音を立ててびくともしない。非常に硬い素材でできているのだろう。


 そして礼名の先の行動を予測したザンバルは、礼名との距離を詰め私と同様の行動を取り、再び大剣を礼名に向かって振り下ろした。


 礼名は攻撃を受け止めはせず、ザンバルの股の方へと滑り込みんで、そのまま短剣を突き立てて腰目掛けて引き摺りながら斬りつける。装甲と刃物がこすりあう音をさせて股の外へと滑り込む。


 上手いこれなら避けつつ、攻撃を仕掛けることができる。大きい図体を逆に利用して攻撃をしかけるとは礼名らしい策士な戦法だ。


「蒼衣さん、ザンバルの体を潜り抜けて見たのですが、多少手応えはありましたがそんなに高価なかった感じでした。かすり傷くらいのダメージってことですね。それと」


「? 何かきづいたの」


 どうやら攻撃の最中に何かに気づいたらしい。


「先ほど技術長が言ってましたよね。腹部の方に弱点があるって」


 確か柔らかい部分が腹部にあるといってたな。


「分かったんですよその場所が。……あの部分を見て下さい」


 礼名はザンバルの腰より少し上の方を指さす。……とそこに僅かながらバネのような可動パーツ部分が見えた。あそこだろうか。


 でも技術長によれば、高い攻撃力を持つ武器じゃないと切断するのは難しいとか。


「私があのマダロイドを引きつけます。その間に蒼衣さんは連続で一閃突きをしてください。多少は歯応えあると思います。もしそれでも駄目ならば新型のあのXウェポンを使って下さい。一か八かの賭けではありますが、試してみる価値はあると思います」


 連続攻撃で一度攻撃を試す。礼名が攻撃している間、相手は背を向ける、その瞬間バネ部分を狙って私に一気に切断してもらうという作戦なのだろう。


 だが使った試しのない武器をここで使うことになることになるとは、夢にも思わなかった。できればいざという時の奥の手として使おうと考えていたのだが。


 先ほどの攻撃からして、一閃突きを連続で繰り出したとしてもあまり意味のない攻撃だと思えた。


 何故なら装甲があまりにも硬すぎるからだ。……ならいっそのことやる手段はただ1つ。その武器を取り出して迎え撃つただそれだけだ。


「礼名アイツの装甲の硬さは尋常じゃない。だから新型の武器で一気に叩き斬ろうと思う。どの道その作戦だと長期戦にもなるしそれまで倒しきれるか怪しいところ。なら最初からこれ使って一気に切断しようと思うんだけどどうかな」


 と私は持っていたストライクをしまい、先ほど作って貰った大型の大剣を取り出す。結構な重量はあるが片手を底に置けば、重量はある程度カバーできるのでそんなに問題ない。


 礼名はため息を1つ零すと諦めがついたかのように答えた。


「……仕方ないですね。でも危険だと思ったらすぐ教えて下さいよ。何が起こるか分かりませんから。…………それじゃお願いしますよ蒼衣さん」


 そういうと礼名はザンバルの後ろへと立つ。そして挑発するように言葉をかける。


 大抵マダロイドは心というものはない。それを逆手に取った囮作戦である。そうすることで標的が一点に集中される。これによってザンバルには礼名しか見えなくなり他の生体に関しては見向きもされなくなる。


 群れで囲まれている場合は、この戦法は非効率的だがこういった1対1の場合や2対1の状況なら、効率のいい戦法になる。……戦いに関しては本当に、天才的な思考の持ち主だと思うよ礼名は。


「機械なんて結局は単なるデータの塊ですよね。ですからあなた達は人間みたいに判断力は私達より劣るんですよ」


 礼名は片目を瞑る。…………あれは合図だろう攻撃してもいいというサインだ。


 片手に握っていた短剣を1本礼名は投げた。そしてそれを投げた拍子に私はザンバルの方へと駆け出す。


 重い、重い。重量というものが私の動きを鈍くさせる。


 しかしその武器は私の想いに答えるように性能を発揮した。


「これは……」


 武器から溢れ出す燐光、その光は徐々に大剣から溢れ出した。それが今もの凄い速さとなって私と一緒に走っているということに気がついた。


 あっという間に距離を詰め、ザンバルの弱点箇所と見られる腹部目がけて私は斬撃を解き放った。嘗てない力を噴出するように。


「「私はッ! こっちだ!」」


 巨大な閃光は、そのマダロイドの腹部を一瞬にして切断した。










「いや助かったよ。君たちがいなかったら今頃どうなっていたが」


「……いえいえ。礼には及びませんよ」


「ですけど蒼衣さん、あの大剣壊れちゃいましたね」


「………………」


「まあそんな浮かない顔するな。まだ不十分ということは大方察しはついていたが、いざ使って壊れてしまうとはな」


「もうちょっと使ってみたかったのに」


 一応ザンバルの暴走を止め見事撃退はできたのだが、出力を出し過ぎたせいかその大剣は中破し壊れてしまった。


 全身がもう既に黒炭のような色になってしまい、落とすと粉々になりそうな有様になっていた。


 仕方なく暫くはその武器は技術長に預かって貰うことになり、長期のメンテナンスをさせて貰い完全な状態になるまで預かって貰うことになった。


 聞けばいつ再び使えるようになるのか分からないとか。


 悲しいけど、壊れちゃ仕方ないよね。


 後日そのお詫びとして無償でその代わりとなる武器が複数私に届くこととなった。こちらは完備されたXウェポンになるらしいから心配はいらないとのこと。


「それにしても良かったですね、代わりとなる武器をもらえて」


「なるべく早いうちに仕上げるつもりだ。きっと君の力になってくれるはずだ」


 どうやら数種類の武器を作ってくれるらしい。因みにだが素体となる武器と殺人者のエネルギーを併せるとその武器と同じ種の新たな武器が出来る。例えば殺人者のXエナジーと素体の弓ならその提供者専用の弓ができあがる。


 最初の方法よりこちらの方が確実に好みの武器ができあがる。けれども費用がそれなりに高く付くため貧乏人は普段あまりこの方法を使わないらしい。


 これは大きな報酬ではだろうか。これほどいい褒美をもらうのは生まれて初めてだ。……早くできないかな。


「それでは失礼します。また何かあれば連絡しますね」


 私達は一礼すると踵を返して、研究部の大通りを歩いて帰った。感謝の声で見送られながら。


 歩いていると、技術長の大きな声が聞こえてきた。


「ありがとうな!」


 私と礼名は口元を歪めて微笑んだ。




「災難な目に遭いましたね」


「本当にね、一時はどうなるかと思った」


「でも解決できてよかったじゃないですか。……全部蒼衣さんのお陰ですが」


「ううん、違うよ。礼名あなたのお陰だよ」


「そんな……私は対したことしていませんよ」


「……あなたがいたから私は勝つことができた。ありがとう」


 礼名は恥ずかしそうに俯いて顔を火照らせた。


「そ、そうですか。……本当ですか? ……ありがとうございます」


 夕日に照らされ、人一番赤く染まる礼名はとても可愛く見えた。


「そ、そんなことより早く帰りますよ。皆待ってます」


 少々早歩きする礼名。照れ隠しなのだろうか。


 彼女は所々恥ずかしがり屋な一面をみせるが、それも彼女の隠れた可愛い一面なのだろう。


 最初出会った頃と比べれば全然違う。こんな様子あの時は全く見せなかったのに。


「ま、待ってよ礼名。一緒に帰ろ」


 そういうと足を止め、私の方を笑みを浮かべながら振り返り。


「大丈夫ですよ、私は蒼衣さんを置いて帰ったりしませんから。」


――――これからもお願いしますよ。蒼衣さん。


「今何か言った?」


「いいえなんでもありませんよ」


 礼名は小さく小声でそう言った。

遅れてすみません。

文章に色々と戸惑って迷走していたら今日になってしまいました本当にすみません。

書いてて思ったのですが戦闘描写書くのなかなか困難で工夫がいると言うことがわかりました。あれこれどうやって文で表現すればいいんだろう? みたいな感じで。億劫だから早く終わらせようと書こうとすれば「あぁもう終わりか。後味わるいな」といった評価も受けてしまいますし、この書き方に関してはバランスが保つのが大変ですね。

今回は研究部と言われる場所で蒼衣と礼名が暴走したロボットを破壊して止めるような内容になっています。新しく作って貰った武器を使うものの引力に耐えきれずそのまま中破。どちらかというと相打ちといった感じです。

因みに設定では、この新しく出たXウェポンの名前は『ストライクブレイド』という名前になっています。

取り敢えず今回はこの武器はゲスト出演ということで追々出てくるか分かりませんが。(忘れた頃に出てくるかも)

それでは次回も頑張って書くので皆さんよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ