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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第4章【都市部編】
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【雨天の悪夢】

「それで――――」


 あれから普段通り生活を送っている。


 そして今日学校の特別登校日で今、学校へ来ているのだが。


「華崎美咲です。今日からこの学校に入ることになりましたよろしくお願いします」


「華崎さんは今まで体調不良で学校に行けませんでしたが、つい最近退院してようやく元気に回復されました。それでこの度私達の学校に転校する形で来られました。正式な学校生活は2学期後ですが、皆さん仲良くしてあげて下さいね」


 と転校の挨拶がホームルームで行われる。


 周りがざわつく中、辺りから話し声が所々聞こえてくる。


 そして隣から私の肩を誰かが優しく叩く。


「とても綺麗な、というか本当にあれで私達と同じ年齢っていうのが驚きじゃない。蒼衣ちゃんなんか彼女と面識ある?」


 声を掛けてきたのは親友である理奈。彼女も美咲の姿を見て驚いている模様。


 正直見た目と年齢が一致してないという解釈を持つのが妥当と言える気がするけど。


 今更だけどあの顔立ちのいい容姿は、一言で例えるならまるで詐欺のようなレベルである。


 周りが少々同年と理解できないことも納得がいく。


 取り敢えずあまり怪しまれないように私は、理奈に簡単な言葉で返す。


「ま、まあね」


 果たしてこれで誤魔化し切れているのだろうか。


「そうなんだ。なんかちょっと声かけ辛いけど、友達になりたい気はするんだけどな」


 口では言い出せないが、私と美咲は既に友だ。がそんな事を理奈に告げたらどうなるだろう。きっと多少嫉妬感を抱いたりする可能性もなくはないだろう。


「それでは華崎さんは……東城さんの前にある席へ座って下さい」


 私の前に丁度空席が1つ空いていた。美咲は先生に手で場所へ招かねながら向かい座った。


「……………………ふっ」


 途中私と視線が合った瞬間、美咲は鼻で笑った。


 単に馬鹿にしているとかそういうことではないだろう。これは美咲の悪癖だろうと思う。戦いを通じて知ったが、恐らくは癖。何にせよあれは正真正銘(くせ)だ。


 美咲の着席が済むと先生による話が行われた。


 大した話ではなかった。殺人者としての技量を高めよう的なことだったり、受けられそうなクエストはとことん受けようだとかその他諸々。


 話が終わるとすぐさま終礼に時間が回された。


 別れの挨拶が済むと、生徒達が一瞬で激しい物音を立てながら解散していく。


 最後教室に残ったのは、私と美咲そして理奈だった。


 そうあろうことか、旧友と新しい友が私の前へ同時に立っているのだ。


「やっと終わった。帰ろ」


 欠伸を1つ漏らす。


「のんびりだね」


「蒼衣って学校ではいつもこんな風なのね」


 私がその場を立つと2人が同時に声を掛けてくる。


 別に好きで欠伸しているんじゃないんだけど。


 と理奈と美咲がお互いに顔を合わせ話し始める。


「……黄美江さんだっけ? 蒼衣とは先日知り合ったのよ」


「そ、そうなんだ……。蒼衣ちゃんはいつもこうだよ。授業中とかよく窓の外見ているし」


「ちゃんと授業の話は聞いているよ」


 なんというか変な展開で話が進んでいるような気がしたので、私が止めに入る。


「まあつまらない話ずっと聞いていたって暇になるわよね。……分からなくもないけど」


「そ、そうだこれもなんかの縁だし、今日は一緒に帰らない?」


 理奈がリードして一緒に帰ろうと話を振る。


 私達はそれに賛成し、今日は一緒に帰ることにした。




















「それじゃ、また」


「今日はありがとうね、黄美江さん。色んな面白い話してくれてありがとうね」


「いや、いいよいいよ。私も華崎さんと沢山話せたから楽しかったよ」


 先ほどの恥ずかしい顔はどこへ? まあ今はこうして喜んでいることだから、親しい関係になれたと思う。


 仲がいいのはいいことだけれども、理奈の人懐っこい性格あれは私にはあまりない。


 だから是非とも自分にそれを授けて欲しいものだ。その明るい性格を。


 そう言うと理奈は家の方へと歩いていく。私の家とは遠ざかってしまった為、彼女とはここでお別れだ。


「あの娘とても明るいわね。だからすぐ仲良くなれちゃったわ」


「理奈は優しいから。私のクラスで一番明るいしね」


「でも誰かさんは学校では逆に寡黙だもんね。ねえ蒼衣?」


 私の方へ睨みつけながら、距離を詰めてくる美咲。……人の事言えないし、自分は理奈と比べて劣等感あることに関しては断じて否定できない。


「でもあなたの唯一1人の友達でしょ?」


「うん」


「あの輝きいつまでも守りたいわよね。そういつまでも」


 美咲は理奈に何か心を揺らされる何かがあると感じたのだろうか。でも本当は一番苦しんでいるのは理奈自身なのだ。……それを美咲はまだ知らない。


「さて帰りましょ。政希さんが待っているわ」


「うんじゃあいこうか」























 ――――――美咲が私の学校に転校してきた理由。それは。


 単純に私達と一緒に学校生活をやり直したいという、彼女自身からの切実なる思いだった。


 反ロシアに入隊していた経緯や、昔人を殺したそういうことは話し合いで隠すことにし、長年病院生活を送っていたということで誤魔化すことにしたのだ。


 先生達も過去の出来事はある程度隠してもらうことにし、美咲側に学校生活に支障が起こることはまずない。


「でもよく制服用意してもらえたね」


「瑛一に頼んで貰ったのよ」


「そういえば瑛一さん達に連絡はしたの? 組織に居候するってこと」


「言うもなにも、事前に伝えたわよ。しばらく厄介になってくるってね。ある程度の生活にひつような費用は払ってくれるみたいだから案ずることはないわ」


 もう華崎家を出たあの後美咲は言っていたのか。それに費用は全部払ってくれるって? ……華崎家って結局どれだけの財産持っているだと首を突っ込みたくなるんだが控えた方がいいだろう。


 取り敢えず、華崎家がとんでもない財力を持っていることは改め理解した。


「あなたの家ってやっぱり凄いよ。ある意味怖い」























 午後から急な雨が降っていた。


 予報ではそんなこと言ってなかった気がするが、予報が100パーセント当たるとは限らないし、変速的な天候だと捉えた方がいいだろう。


 他のメンバーはというとリビングには礼名と政希さんがいる。2人は退屈そうにテレビを眺めながら天気予報番組と睨めっこしている。


「雨凄いですよね……政希さん。予報では雨なんか降らないって言っていたのに」


「そうだな、まあ天気予報は当てにならないっていうしな。……にしても真夏にこの雨か。天変地異もいいところだぜ」


 2人は気象による違和感に不安を感じていた。


 組織による夕食は日ごと誰かが買い出しに行くと言うことになっている。


 日にちごとに当番が決まっている。


 大方だいぶメンバーも集まってきたのでそろそろ当番も決めていこうというリーダーから方針が立った。


 買い出し、炊事、洗濯その他諸々と。


 最初は意見が分かれもめ合いもあったが今はようやく冷めた。お陰でスムーズに仕事を行える。


 まあこの買い出しが厄介ものでとてもじゃないが、家と店との距離が遠すぎるという難点をこの役割は背負っている。


 だから最初嫌がるメンバーが続出したわけだが。


 因みに今日は私が食料の買い出しのため、大変な日になりそうな気がするが。


 街は大丈夫なのだろうか。


 人気(ひとけ)はあまりなさそうだが、それでもなにか不安だ。


 どうもさっきから胸騒ぎがする。


 傘を片手に靴を履き、出かけようとする。


「それでは買い出し行ってきますね」


「危険だからくれぐれも気をつけろよ」


「大丈夫ですよ、きっと大丈夫」


 2人に買い物に行ってくると私は一言告げると、ドアを開いて買い出しに向かった。


 だがこの時私は気づいてなかった。この雨の原因自体に。





























「うん?これは」


 買い物を済ませた帰り。


 ふと気がかりなことに気づく。


 傘を広げたその瞬間に。


 所々切り刻まれた亀裂。ついさっきまでそんなものは1箇所もなかったのに明らかに怪しい。


 すると誰かが、向こうで勢いよく走り去っていった所を見かけた。


 黒いローブを羽織り、深くフードを覆っていたため素顔は確認できなかった。


 だが無関係者という確証は何処にもない。


 ……追ってみるか。




 その人が走り去った方向を頼りに道を進む。1本筋の道な為途中別れた道は存在しない。湾曲となった道が途中あるぐらい。


 すると気がつくと街外れの通りに出た。


「ここは……」


 何もない通り。その道の長さは果てしないように続いている。


 普段私が通るような人が集る場所ではない。周りを見渡しても誰1人とていないのだ。


 だが空から降り注ぐ雨が甚だしい。それは豪雨より激しい雨水。


 それは復讐でも感じさせる、そんな憎悪に満ち溢れているかのような物だった。


 次第に降り注ぐ雨の音が激しさを増すように、耳に響いてきた。


 なんだろう。この悲しみ飢えてきそうな雨は。


 ザーザーッ。


 ザーザーッ。


 止めどなく雨は降り注ぐ。


「………………」


 自然と近くに生えていた植物の苗木から、溜まった雨水が滴った次の瞬間――――――


 一瞬、雨音が止んだように周りがミュートする。


「雨は好きかい…………?」


 目にも止まらない速さの水滴が私目がけて勢いよく飛んでくる。


 私はそこから、危険を察知し透かさず飛んで避ける。


 ザザザザザンッ!


 それも1つじゃない、銃で連射するように水滴がいくつも同時に飛んできたのだ。


「水……?」


「ほう、私の瞬殺攻撃を躱すとは」


「――ッ!」


 ストライクを取りだして、踵を返しながら切り裂く。


 すると刃と刃が、重なった音が響き渡る。


 そこに居たのは――――。


「1度のみならず2度も……同じ剣使いか」


 20代後半くらいの年端をした男だった。全身黒いローブを身にまとっているので恐らくさっき見かけた人に間違いないだろう。


「はッ!」


 力一杯押し出して、相手を引き下がらせた。


「なんて力だ。素早さだけでなく力もあるのか。……最近の殺人者は女でも力あるのか。どうだ私の雨は」


 雨。


 そうかこの人が大本か。


「あなたですか。この雨を降らしたのは?」


 すると男は、抵抗せず答える。


「如何にも。私こそこの雨を自由に操る殺人者。レインダル使い手時雨(しぐれ)


「悪いですけど、早く帰らせてもらえませんか」


「駄目だな」


「?」


「お前さんは私の今日の餌だからな!」


 再び私と間合いを詰めてくるフードを被っていた時雨。


 手で構えているのは、ストライクより一回り多大きそうな刀だ。


 敏捷性はそこまで早くはないが、力はとんでもなかった。


 瞬時にその攻撃を避け、返しの斬撃を腹部目がけて放つ。


 が――。


「悪くない攻撃だ。だが雨には通用しない」


 ゼリー状らしき物が彼を覆っておりそれは私の斬撃を受け、私をはじき飛ばしながら飛んだ。


 単に守るだけじゃないのか。あの物体は。


 飛散すると鉄砲玉みたいな勢いで飛ぶ。それに威力もそこそこある。


 体を見回すと、所々皮膚が裂け、出血していた。……不覚だ。


 もしかするとさっきの傘にあった亀裂は時雨の能力? ということは最初から私をここまでおびき寄せるためわざとここまで誘導したのか。


 私も1つ乗せられたということか。 


「意外とやるんですね。……その水の盾厄介ですね」


 破裂するだけで返ってこっちへダメージがくる。狙うべき箇所はどこだ。


「ならこれはどうだ。死ぬほどの恐怖を味わらさせてやる」


 すると降っている雨が一瞬静止する。


 ……まさか。


 時雨が手を振り下ろすと、高速で雨が私の方へと向かってくる。


 回転しながら全弾回避する。


「しぶとい奴め。……だが惜しかったな」


「なにを………………ッ!? ぐはッ」


 先ほど躱したはずの雨が1つ私の腹部へと突き刺さっていた。


 というのも急所的な箇所だ。これは致命傷だ。


 痛みに耐えきれず私は地面に倒れ込む。


「さてと」


 男は私の方へ近づいて来ると、私を頭ごと手で持ち上げる。


 痛い。頭が割れそう。もの凄い圧力で握っているため、力は凄まじい。


 これが殺人者の恨みなのだろうか。時雨がどんな人なのかは知らないが、こうやって誘導して無責任な人を倒しては殺す。倒しては殺し続けるとそういった大人殺人者はこの街に大勢いる。


 ……このままでは殺されてしまう。


 だがあの水の盾をどうやって。


 ……………………はじけ飛ぶ。…………反射。


 …………………………そうだ。一か八かだが。これなら。


 時雨を力一杯に蹴り飛ばす。今ある力の全てで。


 勢いよく端まで飛ぶ。…………これでいい。


「死に損ないめ、まあいいやれるもんならやってみればいい」


「……水の盾」


 男の体に不透明な液体が男を覆う。


 私はボロボロになりながらも、辛うじてストライクを片手に立つ。


「ストライク・スラッシュ」


 細長い光が現れ時雨目がけて飛んでいく。


「馬鹿め忘れたのか! そんな攻撃……」


 再び弾け飛んでいく水滴。今度当たれば死ぬだろう。


 でも――――――。


「何!?」


 その私の方へと飛んでくる水滴を私は全てストライクで打ち返した。


 水滴は時雨の方へと飛んでいき、諸に時雨はそれを受けた。


 水の盾を展開する暇もなく。


「危険な賭けだったけど、私の勝ちよ。…………まだ戦う気?」


 ボロボロになってもそれでもなお立つ時雨。だが先ほどみたいな水の盾は張れないだろう。


 あの水の盾はインターバルがある。それは体を覆うのに時間がかかること。それが欠点。覆う箇所が多ければ多いほど時間に遅延は伸びる。


 仮に今使ったとしても、相当な時間がかかるだろう。


「まだだ……まだ私は戦える! お前のような小娘なんぞに」


「なら勝負しましょうか……その水の盾を張るのが速いのか、私が今から放つ技が速いか」


「上等だ。なら」


「ストライク・ブレイク」


 巨大な光の斬撃が時雨を直撃した。それは間もない時差だった。


 男は一瞬で光に飲まれ、跡形もなく散った。


 舞い上がる黒煙は降り注ぐ雨によって徐々に消火されていく。


 煙が上がっていたところへと近づいてみるとそこには。


 ボロボロとなった彼のXウェポンがそこにあった。原型を原形をとどめずに。


「人の死ってあっさりね。本当納得いかないほどに」


 私はそのまま気の済むまでに雨に打たれた。  


 


 

こんばんは萌え神です。

雨の日って何か切なくなることありませんか? 雨を見ながら何か思いふけるたりしたり。

それで雨をテーマにした感じの話いいかなと思って書いてみたのですが。

前半は美咲が蒼衣達の学校に転校してきて、理奈と仲良くなるまでの会話パートでした。

彼女にまつわる話も追々と追加していきたいと思いますので気長に待って下さるとうれしいです。

一応今回から都市部編に移りますが未だどういう展開にしていくか検討中でございますが、応援の方よろしくお願いします。

それではまたお願いしますでは。

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