【両親の願い その1】
誤字や矛盾含むかも知れませんが、よろしくお願いします。
大方予想は付いていたけど、まさか再び入ることになるなんて思いもしなかった。
でもいつ入っても私達一般民にとって目が眩しくなるような品物が多すぎる。
「瑛一はこの先ね」
入ってすぐ目の前にある、大扉の部屋に足を運ぶ。
どうやら瑛一さんはここに居るらしい。
1人で一体何を? そんな人のプライベートを私が詮索しようとするのもなんだか可笑しいけれども、触れない方が無難だろう。
開くと大間のとても長くて、王族が使うようなテーブルが置かれている部屋に入った。最奥には暖炉があり、薪を焚く音を響きかせている。その暖炉の前に1人の年端の行っている男が背中を見せて誰かを待っていた。
「瑛一様連れてきましたよ」
その男が由美さんの言葉に反応してこちらの方を振り返った。次第に目を丸くさせると私達の方へと近づいてきた。そう瑛一さんだ。
「お嬢様、おかえりなさいませ。この瑛一……気長にあなた様をお待ちしておりました」
「苦労掛けたわね。大丈夫? 話したいことは山々なんだけど取りあえず今は寝かせてくれない? ……色んなことがあって今はちょっと休みたいのよ」
「そうでありますか。なら由美さん浴室の準備を」
「……ありがとう瑛一それと由美。なら私は沸くまで部屋で仮眠でもとっておくわ。お願いね。あぁ蒼衣暇ならあなたも手伝ったらどうかしら? どっちでもいいけどね」
なんか美咲、改心した途端に人の扱いが荒くなっている気がする。
それを言い残したまま美咲は部屋を出て行った。そしてロズは美咲の後を追いつけるように美咲を追いかけていった。恐らく彼女を自室に送るか何かしてるつもりなのだろう。もしくは見守りか何かでついて行ったか。
それはともかく。
「蒼衣さん」
開口一番に瑛一さんが私の名前を呼んできた。
「あ、はい」
気に障ることでも、してしまったのだろうか?
「お嬢様と随分親しげですね」
しわを寄せ鋭い目つきでこちらを見てくる。この状況はとてもやばい感じだ!
……果たして私は生きて帰られるのだろうか。
私の前に立って視線を落としてくる瑛一さん。……というか顔が近すぎる。
瑛一さんは両手を私に振り下ろしてくる。これはこ、攻撃? なのだろうか。
…………もう駄目だと思って私は目を瞑ったが。
ぽん。
肩に軽い何かが落ちるような感覚がした。いや正確にはものが私の肩に直接落ちてきた…………のではなく。肩に重りを感じたそれは――――明らかに瑛一さんの両手だったのだ。
私がゆっくりと目を開けると。
「ありがとうございます! 蒼衣さん」
「……はい?」
「いやいや怖がらせてしまい申し訳ありません。なんというか嬉しさのあまりに表情が力んでしまったというか」
「はあ……」
どうも当てが外れてしまったらしい。というか今さっきの私の緊張感をできれば返して貰いたいのだが…………やめよう。
私に恨みを買っているのではなく、それと反対に感謝の意を込めての言葉だった。
……とても焦った。体格からして非常に強そうだし、できれば敵に回したくない相手でもある。――それは横にいる人も例外ではない。
「その蒼衣さん、ありがとうございます。お嬢様が帰ってきてほんと一安心したので取り敢えず一段落ついたって感じです」
「そうなんですね」
ミディアムストレートをした長髪のメイド。優しいそうなで婉然とした笑顔が似合うその様は、どことなく理奈を彷彿させる。
昨日会った時は素顔をはっきりと捉えることができなかったけれど、こんなに可愛い人だとは思わなかった。
というか華崎邸に入ってからちょこちょこ他のメイドも見かけたけど、どの人も美人しかいなかった。
ここに関する女性への雇用条件って一体何だろう。美人だけしか入れないとかそんな感じなのだろうか。別に私はあまり興味はないのだけれども少しばかり気になる自分がいる。
「あの蒼衣さん大丈夫ですか?」
由美さんの言葉に我に返った。やばいこの人の美貌、認めたくはないけれど可愛すぎる。
…………なんだか私段々政希さんに似てきたような気がする。
「だ、大丈夫ですよ気にすることなんて1つも」
「それならよろしいのですが、随分とお疲れな気がして」
この人は内心も綺麗な人なのか。なんて優しい人だ。
そういえば由美さんって美咲から聞いたけど、年齢は美咲とそんなに変わらないんだよね。確か2つ上だった気がする。
一般家庭だとこの人は美咲のお姉さんみたいな感か。…………認めたくはないけど美咲が羨ましい。
「それより由美さんお風呂の準備いいんですか?」
「先ほど他のメイド達にそうするよう指示を出しました。私は基本的に指示する側で、家事全般は全てできるメイド長なんですよ。主にお嬢様のお世話がメインですね」
いつの間に。さっき普通に会話していて動作もなにもしていなかったように見えたが、いつ俊敏な早さでメイドさん達に連絡したのだろうか。ひょっとすると由美さんって私のストライクより早いのでは?
「蒼衣さん、ずっと立っているのもあれですから、こちらに腰を掛けて下さい」
瑛一さんがテーブルにある椅子を1つ引っ張って座るよう言ってくれた。とてもありがたいんだけど、見るからに王族の椅子なんて恐ろしくて座れないのだが。
もし壊してしまったらどうしよう。
「いえいえ、大丈夫ですよ! これくらいどうってことないですから」
「遠慮しなくてもいいですよ蒼衣さん。美咲お嬢様の大切なご友人ですので!」
由美さんは満遍のない笑顔を私に放ってくる。……そんな笑顔に私は逆らえることもなく、気がついた時には私の体は椅子に腰掛けていた。
すると気前がいいことか私が座ってすぐあとにとても高そうな紅茶を持ってきてくれた。ますます富者から出されるものに恐れを感じる。
2人が腰掛けると再び瑛一さんが口を開いた。
「どうですか? 蒼衣さん、お話でもしませんか。浴場は大体溜まり終わる1時間くらいかかりますよ」
そんなにかかるのか。……って浴場あるなんて驚きだ。
「美咲お嬢様もその頃に起こしに……ってロズがいましたね。あの子がその時間帯になったら、美咲お嬢様を起こしてこちらに来るはずですよ」
あのマダロイドどれだけ賢いんだろう。うちにも1台でもいいから欲しい。
「それでどうしますか蒼衣さん」
むむ。これは素直に諦めるべきだろう。これはちょっとした時間潰しということで。
「わかりましたよ。話しますよ…………取り敢えず私達の身に起きたことを」
2人は津々とした眼差しで私の方を見つめてきた。……少し恥ずかしいけど。
私は話した。イグラーンとの死闘を。そして美咲にとって唯一の支えにあった綾さんが、庇って命を落としたことを。
「なるほど、私が去った後にそんな事が……」
由美さん口を開く。
「お嬢様……」
「気を悪くさせたらすみません。……ですがあの時お互いに生き抜く為に必死だったんです」
「いえいえ問題ないです。お嬢様が過酷な運命を乗り越えたのだと思うと、つい涙が……」
「……瑛一さん泣いてはいけませんよ。……その綾さんの死は美咲お嬢様にとって非常に心に傷だと思います」
浮かない顔をした由美さんが語りかける。それはどこか寂しげで何もできなかった自分を悔やんでいるような様子を見せた。
「ですが、綾さんは、最期に美咲お嬢様に遺言として生きる希望となる言葉を残して、息を引き取ったということですね」
「深刻な顔しないでください」
「私からは……なんとも。ただ私から一言申し上げますと、美咲様から大切なものを2度も奪った反ロシアが許しがたいです」
1度は両親の命を奪い、2度は美咲の最愛の共となる綾さんの命を奪ったこと、そのことに怒りを露わとしているのだろう。
私達がそう会話していると、部屋の出口の扉が開いて美咲が出てくる。どうやらお風呂の準備が整ったのだろう。
中に入るとそれに続いてロズも中へと入ってくる。
「皆どうしたの? なんか集まって」
「……美咲、あなたも一緒にちょっと話さない?」
先ほどの皆さんはさっきぶりです。2つ1日で書いてみましたがどうでしたでしょうか?
といっても投稿日が日付が変わっていますが。3人の話し合いを色々と組んでみましたが、楽しんでもらえたのなら嬉しいです。今回は美咲は疲弊仕切っていたが為に帰って早々寝込むという処理を受けていますが。
次はちゃんと美咲も話に参加するのでご安心を(ハブられてはいないはず)
それでは皆さん次回また会いましょう。
なるべく木曜に上げられるよう頑張ります(汗)