【託されし思い】
【新しい種】のちょっと後の話です。
2815/4/18_
「ですって……政希さん? 聞いています?」
ふと意識が戻る。
あまりにも通話の時間が長かったもので、少し俺は意識を失っていた。
現在俺は、家にいる。だが家には俺以外誰もいない。俺の目の前には、電子画面で表示されたモニターが映っている。 見えるのは、白髪団子ヘアのツインテールをした、9歳の幼女がいる。
この電子モニターは、マダラースコープのビデオ通話によって映し出されている映像だ。…………で誰と話しているかというと、とあるロシア人とお話中である。
彼女の名は ヴェナルド・スヴェート。 ロシアの現首相に当たる人だ。
1年前に、前のロシアの総理が何者かによって殺害され、その総理の跡継ぎとして、娘のヴェナルド・スヴェートさんことヴェナさんが後を継ぎ、現在のロシアの総理をしている。
当初では、幼い子供は総理大臣にすることは固く禁じられてはいたが、他に十分に国をまとめる人物はいなかったため、止むを得ず次期総理を娘に決めたようだ。
当時の俺は、それを聞いてとても驚いたが、今からすればもう疾うの昔の話。
彼女は、ロシアの国を国一丸で治めつつ、そしてこの俺、天堂 政希のお世話役及びサポート役のじんぶつである。
ロシアとは、2年前の戦いで同盟を結び、今では、ロシアと日本は友好条約の関係に当たる。
もっとも、以前のロシアは1度滅びた国であったため、かつては、ロシア残党と呼ばれていた。
日本との条約を結んだことにより、日本の協力を得て再びロシアを復活させることに成功したのだ。
が、全ての町を取り戻したのでは無く、サンクトペテルブルクのみ。他の半数の地区などは他の国の者が占領していたり、ロシアに反発する反ロシアが1部の領土を奪っている。
ロシアは、反ロシアといずれかは和解し、“ロシア”という1つの元の国へと戻すのが最終目標らしいが、未だに反ロシアとできていない。
話を戻そう。今俺はどんな状況かというと、ヴェナさんに怒られている状況だ。
俺の建てた組織“ノヴァスター・オペレーションズ”は今のところ、入ってきた人はいない。
通常組織のメンバーが集まらない組織は1週間の内に、組織全てを管理している機関から潰されてしまうのだが、ヴェナさんが機関に話をつけてくれたお陰で、ギリギリ潰されるのを免れているって感じだ。
よって、潰されるのは当分先の話なんだが、ヴェナさんは、毎回毎回機関に話を付け、延長延長と、何度も何度も話をつけてくれているみたいだが、とうとうその話の有効期限が近づいてきたらしく、機関から「次はもう妥協できませんよ? それがいくらロシアの総理のお願いでも」と言われたらしい。
それで早く組織のメンバー集めやれやれって五月蠅く、最近何回も何回も、電話してくるんだが、今日もこうして五月蠅く叱られているっていう状況だ。
それでさっき話が長くなりすぎて、少し意識が飛んでいたってところだ。
「聞いていましたよヴェナさん? で何の話でしたっけ?」
「政希さん? 結局聞いてないじゃないですか……私の話」
少し笑いながら、暗いヴェナさんの表情を俺は感じ取った。
「だってヴェナさんの説教話長いじゃないですか?」
ヴェナさんは少しため息をつき、額に手を当てた。
「ま~~さ~~き~~さ~~ん~~!?」
「これで何回目ですか? 私言ってますよね? 早く組織のメンバー集めないと本当に潰れてしまうって…………少しは自覚を持ってくださいよ」
腕を組みながら眉をひそめながらヴェナさんは言った。
「すみません、なるべく早く集めます」
「“なるべく”じゃなくってこれは必ずです…………さもないと…………」
ふと嫌なビジョンが浮かんだ。俺の組織に誰も入ってくれず、組織が潰れゆく未来のビジョンを…………。
「政希さん、これは政希さんのためでもあるんですよ? この大きな1歩は貴方にとって、とても大きな1歩になり希望となるんです………… ここ逃したら後がないですよ?」
「…………」
黙り込んでしまった。 だがくよくよしていたら、本当にヴェナさんの言う通り後がなくなってしまう。。そうならないためにも俺は――――――。
「分かりましたよヴェナさん…………俺頑張ってみますよ………… この俺の思いを胸に秘めて…………」
するとヴェナさんは鼻で笑い――――――。
「期待してますよ政希さん……それでこそ政希さんです」
「あ、言い忘れてました……」
……?なんだまたなんか説教か?
「十文字総理が政希さんに来るように言っていましたよ?」
「あ……そうですか……それでは今日中にでも行ってみます」
「そうですか……なら私はこれで…… これからまた私は会議があるので……それでは……」
ピッ…………通信が途絶えた。
十文字総理という人は、名の通りここ日本の現首相だ。
総理は俺を呼んでいるらしいので、俺は総理のいるXタワーの内部にある総理の部屋へと向かうことにした。