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ラジオ同盟  作者: Roppu
2/2

キエナイウタ

夕暮れが迫り、全天オーロラが街を覆う頃、私は電気街口の改札を出た。


磁気嵐対策の非電化が進む帝都周回路線。フライホイール駆動のノイズにもなれてしまった。


加速教育のおかげで、私の高校生活も一年で終わる。早希山226。それが私の名前だ。


(今日も激混みね)

目当ては駅前広場を覆い尽くす、ストリートミュージシャン達だ。荷電粒子がネットもバッテリーも爆発物に変えてしまったこの世界。音楽は「なまもの」に還った。


プロもアマチュアもこの街頭に立つ。


最近増え始めたのは機械駆動のレコードプレーヤーだ。洋服ダンスのような共鳴胴を持ち込んで、前世紀の名盤を奏でる猛者も増えてきた。


とその時。


雑踏に混じって、いつもの声が響いてきた。


(ケルトの言霊)


他の常連たちと共に、「彼女」の方に歩いていく。


太古から伝わる異国の調べ。年齢不詳の深いボーカルソロに私は目を閉じ、向かいの柱に腰を落とす。


歌と語りの中間のような発声に身をまかせ、私は時を過ごした。


。。。。


ふと我に帰ると、曲は終わっていた。

無造作に置かれたノートに、拍手の代わりの暗号数列を書き留める。ほんの少額なのだけれど。


微笑を浮かべる歌い手は、二十代なかばに見える。この電気街に数人いる、ナゾラエの歌い手。


過去に聞いた音を正確に再現する彼女たちは、あの宇宙災害の中、力尽きた歌い手たちの調べを、まるで街の記憶のように奏でる。


次の曲を歌い始めた彼女。全く違う声色。


軽く会釈して、その場を離れた私の視界に、いつもの顔が映る。


厭世観たっぷりの表情に、めんどくさそうな歩きっぷり。


「水木くん。ちゃんと学校行ってる?」


答えず、

「そっちこそ、探し物は見つかったのか?」

私は少し笑った。

「とっくにね」


私は先ほど聞いた妹の歌声を思い出しながら、全天オーロラを見上げる。


少しずつ未来を取り戻す。それが僕らのミッションだった。


第二話 了

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