異国のうさ耳
弟恋愛編スタート。
時間軸は筋肉祭りよりも前。
俺はやりきった。筋肉の塊となったのだ!!
しかし、最近悩みがある。
モテルようになったはいいが、姉さんみたいな地味系の女の子しか寄ってこないのだ。
それもそのはず、あの地味系たちが、日本でいうギャルに分類されているからだ。
姉さんの口癖、この世界の美的感覚は間違っている、はあながち間違っていない。俺も可笑しくなっちまいそうだった。
けれど、この世界は俺にとって天国と言えた。なぜなら、男に顔の美醜は全く考慮されないのだ。俺のような地味顔の男でも、筋肉さえあればモテてしまう、そんな世界なのだ。だから俺は必死になってトレーニングを重ねた。筋肉がつけばつくだけモテる―――そう信じて。
その願いは叶ったが、おっぱいの大きい女が寄ってこないのである。これは困った。貧乳至上主義とは変わった世界だ。まぁ、それが助かるが。
そんな時、俺は運命の出会いをした。
うさ耳巨乳に、出会ったのである。
この国は基本的に犬耳っ娘ばかり。それもまたヨシと思っていたが、格が違った。
その少女は、特別に他国から来ている騎士志望の女の子で、きゅっと引き締まったウエスト、ボンと出た見事なおっぱいは眼福と言うにふさわしい。スカートだから分からないが、きっとお尻もきゅっとしているんだろう。騎士見習いだからか、体の均整が整っている気がする。
俺と目が合ったそのおっぱ……うさ耳っこは、ハッとした後、プイっと顔を逸らした。
おお……蔑んだ目を向けられない。日本だと、ああいう系の女の子は、俺を虫のように見るのに。
モテるようになっている俺は、積極的に声をかける事にした。
「君、名前は?」
「はぁ?な、なんなの、よ。あんた」
「俺は坂巻幸樹、知らないか?坂巻百合の弟なのだが」
「あっ……う、し、知ってるわよ!じょ、常識でしょう!私なんかになんの用、って意味よ!」
ワタワタしつつ、強気の言葉を返してくるうさ耳っこ。なんだろう、ツンデレの気配がするぞ……!やばい、凄い好みかもしれない!
俺の印象もそんなに悪くないと思い、さらに言葉を続ける。
「なんかに……なんて言っちゃいけない。君みたいな素敵な女の子、なかなか見ないよ」
「ばっ……かじゃ、ないのっ!」
真っ赤になったうさ耳っこに、バチンと頬を打たれた。中々に効いたが、筋肉を痛めつけた時に比べると屁でもない。
俺は叩かれた頬を軽く撫で、こう呟く。
「ふん、男前になったかな?」
「な、ななな、なんなのよ、あんた!ばかにしないで!」
そう言って、うさ耳っこは怒ってプイッと立ち去ってしまった。
何か怒られるような事を言ってしまっただろうか。女の子と親しくした事のない俺では良く分からない。褒めたのになぁ。
「今のはいけないな……」
「イリアスさん、どうしてです?」
丁度ひょっこり現れたイリアスさんの言葉に、首を傾げる。
「モテた事がない女の子に向かって、素敵な女の子、なんて言葉、馬鹿にしているようにしか聞こえないだろ?まぁ、迷い人のコウキには分からないかもしれないけどさ」
「うーん、そういうものなのか」
確かに日本にいて、姉に向かってエリオットのような超絶キラキライケメンがいきなり「貴方はなんて素敵な女性なんだ」って言われたら、何かの冗談か、詐欺の類を考えるだろう……この世界の美的感覚はトチ狂ってんな。
「あの子はメルリット国の留学生だね。名前はアイリスだったかな」
「へぇ、流石に良く知っていますね」
「一応機動騎士の副団長だからなぁ……」
「ほうほう」
機動騎士ってのは情報と避難誘導をメインとする、モテない男が目指すべき頂点と言える騎士だ。この世界、筋肉がついてなんぼな所があるからな。筋肉がでかいと移動速度が落ちる所がある。筋肉は重いからなぁ、無駄な筋肉出ないとはいえ、やはりでかいとその分重い。
だからでかい筋肉がつかない、速度の出るしなやかな筋肉が必要となるのが機動騎士なのだ。だが、モテない。派手な筋肉でないとモテない。だが一応騎士という華のある仕事だから、普通の仕事をしているより筋肉もつくしモテる。モテない男の憧れの職業と言えるだろう。
その点で言うと、姉の恋人エリオットは相当モテない。体はぺらいし、髪もつやさらだし、顔もなよっとしてる。日本ではクソほどモテるが、この世界では最下位層と言える。
姉にとって最高の環境だよな、一番かっこいいやつがモテなくて売れ残ってたんだから。くそ、羨まし過ぎる……!
「騎士目指してるみたいなんだよね、あの子。だからますますモテないんだけど」
「……ハッ」
そこで俺は最高の事に気づく。今の状況って姉と同じじゃね?と。
この世界で小さいおっぱいの地味女がモテる。そう、姉のような地味で平凡な女が庇護欲をくすぐるみたいだ。おっぱいが大きいとビッチにみえるらしい、意味が分からない。けれど揉みしだきたくなるので、その気持ちは分からないでもない。
さらに、女に必要なのはか弱さだ。イリアスさんの情報では騎士を目指しているという。勿論騎士になっている女性も何人かいるが、ほぼ結婚出来ていない。
つまり……つまり!あのおっぱいうさ耳美少女は将来結婚できる可能性が極めて低いモテ度最底辺の女だというのだ!
だが、俺にとってはうさ耳、巨乳、美人、体も運動していて引き締まっている、という最強とも言えるコンボに見える。なんであれがモテないのか、この世界の男の目は完全に腐っていると思う。
日本だったら、絶対に相手にされないような美女である。これは、ぜひとも攻略したいと思う俺は男として間違ってないと思うんだ、うん。
向こうから見たら、俺はムキムキでモッテモテなんだから、押せばいける可能性が微レ存!
日本だったらストーカー認定うけそうだけど、この世界ならきっとイケるはずだ。うん。
という訳で俺のアタックの日々が始まるのである。
「アイリスさん、俺とお茶でも」
「ばっかじゃない!?」
「ほらここに埃が」
「っ!触らないでよ!」
「ねぇ暇?ちょっとだけ話を」
「……!もう!なんなの!」
話しかける度に罵倒される日々に若干の快感を得ている。俺は間違いなく道を踏み外している気がしなくもない。だが後悔なぞせん!
姉さんは相変わらずイケメンといちゃいちゃしてるし羨ましさがマッハなのである。俺もアイリスちゃんとにゃんにゃんしたい。うさぎだけど。
うさぎって年中発情期なんじゃねーのかよっ!なにこれ詐欺じゃん!もうちょっとデレが欲しいんだけど流石に!!
もしかしてアイリスちゃんにとって俺って好みのタイプじゃないのかも……?う、なんか不安になってきた。日本でもイケメンが調子乗る事あったし、もしかしたら自信の溢れたイケメンは嫌いなのかもしれない。
だとしたら俺はファーストコンタクトを間違ってしまった!
ぐぬぬ、どうしたら……。
頭を悩ませつつ、それでも日課となっているアイリスちゃんがいる所まで足を進める。
すると、きゃっきゃと可愛らしい女の子の話し声が聞こえてきた。
別に聞くつもりもなかったのだが、内容が内容だけに聞き捨てならなかった。
「ねぇあのメルリット国の留学生調子乗ってない?」
「ああ、アイリスとかいう」
「そうそう、コウキ様に話しかけられて超調子のってんの」
「マジ?」
「あんた知らなかったの?」
「今城中で噂んなってるのに」
「やだー!コウキ様!あんな女どこがいいの!」
「でもああいう女性でも分け隔てなく接するコウキ様ってやはり素敵ですわよね」
「そうそう……そういう優しい所に付入ってて、やなかんじよ」
……うわぁ、あるんだ。こういう事って。
なんか凄くモテ男になった気分……!いや、実際にモッテモテになってるんだが。
モテない女がイケメンに話しかけると、僻む女が出て来るってマジだったんだ。
嫌がらせとか受けたりしてるんだろうか、こっそり見ておくか……?あ、それともイリアスさんなら把握しているかも。ちょっと聞いて来よう。