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なんということでしょう

 私には弟がいた。

 こっちの世界が幸せすぎてすっかりさっぱり忘れ去っていたが、日本に弟を置いてきていたのだ。

 貯蓄は結構あったし、高校卒業くらいまでなら暮らせるだろうと考えていたし、あまり考えすぎてもどうにも出来ないモノではあった。どうせ考えても帰れるわけじゃない。って、だから別に本気で忘れていた訳ではない。頭のどこかにはちゃんと残っていたさ!うん、うん。……ご、ごめんね幸樹。

 幸樹の目が完全にイッていたので、周りの騎士達に取り押さえられている。弟は今にも暴れ出しそうだ。息も荒くて超怖い。

 エリオットは弟から守るように私を後ろに隠す。


「知り合いですか、ユリ」

「うん、知り合いっていうか、私の弟だよっ!」


 ざわり


 ユリ様の弟君?そんな馬鹿な、この狂ったヤツがか。似ていないな、とてもではないが見ていられない。同じ異界の君だから同情しているのではないか?ユリ様はお優しいから。

 とかなんとか言って動揺が広がっている。

 動揺したせいで抑え込む力が緩んだのだろう。


 幸樹が飛び出した!


 エリオットがさっと私を抱え上げて、幸樹から距離をとる。


「いや、いやいやいや!弟だから!大丈夫だからエリオット!おろして!」

「ですが……」

「大丈夫だからっ!」


 ぱしぱしエリオットの胸を叩いておろして貰う。


「幸樹!無事だったんだね!」

「ねぇ、じゃん……!」


 色々なものでぐっちゃぐちゃになった弟を抱きしめる。弟も私の存在を確かめるようにしっかりと私を抱き留めた。姉と弟の感動の再会なんだけど、騎士達が弟に剣とか色々つきつけたまま微動だにしていないのがすごく怖い。


「ちょっと!幸樹に剣とか向けないでよっ!怪我したらどうすんの!」


 キッと睨みつけると、護衛の騎士達が動揺しまくる。余程幸樹を危険人物とみなしてしまっているらしい。確かに今の幸樹は超危険人物だろう。私でも引いたもん。ドン引きだったからね、うん。

 きっと私の知らない所で色々あったんだろう。辛い事や苦しい事、悲しい事もすべて1人で乗り切っていたんだろう。うう……私がエリオットと幸せな日々を過ごしている間、弟をほったらかしでいちゃこらしてたかと思ったら申し訳ない……。




 しばらくしたら幸樹も落ち着いて、洗われて着替えさせられた。そして私はこの世界が異世界である事を伝えた。


「まじでか……確かに手触りは迫真に迫ってたな」

「うん、てか触ったんだ。誰の触ったの、いや、いいや。聞きたくないけど。でも安心して、私がいるからね!生活は向こうより安定してるし!」

「まじ姉ちゃん頼りになる!」


 涙目で抱き付いてくる弟をぎゅっとしてなでなでする。よしよし、今まで出来なかった事をやってやるぞ。ごめんね、幸樹。今まで忘れてて。ちょっと幸せすぎて……。……騎士達にめちゃくちゃ殺意向けられて警戒されてた理由って耳とか色々触ったせいじゃないかと、ちょっと思ったけど、考えないようにしよう。


 バキンッ


 はっと顔を上げると、エリオットが笑みを浮かべていた。


「失礼しました……ちょっっっとうっかり落としてしまったようです」


 どうやらティーカップを落としてしまったようだ。エリオットってばうっかりさんだなぁ。

 割れたカップをメイドに片づけさせる。その際、エリオットは用事があるため離席した。

 すると、今まで触れてこなかった話題に弟が突っ込む。


「……さっきの超絶キラキラいけめんが姉ちゃんの彼氏か。やるな」

「ふっ……私も夢のようよ」


 しかし、幸樹にエリオットを見られるのは恥ずかしいね!めっちゃ顔で選んだと思われるじゃん……。そりゃまぁ、顔も好きだけど、性格も可愛いからなんだよ。


「じゃあ俺もモテるのかな」

「いんや」


 私は首を振って全力で否定した。

 男と女じゃモテの基準が違うのだ。

 女だと私のような平凡女がモテるが、男だとムッキムキの筋肉マッスルしてる人がモテる。

 その事実に幸樹は絶望していた。なぜなら幸樹はひょろいからだ。私より断然頭の方が良かったからね。なんとゆーか、ガリ勉タイプというか。まぁ、頭の作りが違うのだ、私とはね!

 私の言葉を聞いた幸樹がショックを受けている。


「なんで……姉ちゃんだけずるいじゃないか!」

「いや。んな事言われても」


 言われても困るんだけど。私も凄く困ったし。筋肉だるまに迫られて涙目になってたことは、今になっては懐かしい。

 ふと、弟の視線がとあるところに止まる。

 私の斜め後ろ……つまるところ、フレアさんの方をみているのだ。そしてそのたわわに実るおっぱ……。


「どこを見てるのかな、我が弟よ」


 フレアさんはケモ耳メイドで髪は亜麻色。尻尾も同色でとてつもなく萌える。そして大きな声では言えないが、おっぱいがとても……大きいのです。


「おっぱいだ(きりっ」

「殴るぞ」


 私のフレアさんにいやらしい目をむけるなんて!確かに可愛くて柔らかくて良い匂いでもふもふだけどさ!変な事したら許さない!

 フレアさんに目を向けると、まるで虫をみるような目で幸樹を見ていた。やっっっべ……フレアさんのあんなブリザードアイ見た事ないんだけど……!?


「嫌がっているからやめれ」

「なるほど、分かった。彼氏はいるんですか?」


 おい全然分かってないじゃないか!グイグイいくな、おい。君、そんなキャラだった?いや、否だ。私がいない間に彼に何があったんだきっと。ごめんね姉ちゃん弟忘れて幸せになっててごめんね!


「死ね」


 憎しみを込めたしねだった。めっちゃ心篭ってたな。

 それを受けた弟の顔を見る。何故か恍惚としていた。


「あれ、なんか気持ちいい。俺もうだめなのかな」

「うん、多分もうダメだよ、うん」

「でもどうせならハーレムしたいんだけど」

「そんな事言われても……」


 うーん、あ、でもそうか。

 ポンと手を叩いて提案する。


「マッチョになればいいじゃない」






 その半年後、弟は黒光りした何かになった。

弟は見事な変貌を遂げました。

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