猿の襲撃
研究室のみんなが心配していた。探しに行こうと言い出す人も出てきた。
俺も心配していたのだが、こればっかりは警察とか専門の人に頑張ってもらわないべきだとみんなに言った。それにミイラ取りがミイラになんて言うこともある。
そんな俺の言い分なんて聞きもせず、仲間はもしものためにオカルトセンサーが必要だなんて言って俺を無理矢理車に乗せた。センサー扱いは酷いぞと俺は不平を漏らすも抵抗虚しく車は出発。別の物を漏らそうと思ったが、やめておく。そんなことしたら友達が減ってしまうことは理解している。落ち着いてから車内を見ると総勢5人。メンツを見てさらに気が重くなる。
一時間のドライブの後に俺のセンサーが反応。そして、着いたのは鬱蒼とした木々に囲まれた山の中にあるトンネル。ここは、近くに大きな道路が出来たことによって最近ではあまり使われなくなったらしい。そのトンネルに車を降りて入ったのが数分前。
ぼんやりとトンネル内を照らす電燈。その下で俺達3人は壁を背にして、珍妙な奴らに囲まれている。あれ?俺達、2人くらい減ってる。
「おれたち、あたまわるい。だから、にんげん、くう。」
やっぱり人間じゃないのか。道理でさっきから俺のオカルトセンサーもとい、蕁麻疹がヒドイわけだ。あれ?トンネルのむこうで車の音が聞こえる。
そして、他の奴が続けて言う。
「にんげん、うらやましい。」
なんでこんなのに囲まれなきゃならないんだ。車の音も少しずつ遠くなっていく。
「あったかい、いえ。」
周りにいる奴らが次々に言葉をつなげる。それにしても、こいつら何者なんだ?
「うまい、たべもの。」
真っ赤な顔に、黒っぽい服装…って服じゃない、毛だ。
「おもしろい、おもちゃ。」
顔もよく見ると、人間じゃない猿だ。
「ほかにも、たくさん。」
体も、普通の猿に比べて大きい。人間と同じくらい大きい。怖い、そして痒い。
「ぜんぶ、にんげん、つくった。」
早くここから逃げたい。でも、無理そうだ。
「おれたち、やま、にんげんに、とられた。」
なぜなら、車に乗せてきた仲間が逃げてしまったから。来た時は5人いたのに、2人逃げ出した。もう、無理だ。
「でも、しかたない。」
あいつらを友達なんて呼びたくない。俺達を見捨てたんだから。あぁこうなるなら漏らしてでもやめさせればよかった。
「おれたち、あたまよくない。」
見捨てられたことで昔の嫌な気持ちを思い出してしまう。
「だから、にんげん、くう。ちから、てにはいる。」
さっきから蕁麻疹が酷い。痒すぎる。ぜひ近寄らないで頂きたいものだけど、無理だろう。
残された俺達3人。俺と後輩の香田、同級生の古野さん。
「ねぇ、どうやって逃げる?」
「先輩ぃ…。こ、この状況で、逃げきれれるんスかぁ……??」
と足を震わせる香田。質問に質問を返してくるなよ。
「……チッ」
ミス建築科の同級生、古野さんに至っては猿たちを睨みながら舌打ちを返してる。あれ、古野さんってそういう人だったっけ?
そういえば、前に妙な夢で事件に関わるなとお告げをもらったのだった。
「にんげん、くう。だから、おまえたちも、くう。」
猿たちが一斉に襲ってきた。