プロローグ
俺は変なアレルギーを持っている。
初めて発作がおこったのは小学生の頃で、アレルギーの原因は花粉とか食べ物の類ではなかった。
アレルギーが出るようになったのはある事件に関わったせいだ。
うろ覚えではっきりとは思い出せないのだが、俺が小学校中学年の時に地元で神隠し事件が起こった。被害にあったのは同じ学校の2個上の女の子。俺は子供の小さな正義感と好奇心で事件を解決できると思って行動してしまったようだ。
俺の地元は木々や山々囲まれたところにある。俺はそんな山の中で特に怪しいと思った立ち入り禁止の山に入ったらしい。その山に入った事はあまり覚えていない。
ただ、気付いた時には山の出口にいた。
俺の右手は行方不明だった女の子の握っていた。彼女はすごく怯えた顔をしていた。
山の出口にいると捜索隊の人が俺たちを見つけて、驚きつつも保護してくれた。
「お前が、見つけたのか?よく、やったな。名前は言えるか?」
「岡本、匠郎です。」
俺の名前を聞いた捜索隊の人はまた驚いた顔をしていた。その後、連絡の受けた他の隊員が駆け付けた。みんな、俺の顔を見て驚ていたがすぐに取り直し捜索隊の本部である集会所に連れていってくれた。俺は不安で女の子の手を離せずにいた。
集会所の入り口で待っていたのは、女の子の母親と父親、そして俺の祖父だった。みんな、俺達を見て驚き、訝しむ目で俺は視線を見ていた。特に祖父は今まで見たことのないほど青い顔をしていた。俺はみんなを見て不安になった。そして、祖父がーー
「お前、匠郎か?」
「う、うん。じいちゃん、どうして、そんなことを聞くの?」
「どうしてって、匠郎、お前の髪の色が……。」
その時、俺は初めて集会所のガラスに写った自分を見て何かが弾けた。
「ぁぁ…………………ぁぁあああああああああぁぁぁ……ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
「た、匠郎!」
髪が白くなっていた。何かが壊れそうになった。俺は女の子の手を放し、自分の髪を強く引っ張っていたが、祖父に抱き止められた。
「匠郎、よく帰ってきた3日も行方も分からなくて心配したんだぞ…。」
「み、3日…?」
何も考えられなかった。ただただ、祖父に抱きしめられていた。
女の子も母親に抱きしめられていた。そして、泣いていた。
「鬼が出たの……鬼が………でも、もっと怖いのが出た……悪魔が来たら…鬼いなくなった………」
「?」
母親は不思議そうに彼女を見つめている。女の子は、ゆっくりと振り向き、俺を怯えながら見つめ指をさした。
「…………あの子…来たら…………鬼逃げた……」
息が苦しくなった。抱きしめている祖父の手が震えている。
「………悪魔じゃない…孫は悪魔じゃない!」
周りの視線が怖い。呼吸ができない。
俺の意識は途切れた。
その後、俺の髪の色は戻ったが、神隠し事件の影響で怖い話や心霊物が苦手になると同時に体もそういった物も受け付けなくなった。
心霊スポットや神社、果ては自分の家のお墓で行くことでさえダメになった。そういう所に行くと首や腕に蕁麻疹が出てしまうのだ。酷いときは呼吸困難にまでなってしまう。
俺はあの事件でオカルトアレルギーになってしまった。
地元にいるのがツラくなって、大学進学と同時に実家を飛び出したのは4年前だ。
以前投稿したものを書き換えて投稿し直しました。