生徒会
今回もローテンションです。
それは8月のことだった。
俺は生徒会にクラス担任から推薦され、生徒会に入ることになったのだ。
担任の女教師葛城命は『あの少女』の姉で、俺の数少ない理解者の一人である。だからどれだけ抵抗しても無駄だということを悟った俺は、現在大人しく生徒会室の前に立たされてるわけだが……気まずい。なんてったってこの学園きっての問題児のこの俺が、あれですよ?学園の顔ともいえる重要な組織に入るわけですよ?世も末だとは思いませんか?
だがまあ、さすがに廊下でこれ以上汗だくになるのは嫌なので、とりあえず2・3回ほどノックをする。
「ちわーっす!みかわ屋でーす!」
とりあえずサ●エさんのさ●ちゃんの真似をしてみる。するとドアを開けてノリの良い返事をしてくれた。
「はーい(がちゃ)!あら●ぶちゃん、ごぶさ…た……………キュ〜」
………しかし相手が俺と気がついた瞬間、この女子生徒様は気をお失いになられたわけですよ、はい。いくら俺の体が強かろうと、心はこう見えてピュアなんですよ?そんなことを考えていると、ドアから別の女の子がこちらに気づいて出てきた。
「なにかありましたか?」
鼻が高く目が透き通っていて、黒髪のロングに桃色の唇。うむ…
「100点…だな」
「…?なにが100点なのでしょうか?」
どうやら口に出ていたようだ。どうやらこの俺のピュアな心は正直ものらしい。つまり、俺はまだ少年の澄んだ心を忘れていないわけだな、うん。……あ、返事するの忘れた。
「まあ、気にしないでくれ。てか、君は俺と話すのが怖くないのか?」
そんな俺の問いに対し、彼女は表情を変えずに返事をする。
「あなたのことは既に葛城先生から聞いているわ。もちろん、過去のことも全て…ね」
なるほど、そういうわけか。
彼女は話を続ける。
「それじゃあ反対に聞くけど、なぜ私が貴方を怖れると思ったの?貴方は私に危害でも加えるつもりだったのですか?」
「いや、ないね」
「そう。なら、それで良いじゃない。それより、ようこそ我が生徒会へ。私は会長の植木瞳よ。よろしく」
そういうと会長は手を出した。
「ああ、こちらこそ」
それに対し俺は握手をしながら答えた。
生徒会室に入って会長から仕事の内容やら注意点やらの説明を受けていると、先ほどの気絶した少女が目を覚まし起きあがった。あ…焦ってる焦ってる。
「はわぁぁ〜〜〜〜〜っ!?」
あっ、何も無いのにつまずいた!?
「痛ッ〜〜〜〜〜〜!?」
転んだ!?
「もう!なんで貴様のようなやつがこんな場所にいるのだ!?」
素直クールだと!?てかこの口調でさ●ちゃんのネタについてくるとは……俺は今まさに新たな歴史を垣間見たのか。
「やめなさい葉月!…彼は葛城先生の勧誘で此処に来たの。あなただってちゃんとその話を聞いてたでしょう?だから仲良くしなさい」
会長は葉月と呼ばれた女の子に落ち着きながらも力強い口調で言う。一方葉月は納得がいかないようで俺を睨み続けながら話す。
「こんなやつと共に活動しろというのか!?いくらお前の頼みでも、私はこやつのことが好かん!」
ああそうかよ俺もお前が嫌いだよ。
「…会長、俺この役は降ります。やっぱりこいつ同様俺みたいなのを好ましく思わない人間は腐るほどいる。そんなやつらと同じ人間といても仕事なんかできやしない」
俺は会長にそう告げ、ドアノブを握り開ける。会長は何か言おうとしていたが、葉月がそれを遮るように話だした。
「ああやめろ。お前みたいな化け物となんか誰が一緒にいられるかよ」
俺はその声を聞きながら苛立たしさとともに力強くドアを閉めた。
俺はそのまま屋上に向かい、屋上に着くと昼寝を始める。
もう何度も言われた言葉。『化け物』なんて言われ慣れたと思っていたが、本当は全然克服できていなかった。だが悲しくもこの言葉に傷つくことで、自分も1人の人間んなんだと自覚出来るという事実はなんとも複雑なもんだ。
こんなときは、どうしようもなく会いたくなってしまう。かつての友人達に………
『キャー!!』
叫び声!?外からか!?
俺は慌てて起き上がると、屋上から校庭を見つめた。しかし、誰もいる気配はない。
『誰か助けて!!誰かぁ〜!!』
校舎裏の方か!?
俺は校舎とは逆の方向を見る。すると、そこには何人かの女子に囲まれた女の子がいた。殴られたり髪を引っ張られたりされているから、虐めで間違いないだろう。
気がつくと俺はそこに向かい走り出していた。なぜ?そんなもん知るかよ!
俺が着たとき、女の子は既に制服や髪がぼろぼろになっていた。
「てめぇらなにやってんだ?」
俺は虐めていたやつのなかのリーダーらしきやつの肩を後ろから掴み、低い声で怒りを堪えながら言った。
「は!?んだて…め………ぇ…!?」
最初はドスの効いた声で言っていたが、俺と気づくなりその顔が青ざめていった。
「お前ら…ここで死ぬか?」
俺は地面から岩を掴むと、彼女に見せつけるように握り潰した。
「ひぃ!?化け物だぁぁぁ!!」
彼女達はそう叫びながら慌てて逃げていった。
「……ふうっ。大丈夫か?」
俺はそう言うと、虐められていた女の子に手を差し出した。しかし…
「ひいっ!?」
俺をに怯えながらその女の子も逃げていってしまった。
最初からわかってたさ。ここには俺を認めるものは何もない。きっとこのまま終わりになるのだろう。
だが俺はこの少女との出会いが俺の今後の人生を大きく変えていくとは、この時は思いもしなかっただろう。