第七話:五つの英知
俺は、一二三と勉強することとなった。しかし一言に勉強といっても、様々な学問がある、俺はとりあえず、国数社理英の五科目を集中してやることにした。
「さぁ~て、まずは手堅く社会から始めますか~」
俺は左手にシャーペンを、右手にノートを、そして眼前に社会の参考書を置く。
社会の学問は重要である、人類とは群れをなし、生きてきた生物だ、そして秩序ある群れは高い生存能力を誇った。社会の学問とは人が人の世で生きていくために必要不可欠。それゆえに俺は社会の学習をまさっきに選んだのだ。
「大事なところはマーカーで印してあるからね」
一二三がそう言って参考書を開く。
その中身は印まみれであった。
「ん? 」
俺は少し厚い参考書をパラパラとめくる。その全てのページに印がある。
こんなにたくさんを覚えることは不可能。よって俺は社会の参考書をパタリと閉じた。
そもそも社会など覚える必要はない。なぜなら大昔のおっさんの殺し合いや地図の読み方など知らなくても生きていくことは可能、公民もたぶんくだらない内容なため不要。
「一二三、社会ではなく理科の参考書をくれ」
俺がそう言うと
「社会は? 」
と聞いいてきたが
「いいから! 」
俺が強く言うととりあえず理科の参考書をくれた。
俺は理科の参考書を目の前に置く。
人が何故この厳しい自然界を生きてこれたか、それはひとえに道具を作ることが出来たからである。爪も牙も、分厚い皮膚も持たない人間しかし道具のおかげで人類は生き延びることができた、そして最初は石を削っただけの簡単なものであった、しかし人類は己の頭脳と指先で様々なものを作り上げたそれこそが科学すなわち理科である。人は科学なしでは生きていけないもの、それゆえに理科は重要なのである。
早速、理科の参考書を読んでみる。
ふむふむ、よくわからん!
そもそも科学の理屈なぞ知らなくとも説明書を読めば道具の使い方は分かる、よって理科なぞ学ぶ必要は無い!
「一二三、社会ではなく数学の参考書をくれ」
俺がそう言うと
「理科は? 」
と聞いいてきたが
「いいから! 」
俺が強く言うととりあえず数学の参考書をくれた。
俺は数学の参考書を目の前に置く。
数学……それは人類の思考の限界を見る学問、そして目には映らぬ世界を教えてくれるもの、そして神秘への案内人。数学の発展は常に文明の発展を約束していた、人と数字は一心同体、数学こそが最重要科目だ。
数学の参考書を開いた瞬間!
「ぐおおおおおおおおおおおおおおお!!!! 」
とんでもない意味不明な記号の祭りが俺を迎えた。それは戦場の狂兵が踊り狂うがごとく様に見えた。
くそ! 数学なんぞ所詮は人生み出した儚い幻想に過ぎない、所詮人などに世界の真理を解き明かすことはできない、よって数学は全て間違いであり、無意味である。
やはり、これからはグローバルな世界に目を向けなければならない。俺は英語の参考書を開く。
「ああああああああ!!!! 」
数学が狂気の世界であるなら、英語は暗黒の世界、もはやアルファベットの意味すらわからない。
まぁ、俺は鬼畜米国の犬に成り下がる気は毛頭ないので知る必要は無いのだがな。
やはり、全ての基礎、自分たちが住む国の言葉、国語から始めよう
俺は国語の参考書を開く。
なになに……作者の気持ちを考えよう?
知るかボケェ! まったくもってくだらん、狂人の書いた妄想なんぞなんの価値もない、そもそも正しい文法なんぞ必要ない、伝わればいいのだ。
「はぁ~大体さ、学校の勉強なんて暗記ばっか、分かんなきゃ調べれば済む話、まったくもって意味がわからん! 」
俺がそう言うと
「いや、でも基礎も出来無いと何を調べていいかすらわかんないぞ」
一二三がそう言ってくる
「ああああああ!!! もう! 知らん! 寝る! 」
俺は布団の中に入った。
「はぁ~、厳し事を言うが一定のレベルになるまで私は時を進める気はないからな、あとPCも使えないぞ」
一二三は少しばかりニヤつきながらそう言う
「なに!? 」
俺はPCを引っ張り出して、電源ボタンを押す。
つかない。
「クッソォォォォォォォォ!!!! 」
俺は机に向かう。
こうなったら俺の本気を見せてやる!!
こうして俺は約45日でギリギリのレベルの学力になった。なかなかの才能である。