第二話:灰かぶり貴公子見参!!
この俺、宮上 唯人は教室の扉に手をかけながら、ダラダラと汗を流す、高い気温と何とも言えない緊張が俺の発汗機能を加速的に促進させる。
え~い! ままよ!
俺は人生で五本の指に入るほどの勇気を振り絞り、教室の扉を開ける。
まず、俺の意識に入ったのは、教室の中にある、静寂とは言い難いが、騒然とも言い難い、30程度の顔と身体の集合体。
次にこの空間において俺を除けば唯一座っていない30代前後と思われる女性の教師の
「はい! 今日からこのクラスの一員となる宮上 唯人くんです、今日来たばかりだから分からないだらけのことだし、緊張しているだろうから、みんな優しくしてやれよ~」
と言う声だった。
俺は軽く頭を下げると
「あの……俺の席どこっすか? 」
俺は女教師にそう聞くと
「ちょっ! タンマ! タンマ! 」
一二三がいきなり大声を出した
「うお! どうなってんだ!? 」
俺はつい柄にもなく大声を出してしまう、だがしかしたとえ世界の誰であろうと大声を出してしまうだろう。
なぜなら
この世界が止まってしまったからだ。
俺の視界に入るもの全てが完全に静止状態にある、異様な光景、人すらマネキンに見えてしまうほど無機質に凍りついた世界。
「私が時を止めた」
一二三は俺に説明した。
「そうか」
俺は考えるのがめんどくさいので、考えるのをやめた。
「ていうか! そんなことより、これから苦楽を共にするクラスの仲間になにか一言ぐらいないの!? 何あの、俺……心に壁作ってます的な、俺はクラスの連中に興味ないから的な態度は! 唯人さぁ~、こういう転校初日の最初の挨拶はさ、その人の第一印象を決める大事なものなんだよ、それをさ何? あの……俺の席どこっすか? って、もうさ第一印象最悪だよ、もうさ絶対にかかわり合いになりたくないやつじゃん君」
一二三は顔を真っ赤にして、まくし立てる。
「いや、俺べつに誰にもかかわりたくないし」
俺はこの学校を空気の様な存在で生き、卒業する気マンマンだ
「はぁ~、唯人は何のためにこの学校に来たのさ? 」
一二三が呆れたような顔で俺に聞いてくる。
「土管とパンの耳生活から脱出するため」
俺はそのためにこんな学校などと言うクソみたいな場所に来てやったのだ。
「ちっが~う! 青春するためでしょうがァ! とにかくやり直し」
とつぜん世界が動き出す。
「はい! 今日からこのクラスの一員となる宮上 唯人くんです、今日来たばかりだから分からないだらけのことだし、緊張しているだろうから、みんな優しくしてやれよ~」
女教師の声を聞く限り少し時間が戻っているようだ。
「宮上 唯人です、で? 俺の席どこすっか? 」
俺は完璧な挨拶をする。
「って……おいィィィ!! さっきとなんにも変わってないじゃん!? 」
また時間が止まり、一二三が大声を張り上げる。
「うるせぇなぁ……名前言ったじゃん」
俺はうるさい一二三に顔をしかめながら、そう返す。
「いやいやいや、名前言ったじゃんって、それだけじゃん、なにマシになったつもりでそんんなこと言うの? ぜんぜんマシでも何でもないからね、ていうかどんだけ自分の席が気になるの? そういうのは先生がちゃんと教えてくれるからね、聞かなくていいからね」
一二三が言葉の機関銃で俺を責め立てる。
「いや、もし言わなかったらどうすんの? 突っ立てんの? 嫌だよ恥ずかしい」
俺は一二三にたぶん的確な反論する。
「俺の席どこすっか? て聞くほうが100倍恥ずかしいからね」
一二三は速攻でそう返す。
「あ~! もう、わかった、わかった! もう聞かないから」
俺は一二三のウザさに付き合ってらんないので、とりあえずそう言っておく。
「じゃあ、もう一回な」
また時間が戻り、動き出す。
「はい! 今日からこのクラスの一員となる宮上 唯人くんです、今日来たばかりだから分からないだらけのことだし、緊張しているだろうから、みんな優しくしてやれよ~」
「宮上 唯人です」
「…………」
無言の空気が教室に充満する。
「そんだけ? 」
時を止め、一二三がそう言う
「席のことは聞かなかったぞ」
俺は一二三の意見にちゃんと従ったことをちゃんと言う、俺は真面目なのだ。
「いや~、なにか一言入れようよ、名前だけじゃ、ちょっと味気ないというか、それだけ? 感がするから良くないよ~」
一二三はちょっと呆れた様子だ
「あ? なんか文句あんの? 」
真面目にやったこの俺様に対するこの仕打ち、もう許せん、抗議だ。
「いや、せめて、これからよろしくお願いします。ぐらい入れようよ」
一二三が俺に文句を言ってきやがった。
「ああん!? 俺に媚び売れってのかァん!? おおん!? お、お、お、お、お、おお~ん!?!? 」
俺と言う、孤高の存在はあらゆる存在に媚びを売らないのだ。
「いや、これからよろしくお願いします。は媚びを売るとかそんなんじゃないから、常識だから」
呆れを通り越し、唖然といった様子で一二三はそう言う。
「俺は常識にも媚びを売らない」
俺はそう毅然と言う、俺かっこいいだろ。
「はぁ~、仕方がない」
一二三が小声でそう言ったあと。
「土管で生活したいの? パンの耳食べたいの? 」
疲れきった顔の一二三がそう言う。
「よっしゃぁ! 真面目に媚び媚び挨拶するぜぇ!! 」
俺はそんじょそこらの雑魚な自称孤高(笑)ではなく時として柔軟に対応できる、社会性を持ち、常識をわきまえつつ決して屈服しない真の孤高(神)なのだ。
「はい! 今日からこのクラスの一員となる宮上 唯人くんです、今日来たばかりだから分からないだらけのことだし、緊張しているだろうから、みんな優しくしてやれよ~」
また繰り返す
「宮上 唯人です! これからよろしくお願いしますッ!! 」
俺は全力媚び媚び挨拶をする。
クラスで拍手が起き
「じゃあ、宮上の席は空いているそこな」
教師がそう言って、空いている席を指す。
一二三は、さすが唯人と言った顔で俺を見ていた。(一二三は本当は最初の挨拶でこのざまで大丈夫かな。と思っている)




