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帰り道

 今日は部活を抜け出す暇もなかった。役にも立たない傘を片手に晴れ渡ったオレンジ色の空の下を足元も重く帰ってしまおう。今日はいろいろなことがあった気がする。秘密のノートは賦星先輩の手に渡ったし、演劇の練習が始まった。賦星先輩の演技は抜群で、今河先輩の苦りきった表情はどうしようもなく似合っていた。

 曇り後晴れ。澄み切った赤色の空が眩しくてしょうがない。

 明日には今河先輩が印刷した分厚い紙束を用意すると言っていた。

「よ」

 声をかけられたのは突然だった。

「要」

 見回す前に声で分かってしまうのはどうしてなんだろう。

「あ、恵都」

「はい。徳波君です」

 どこかで聞いたような会話だ。似たような会話と似たような風景。何となくどこかで見たことがあるような。

「島世さんに何か御用ですか。徳波君」

「いえいえ。そうたいそうなことでもありませんよ」

 恵都はそう言って笑う。笑うと元々小さなえくぼが大きく広がって、それで、まるで破顔一笑といった感じで悪い印象は決して与えない。笑うっていい。だから私もつられたふりして笑ってしまう。

「いや。今日の昼間はさ」

「何か言った恵都」

 可笑しくって少し聞き取りづらい恵都の声。

「いや何でもない。誰かと一緒に帰るのもいいかと思ってさ」

 だから、私と恵都は一緒に帰った。静かに歩いて静かにはしゃいだ。どうしてだろう。今日はいろいろなことが起こる日だ。

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