帰宅際に
帰り際、恵都に会った。
どうしてだろう。待ってくれていたらしい。
「よっ。島世さん」
「はい。徳波君」
「一緒、帰ろうぜ」
「そうなの」
「そうだよ」
それから話したことは、秘密にしておきたいような、そうでないような。私、恵都と何を話しているのか、わからないような、わかるような。
「それで、どうなの要は。部活とか、慣れたか」
「慣れましたとも。徳波君」
「そうですか。島世さん」
「役、もらったんだ。私」
「そうか。要。やったな」
「やりましたとも」
「レギュラーになるようなものだろ」
「うーん。どう、なんだろ」
そんなたわいもない話。帰りの道は短いんだ。私は、恵都と別れるまで、話に話を継いだんだ。
「恵都はさ。どうなの」
「俺はさ、全く駄目」
「そうなの」
「嘘ーっ」
「嘘なのかー」
「嘘だよ」
恵都の顔は、輝いている。少しだけ日焼けした恵都の顔には、いつもみたいに笑みが張り付いている。ずしりずしり。疲れた足を引きづって歩きながら、縦に揺られながら、私は思うんだ。いつも笑っている恵都。私の前でも笑っている恵都。私の前で笑っている恵都。
「さようなら要」
「また、会おう徳波君」
「何だ、それ」
しばらく歩いてから分かれ道で別れる私たちは、笑っていたんだ。