劇6
しばらく出番は無いみたいなのでそこから先を飛ばしてしまうと、それから、出番の場面を開いてみる。
一輪の薔薇差しを部屋に。
男とかの女のやりとり。
『これは。私が望むものとは違います』
『愛しき人よ』
『おかしな人。そう呼ばれる筋合いはありません』
『望みの品を持ち帰ったにも関わらず、それは、あまりにむごいお言葉』
『それは』
『私ほど勇気あり、あなたを愛するものはいないでしょう』
『それは』
『私ほど無私に、あなたを愛するものはいないでしょう』
『それは』
『私ほど』
『とにかく!』
女が荒々しく声を張り上げる。
『お帰りになって下さい。お帰りになって』
『おお。それは余りにむごい』
『何がむごいものでしょう』
冷え冷えとした声。
『では、せめて、あなたの望みの品をあなたに差し上げましょう』
『そう。そうですか。それでは、お礼をしなければ』
女は薔薇差しを手に取ると、そこから丁寧に薔薇を抜き取ってそれから、その差し物の中身を男に向かってぶちまける。
『これが、お礼です』
『…』
『そうそう。この薔薇は差し上げますね。欲しがる人もいらっしゃるでしょうから』
震える男にそっと薔薇を手渡すかの女。
『あなたこそはと』
『それ以上はおっしゃらない』
男をしり目に扉のノブを掴むかの女。
退場の合図。
すごすごと引き下がる男。
男の退場の後、左右を見回し独白。
『ああ。むごい女と思われたでしょうね。でも、それも、あの方とあの方の愛しい方のためを思えばこそ。私は、私は』
ベッドに向かってむせび泣く。かの女。
すすり泣きとともに幕。




