一日の終わりに。
数枚目をめくったところでくらくらしてくる。私の、私の役のことだ。圧倒的だった。そうだ。圧倒的。圧倒的に長い。台詞と台詞、そして動作と動作。それが長いのだ。長くてどうしようもない。ページをめくりあげながら続きを読んではみるのだけど、後は自分の役がどれくらいのものなのか確かめるので精一杯だ。
賦星先輩の役と、今河先輩の役。そこが中心ではあるのだけど、私の役はどうしてだろう。長く係わってくるし、一時は主役たちよりも出番が多い。私は、手の中の用紙を両手の中で震わせてしまう。どうしてだろう。私で、私で。先輩たちの、先輩たちの。何だか疲れてしまう。役に入り込んでいるわけでもないのに疲れてしまったのは。
『何に疲れたというのです』
まずは、そこからだ。
今日の練習とそして明日の練習。何かに憑かれたかのように、用紙の中の同じ位置を繰り返し、繰り返し、ワードにして感慨もなく繰り返す。まずは今日の一シーンを。次は明日に向けた先の二シーン目を。
「要」
夢中になっていたのは、どのくらいの間だったのだろう。母さんの声で部屋の時計を見ると、もうこんな時間。
「はい」
シャワーを浴びて、それから、予習復習を短くやると、最後に残ったのは秘密のノート。秘密、あったかな。今日のことを思い返しても、どうしたことかな、私には何の秘密も無いのだ。回収した秘密のノート。どこかに何かを記さなきゃならない。秘密の秘密。
私は、考えながらベッドの中にもぐりこむとそのままぐっすりと眠ってしまった。