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ハッピーエンドな日
今日は晴れだったから傘を持って来なかったんだ。傘があったらよかったのに。暗がりに落ちる太陽に向かって振りかざしてやれたのに。私は、帰り際になぜかそんなことを思いながら家までたどり着くと、それからやるべきことを考える。
本。後は数十ページでお仕舞の本。
用紙の束。台本、ストーリーを覚えなきゃ。
秘密のノート。秘密はどこから湧いて出るのか。
教科書。予習復習で、あいつの心もゲットだぜ。
……。
結局は先に思い出したものから手を付ける。だって、その方が優しいから。
本を読む。帯をつかみながらよくよく読む。最後の章を読み終えて、最後の一文の余韻を残して、終わり。
ハッピーエンド。それで終わり。賦星先輩の言う通りに終わってしまうのが何だか神経にも触る。もやもやした感覚。私が好きな物語はいつもハッピーエンド。だからそういう本を選んではいるのだけど。何かすっきりしない感覚。
だけど終わり。音を立ててしおりを抜き出したまま本を閉じる。
もう一時間は経過していたので、間に夕食を挟んでから、私はようやくのことで用紙の束へと手を伸ばす。