ホームルーム
日時:六月十日 場所:学校の教室。目的:朝のホームルーム前。
空き時間に本を片手にしている。久しぶりに読む本だから読むのが遅いのかな。話すのを遠慮して本を読むのは久しぶりだ。特に面白いわけでは無いのだけど、手に取ってから読み続けている。
「要さ、本読むのは面白い」
「面白くはないけどさ」
洋子にそう言われると少し身構えてしまう。本のしおりを挟むと何気なく折りたたんで会話に戻ろうとするのだけど、少し話が遠のいてしまったようで割り込むように笑いかけるのもおかしな感覚がする。
「要は部活があれだからね。勉強ね」
「それは、どうかな」
部活。
新しいことの始まりで、仲良くやっているはずなのにどうしてか部活だって言われると気後れしてしまう。
「洋子は本を読んだりする?」
「どうかな。夏休み辺りだったら別なんだろうけど」
「そうだよ、」
頷く里美が慌てたように乗り出していた身を戻して席に向かう。
「ねっと」
好摩先生が決まったYシヤツにダブルのパンツスーツで入ってくるのを見ながら里美が慌ただしく机の整理をする時。それからはホームルームの時間。坂井君の朝礼に始まって、それから今日の注意事項と、連絡事項。特に変わったこともない日常。
「それから」
好摩先生の澄んだ声が響き渡る。
「今日も忘れるんじゃないぞ」
「はい」
大声で返事をしてホームルール終了。