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第六十六話 - 主人公の知らぬ間に終わる物語・前

 ヒュンと風を切り裂く鉄の刃が舞い、ブォォンと高圧放電しているかのような音と閃光を散らして光の剣が迎え撃つ。


「エンチャント・ドレイン」

「なんで魔法を使えるんだよ!」


 スコールの刀が色のない陽炎を纏い、光の剣を捉えると急速にその力を解き放っていく。剣の形に集められて、縛り付けられていた光が散っていく。このままでは刃に腕を落とされる。レイズは体を反らしながら横に倒れる。

 急に抵抗を失ったスコールがバランスを崩し、その隙を使って大勢を立て直す。攻勢に移るのは躊躇われた。以前の経験からすると、ここで攻撃するとカウンターを受けてその流れで負けに持っていかれる。


「サモン・ノーム」


 幸い相手の魔法は無詠唱とはいかないようで、発動前に略式詠唱を行う必要があるようだ。おかげで系統と属性が分かるため対処が楽になる。

 地面からバスケットボールサイズの岩が飛び出してきた。当たれば骨格ごと体が弾け飛ぶ。


「スティール!」


 魔法ならば奪い取れる、その認識は間違っていない。だがその岩が魔法で圧縮され作られ、魔法で飛ばされただけだとしたら? 岩自体は質量物であり、岩にかかっている移動、加速、慣性制御の基礎的な魔法を奪い取るだけだ。

 とっさに突き出した右腕に岩が直撃し、肘から先を連れて空の彼方に消えていった。腕がなくなった断面からは心臓の鼓動に合わせて血が噴き出す。


「あぐっ……!」


 痛みに体をふらつかせた刹那、


「疾風斬」


 更なる詠唱が聞こえてきた。実際のところは詠唱というよりは、意識のトリガーを引くための言葉だ。何度も言葉にしながら魔力制御のパターンを実行すると、パブロフの犬のように条件反射で覚えこんだ制御を実行するのだ。


「やめっ――」


 言葉むなしく残った左腕を落とされる。無意識下で幾重にも障壁を展開しているはずなのに、何の抵抗もなく体から離れた腕は地に落ちた。

 続けて刀の背で足払いをかけられた。重量一キロ越えの鉄の塊が骨を砕くまではいかずともかなりの激痛を与える。普通こんなことをすれば刀が使い物にならなくなるのだが、そういったことすら気にしないでいいほどに鍛えられているらしい。


『このままでは監視の継続が不可能』

『実験は何度でも行える、だが観測ができなることで記録の採取ができなくなる』

『あの人間、どこまで気付いて邪魔をしている』

『やつらを引き寄せろ。あれほどの強力な情報ならば』


 激痛に意識が弾け飛びそうになる中で、レイズは誰のものか分からない声をしっかりと聞いた。

 そして変化は訪れた。


「これより支援する。あっさり死んでくれるなよ? 寮長の彼氏さん」


 銃声が連続して響き、それを弾く音が耳を打つ。

 顔を上げれば如月寮の住人の男が一人。軍服らしきコートを着て、襟元には傭兵斡旋協会の階級章がついている。あの大惨事を生き抜いてなおかつ敵方に回らなかったから生きているのか、どうなのか。


「スコール、あんたを倒せば時を渡る力が手に入るんだな」

「まあ……あながち間違いではないな。現行の理では倒した相手の力を奪い取ることもできるし」

「そうか……なら」

「来い、第三世代の狼谷」

「ああ。行くぞ第一世代のスコール!」


 レイズは治癒魔法をイメージしながらその戦いを眺めていた。スコールにとって一番厄介なのは、やはり魔法を扱えない者だ。そしてまっとうな兵士のようにパターン化された訓練で鍛えられた訳ではなく、持ち前の才能と理不尽な環境で鍛え上げられた適応力が最悪の相性になる。

 砂埃を巻き上げ、旋風を巻き起こし、常に動き回り規則性を出さず。そんな回避行動でも、後を追っていた射線、弾丸が掠りはじめ、やがて被弾した。


「ぅく」


 例えば射線に刀を合わせて弾丸を斬るなんてことができるが、それをしたところで弾はまっすぐ飛んでくる。それで弾くなら斬りながら刀を回転させる必要がある、だから現実的にできないことをやろうなどということはスコールのコンバットパターンには組み込まれていない。

 とにかく成功率の高い行動を取り続け、相手が隙を見せたらカウンターを叩き込んでいく。


「早いっ」


 焦り、狙いが定まらないが、それでも立て続けに弾を放つ。

 スコールは狼谷の周囲を回るように走って攻撃をかわし続ける。ときに速く、いきなり遅く、そして足元の土を蹴り上げて、


「いい加減に止まれぇっ!」


 なおも撃ち続ける狼谷の銃撃を躱す。

 やがて硝煙の香りが濃密に立ち込めてむせ返りそうになっていく。

 だが膠着状態になることはなく、すぐに状況は動く。

 カチンッ、とスライドが下がり切った。

 マガジンを落として腰のポーチから新たなマガジンを取り出そうとする狼谷めがけてスコールは、


「サモン・ウンディーネ」


 水弾を撃ち込んだ。水といえどそれなりの量をぶつけられると金属装甲ですらへこんでしまう。


「げふっ」

「終わりだ」


 距離を詰めたスコールが刀を切り上げ、狼谷の手にあったハンドガンを切断する。


「運がなかったな」


 上段に構えもせず、ただ無慈悲に刀を突き立てようとして、更なる新手が参戦した。

 横合いから突き出された直刀がスコールの刀を弾き飛ばす。


「テメェなに裏切ってんだよ!」

「うるっさい狼だことで」


 飛び退いて、さらにバックステップで距離を取る。弾かれた刀を拾うだけの隙がなく、鞘からコンバットナイフを逆手で二本。


血色の狂犬(ルージュマッドドガー)か」


 失血のショックでまだ動けないが、失った腕を再生し終えたレイズはそれを見ていた。如月寮の住人であり如月隊の中では相当強い部類に入る二刀流使い。死んだはずなのになぜここにいるのか。


「お前がみんなを殺したのか!」

「……直接的ではないが、まあそうなるな」


 嘘ではないがあっているともいえない。ただそこにいたら騒ぎに巻き込まれて大破壊が起きただけのこと。その辺のことをはっきりと言わないのがスコールの悪いところだ。

 ギリッと、狂犬と呼ばれた青年が奥歯を噛みしめた。

 怒りかなにかで無意識に魔法を使っているらしく、赤色の魔力が放出されて空間に火が生まれては消えていく。


「そういえば忘れていた。確定した事象が変わっていたな……」


 ドガッ! と狂犬の足元が弾け、凄まじい勢いで迫る。演出ではなく確かに狂犬の足元が爆発していたのをスコールははっきりと認識していた。あれでよく足が壊れないな、そんなどうでもいいことを思いながらすっと横に体を逸らす。

 数瞬遅れて爆音と衝撃波が炸裂し、莫大な粉塵と土塊や石が巻き上がる。あっという間に土砂の雨で視界が遮られ、掠りでもすれば怪我をする程度では済まない土石の雨嵐。地面を走り抜けた衝撃波は地割れを起こし、揺さぶる振動は局所的な地震に近く、上と下からの障害にその場で生き埋めになるかに思われた。


「俺が言うのもなんだけど、やっぱり怖いな……白き乙女所属の魔法使いどもは」

「それを言ったら白き乙女の中に怖くないやつらがいるか?」


 狼谷に運ばれて巻き込まれなかったレイズは失った血液の補充を魔法で行っていた。質量保存の法則を完全に無視して魔法で癒す。


「正規配属の一番下でも……小隊規模相手にやりあえるしなぁ」


 ほとんどいなくなって、残りもどこにいるのかわからない仲間たちを思い出しながらレイズはため息をついた。


「それよりスコールをどうやって倒すかだ」

「至近距離で銃弾を躱すほどだから、正直もう攻撃手段がない。俺はあんたらみたいに魔法を使うことができないからな」

「だったら牽制でいいから撃て。数で押せばあいつは体力がないからすぐに消耗するはず」


 粉塵の壁の向こう側からガッキンゴッキンと重機のアタッチメントでもぶつけあっているかのような重たい音が響く。確かスコールはナイフで狂犬は直刀のはずだ。どうあっても受け流すことすらできないはずなのに何が起こっている?


「くそぉっ!」


 風の刃に押されて、二振りの直刀を交差させて防ぎながら狂犬が弾きだされてくる。


「風よ」


 強風が粉塵の壁を払いのける。

 そこには狂犬の一撃によって割られた大地が、無残に掘り起こされた地形があった。

 そして土埃にまみれたパーカーを脱ぎ捨てるほぼ無傷のスコールがいる。


「術札もなしになんで魔法を使えるんだ!」

「自分で使っているわけではないさ。いつも他人に強制的に詠唱させて奪っているだけだからな」


 一歩踏み出す。走る、そんな動きではなかった。本当にただ普通に一歩を踏み出しただけだった。だというのに一歩一歩で一度に十メートル近くを瞬間移動しているように見える。実際は自分の前面に空気の盾を作り出して無理やりな高速移動を行っている訳だ。

 だがそれの速さに認識が追いつきはしたものの、反応が間に合わずに狂犬は腹に、逆手にコンバットナイフを握ったままの拳を受けた。解放された盾の空気が爆発し、体を突き抜ける衝撃を与える。


「どはっ!?」


 まるでボールのように、何度かバウンドして狂犬が遠くまで飛んでいく。運が悪い、自分で巻き上げた岩が頭に直撃した。

 そしてそちらを気にかけずに狼谷がリロードし終えたハンドガンを撃つが、避けられる。


「連携しろよ連携。三人いれば何とかなるだろ?」


 軽く挑発しながらスコールは避け続ける。銃口の動きから先読みしているのか、掠りはするが直撃はしない動き、そして避けた先のレイズが設置した魔法の範囲に入ることなく回避を続ける。


「連携なんてできるわけねえだろ! 戦略級は常に独りで戦ってんだから!」


 レイズが拳を突き出し、スコールがさっと体をずらす。それだけで地面が弾けた。


「魔力の塊で攻撃か」

「魔法にしたら奪われるだろうが」

「そりゃそうだな」


 空気を裂く音が聞こえた。

 そして直後に閃光が炸裂する。


「お前……ほんとにどうやって魔法を使っている」

「神力を用いた術だ」

「どうみても魔法だろうが!」


 横に伸ばした腕、握られた戦闘用の黒く艶消しされたナイフ。その先から迸る光の剣。


「まあヒントはお前の魔術の使い方、かな?」

「……?」


 思い返してみればレイズは中継界に武器庫を作り、そこから複製召喚で取り出して様々な武器を使うことができる。これと同じように発動寸前までもっていった魔法、魔術を中継界に保存して必要な時に適宜解放している。

 同じように考えたら?

 スコールも中継界の中に武器庫は用意している。そこには大量の術札が魔力を注がれるだけで発動する状態で置かれているのだ。空間干渉系統の魔法で場所と場所をリンクさせたなら、ミスリルと補助具の回路に魔石を設置していたなら、後は信号を送るだけだ。そしてスコールはいつも自作の無線端末を持っていなかったか?


「ああ、そういうことか」


 だとすれば消耗戦に持ち込めば勝てる。あちらは術札がある限り、対してこちらは魔力マナの量に加えて生命力オドの量だ。しかも不死身であるために死ぬほど大規模な魔法でも連発できる。

 奪い取れないほどに強固で複雑なものでぶつかり続ければいつか勝てる、そう思い、軽く腕を振った。

 どこからとも現れ、レイズの周りにプレス加工で量産されたような無骨なナイフの形をした金属片が舞う。


「スコール、お前がは何をしたいのかは知らないが、まずはそのバカげたことを終わらせてやる!」


 瞬間、白銀の流星が空に舞い上がり、意思を持つかのようにそれぞれが逃げ道を潰すように降り注ぐ。

 周到に張り巡らされた流星の雨に逃げ道はない。一度落ちた場所に次は落ちない、そんなこともなく回避は不可能。

 さらにそれぞれが個別の魔法、群として一つの魔法ではなく、多重詠唱で無数に張り巡らせているためにスティールも間に合わない。召喚、加速、移動、慣性制御、障壁、エトセトラ。一つの流星に多数の魔法を重ねがけした、レイズだからこそできる力任せな攻撃。通常の魔法士であれば一つ二つでなんとか維持できる程度だ。


「よいよなめられてんな」

「はぁ?」


 言葉の意味が分からなかったこともあるが、レイズの眼に映ったことがさらに混乱を引き起こした。魔力と神力の二重螺旋が互いに打ち消しあわずにスコールを護ったのだ。


「一応言っておくが供給源の契約が全部切れたわけじゃないからな」


 降り注ぐ流星が螺旋に弾かれて地に落ちる。

 もとはこちら側の人間ではないスコールだ、何かを使うにしても契約を通して魔力も神力も供給してもらう必要がある。自然に存在しているものを扱うだけでは必要な量を確保できていないはずなのだ。


「……なあ、実は○○でしたとかいう落ち全部ここで吐け」


 どういう攻撃なら矛盾した防御を貫けるのか、考えても答えが出ない。バカ正直に力押しでやれば跡形も消すことはできるが、聞くことがあるためそんなことはできない。

 一つわかるのはスコールの契約者は二人以上だということ、魔力と神力の二つがあるのだから。

 もしかしたらメティサーナだけという線もあるが。


「なぜ?」


 何気なく光の剣が振り上げられ、ぼとりという音で自分の腕が落ちたことにレイズは気づいた。


「…………なあ」


 振り下ろされた剣の延長線上、そこにあったレイズの肩口から腿まで赤い線が走る。


「自分が納得できるかどうかって、お前にとってその納得できる理由はなんだ」


 スコールは答えず、振り下ろした剣を真横に振るう。

 ゴトッとレイズが崩れ落ちる。両膝に深い傷を刻まれていた。


「……今は黙って終われ。これが人間風情にできる最後の」


 続きは聞こえなかった。レイズの頭の中に響いた声がかき消したからだ。


『どうなってもいい。節目の実験だ、多少狂ったところで』

『あれを呼ぶか』

『人の身にして神を騙るあやつか』

『やれ』


 変化はとても静かだった。

 起こった現象に対して音がなかった。

 夕焼け色の空が星空に変わり、見えない何かが周囲一帯のすべてを抑圧していく。

 レイズは倒れ伏し、狼谷は膝をついた。胃の中身を吐き出しそうになり、呼吸が乱れ苦しくなる。頭の奥にすさまじい痛みが走り、視界がモノクロに変わっていく。

 そして、まるでスイッチを切ったかのように抑圧が収まると、レイズは自分の魔力障壁を消し飛ばして吹き荒れた治癒魔法を感じた。


「まったく……独りよがりのクソバカだよ、君は。少しは人を信じなよ、少しは人に任せなよ、少しは……自分の意思で生きようと思えよ! なんだいあの全部終わったら死んでやるみたいなのは! 必要とされていないから消えるだって? 君を必要としているやつならたくさんいるよっ!」


 いつも大人しい? ネーベルが珍しく叫んでいた。掲げた杖は多重展開された魔法と余剰魔力で、怒りを表すように激しい閃光を散らしている。


「べーつにいーだろ、一人消えるだけで全部が本来あるべき流れに戻るんだから」

「一人でも消えたらもとには戻らないだろ! そんなに死にたいなら僕は君の敵になるよ、そのふざけた自殺願望をぶち壊してやる。僕らはそれぞれ目標を持って戦ってきたけどねえ、君の本当の目標はなんだよ!」

「あのなぁ、これ終わったら何もない退屈な日々に戻るわけ。正直言ってあんな国のシステムの下で生きるなんざまっぴらごめんだ」

「だったら君だけレイズたちの世界で生きていけばいいじゃないか!」

「……そもそもな、これだけ長い間色々とやってると生きる意味についても考えるんだわな。そーっすっとその答えは……全部が全部偶然の産物、始まり、ビッグバン仮説から考えて行っても全部偶然の産物なら生きることに意味なんざねえだろ? 生きたいやつだけ生きていればいいんだよ」

「でも」

「それに考えてみろ、人だって特定の物質がくっついて意識を持っているだけでもとは単なる物質だろ。あるのは単なる化学反応だ。ただの粒子の集合体で偶然そこに生まれただけだ」

「でも生まれてきたことには意味が」

「精神論とかそういう面倒なのは抜きで。いままで通りでいいじゃないか、勝ったほうがすべて。力づくで従わせろよ」

「…………んの、分からず屋がぁ!!」


 一瞬にして数百もの非殺傷魔法が解放される。そのすべてはスコールに向けて放たれたが、無反動砲のバックファイアのように余剰魔力が後方の三名を容赦なく吹き飛ばす。

 使い方を誤ればそのままスーサイドウェポンだ。


「バッ――」


 言葉を出せずに意識を叩き落された狼谷、魔力障壁を一撃で砕かれたレイズ、ようやく意識が戻ったかと思えば即座にまた落ちた狂犬。


「数で押す、正しい判断」


 バギリッ! と、強化ガラスをハンマーで思い切り殴ったような音が響き、青色の破片になった魔法が風のない虚空を流れて消える。


「そんな……!」

「ここで問題です、と」


 言いながらスコールが一歩踏み出してくる。

 ネーベルにはそれが、初めて会ったあの頃の、人を人として見ていないころの彼に感じられ、


「レイアに分解魔法の基礎理論を教えたのは誰でしょうか」


 逃げてはいけないのに、一歩下がってしまう。


「君だろう? だけど、君は魔法を使えない」

「だから? 分解魔法は魔法と言っているがそもそもやっていることは何だ?」


 一歩踏み出し、一歩引き下がる。


「何って、そのまんま分解だろう? 魔法や魔術なら術式そのものをバラバラにして無効化、物質なら構成するパーツか粒子単位にまで」

「そこにこの仮想限定のルールを加えると?」

「すべては魔力と神力の結合により安定した状態になり、世界を形作る根源元素に……」

「つ ま り」

「神力だけ打ち消して不安定な状態にして、崩壊させて……そういうことか!」

「ついでにもうひとつ教えておこう、物質は魔力と神力で作られ、その二つが存在の情報を示す。つー訳で構造情報そのものへ直接干渉することもできる」


 また一歩、そして一歩。


「……それって魔法っていうよりは高等技術だよね?」

「だな。まあ全部が真実だと思うなよ、嘘はどこにでも存在する可能性があるぞ」

「結局そうやって信憑性をがくっと落とすよもう……」


 これ以上逃げていいのか、互いに四メートルほどの間合いにまで縮まったこの状態で。


「なあキリヤ」

「なんだいミナ」

「いままで教えたこと、覚えてるよな」

「覚えてるよ? おかげ日常生活に必要なこといらないことほとんどできるようになったからね」

「じゃ、後は任せるとしようか」


 そして、スコールの容赦ない攻撃が放たれた。


 レイズは間違いなく殺す勢いで撃ち込まれる連撃を、はっきりしない意識で認識していた。


「やめろ、スコール……」


 立ち上がろうとしても強制的に、しかも立て続けに障壁魔法を破壊された反動で思うように体が動かせない。

 揺らぐ意識の中でさらなる声が響く。


『あれは人間なのか?』

『よもや、我らの観測が影響を与えた故に生まれた怪物では』

『やつの発生した時が読めぬ』

『気付けばそこにいたというか』

『誰かの願いが生み出した確率がああなったと?』

『潰せ、全力で』


 霞む視界にさらに二人現れたのレイズは見た。

 さすがにこの二人ならスコールを――。

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