【短編小説】シュガーモーニング&ソルティディナー
小腹が減ったのでハンバーガーでも摘もうと思ったが、マクドナルドが高くなったせいでバーガーキングで良くない?となり、バーガーキング食うならステーキで良くない?となり、結局はペッパーランチに入った。
ペッパーランチである。
ステーキ松とかいきステじゃないと言うのは仕方のない話で、緊張感的な意味合いでペッパーランチが良いのだ。
ペッパーランチには緊張感が必要だ。
ペッパーランチと言えばあの事件、と言うくらい悪名高いのでよくもまぁ潰れずに経営が続いているものだと思う。
そこら辺を含めて吉野家コピペくらいの緊張感、食うか食われるかの殺気を漲らせて肉を食うのである。
特に何も知らぬ若い女性客が来店した瞬間なぞは場が凍りつくほとで、全員が右手のナイフを硬く握りしめて成り行きを見守ったりする。
ペッパーランチとはそんな店なのだ。
今日も今日とてペッパーランチは緊張している。男たちは黙って肉を切っては口に運ぶ。
そこに若く美しい女が入ってきた。
おれたちは例によって右手のナイフを硬く握りしめた。いつでも店員の男を刺せるように構えた。
女はおれたちの緊張に気付いてか気付かずか、柔らかく微笑みながらパイスラの鞄を直しつつステーキとビールを注文した。
おれたちの殺気を掻い潜りつつオッパイを盗み見ていた店員がステーキを持って厨房から出てきた。
例の女は切った肉を口に運んでビールを傾けた。
おれたちも黙って肉を噛んでいた。
すると女がベッと吐き出すと勢いよく立ち上がった。
「おい、この店は肉と偽ってゴムを喰わせるのか?それにビールもションベンミテェじゃねぇかっ」
おれたちは肉を噛みながら、確かにゴムみたいな気がしてきたと思った。
それにビールと言う商品名のそれも、実は発泡酒である事が何となく分かっていただけに残念な気持ちになってきた。
確かにションベンみたいな薄さだ。
女は机をドンッと叩くと「おい、お前らも何か言え」と叫んだ。
目が合った男達から順番に「はい、ゴムみたいです」「ション……オシッコみたいだと思っていました」「恥ずかしながら勃起して参りました」と証言していった。
それを聞いていた店員の男はぶるぶると震えて「アレをやったのはおれじゃあないっ」と叫ぶと爆発した。
爆発した店員が降り積もり、店は静かになった。
おれはまだ食事中だったので再び着座してゴムの様な肉をションベンみたいなビールで流し込んだ。
女も座って残りの肉を食べたりビールを飲んだりしている。
「あ、文句は言うけど飲み食いするんだ」と思ったが声には出さなかった。そう言う人は確かにいるし、勝手に爆発した店員が悪い。
食事を終えた女が立ち上がり、店員の肉片を厨房の鉄板に放り投げるとパイスラに挟まった血肉を叩いて落として店を出た。
何となくの肉欲が飽和した店内はやり場のない緊張感が弛緩してきたので、やはりハンバーガーにしとけば良かったと後悔したし、なんならナッツで済ませるくらいのオシャレさが必要なのかなと思ったけれど、夕方の空が綺麗だったのでなんでもよくなった。
「さっきの女のひと、綺麗だったな」
そしておれは全裸だったので逮捕された。
晩ご飯は涙で塩っぱい味がした。




