第9話 初(はじ)めての依頼(いらい)
朝の光が、窓から静かに差し込んでいた。
悠斗はゆっくりと目を開ける。
村に来てから、もう二日ほど経っていた。
藁のベッドは少し硬いが、不思議と眠りは深かった。
「……今日も、いい天気だな」
小さく呟きながら、悠斗は外へ出る。
朝の村はとても静かだった。
畑では村人たちが働き始め、家畜の鳴き声が遠くから聞こえてくる。
異世界に来たばかりの頃よりも、今は少しだけ慣れてきた気がした。
その時だった。
「おーい、ユウト!」
後ろから声が聞こえる。
振り向くと、そこには村長のグラードが立っていた。
「おはようございます、村長」
「おう、おはよう」
グラードは腕を組みながら、少し真面目な顔になる。
「今日は少し頼みたいことがある」
「頼みですか?」
悠斗は首を傾げた。
「実はな、森の近くにゴブリンが出たらしい」
「ゴブリン……」
この世界に来てから、何度か名前は聞いた。
弱い魔物だが、群れると厄介だと聞く。
「まだ数は少ないが、畑に近づくと困る」
グラードは悠斗を見ながら言った。
「村の若い者と一緒に、様子を見てきてくれんか?」
悠斗は少しだけ考える。
(……これが、この世界での初めての仕事か)
だが、不思議と恐くはなかった。
むしろ、少しだけ胸が高鳴っている。
「わかりました」
悠斗はしっかりと頷いた。
「任せてください」
グラードは満足そうに笑った。
「頼もしいな」
そう言うと、後ろを指さす。
そこには、三人の若者が立っていた。
「こいつらが一緒に行く」
一人は槍を持った青年。
一人は弓を背負った少女。
そしてもう一人は剣を持つ大柄な男。
「俺はカイルだ」
槍の青年が言う。
「リナです」
弓の少女が軽く頭を下げる。
「ガルドだ」
大柄な男は短く言った。
悠斗も軽く頭を下げる。
「高瀬悠斗です。よろしくお願いします」
カイルが笑う。
「村長から聞いてる。あんた、なかなか強いらしいな」
悠斗は少し困ったように笑う。
「まだよく分からないです」
それは本当だった。
女神ルミナリアからもらった力。
それがどこまで通用するのか、まだ試したことはない。
ガルドが森の方を見る。
「そろそろ行くか」
村の外には、小さな森が広がっていた。
その奥に、ゴブリンがいるらしい。
悠斗は静かに息を吐く。
(……これが、異世界での最初の戦いか)
少しだけ緊張しながらも、悠斗は前を向く。
四人はゆっくりと森の中へと歩き出した。
その時――
森の奥から、不気味な声が聞こえた。
「ギギ……」
カイルが小声で言う。
「……いたな」
悠斗の異世界での初戦闘が、今始まろうとしていた。




