第6話:初(はじ)めての錬金術(れんきんじゅつ)
アルメリア村での朝は、とても静かだった。
鳥のさえずりが聞こえ、柔らかな朝日が家の窓から差し込む。
「……ん」
悠斗はゆっくり目を覚ました。
昨夜、村長の厚意で空いている小さな家を借りることができたのだ。
「思ったより、いい村だな」
ベッドから起き上がり、窓の外を見る。
村人たちはすでに働き始めていた。
畑を耕す人。
家畜の世話をする人。
小さな村だが、活気がある。
「さて……」
悠斗は自分の手を見つめた。
女神ルミエリスから与えられた能力。
錬金術。
「一度試してみたいな」
そう思った時、扉が叩かれた。
「悠斗くん、起きてるかい?」
聞き覚えのある声。
村長だった。
「はい、起きてます!」
扉を開けると、村長は少し困った顔をしていた。
「実は少し頼みがあるんだ」
「頼み?」
「村の子供が昨日、森で転んでしまってね。足を怪我しているんだ」
「薬草はあるが、治りが遅くてな」
悠斗は思わず言った。
「薬を作れればいいんですよね?」
「……作れるのかい?」
村長の目が驚きで大きくなる。
悠斗は少し笑った。
「ちょっとだけ、知識があります」
本当は女神の能力だが。
「やってみます」
村長に案内され、悠斗は村の小さな診療所へ向かった。
そこには、足に包帯を巻いた少年が座っている。
「お兄ちゃん?」
少年が不思議そうに見た。
「すぐ良くなるよ」
悠斗は優しく言う。
机の上には薬草が置かれていた。
その瞬間。
悠斗の頭の中に情報が浮かぶ。
【回復草】
軽い傷を治す薬草
「……なるほど」
分析スキルだ。
悠斗は薬草を手に取る。
そして心の中でイメージする。
「錬成」
次の瞬間。
淡い光が手の中で輝いた。
薬草がゆっくり形を変える。
やがて――
小さな瓶が現れた。
「……ポーション?」
自分でも驚く。
村長も目を丸くしていた。
「まさか……錬金術!?」
悠斗は瓶を少年に差し出す。
「飲んでみて」
少年がポーションを飲む。
すると――
「……あれ?」
少年が足を動かした。
「痛くない!」
その場にいた村人たちがざわめく。
「すごい……」
「本当に治ったぞ」
村長は悠斗を見つめた。
「君は……ただの旅人じゃないな」
悠斗は少し照れたように笑う。
「まあ、少しだけ特技があるだけです」
しかし――
この時、まだ誰も知らなかった。
この少年の錬金術が、
やがて世界を変えるほどの力になることを。




