第5話:アルメリア村(むら)
柔らかな風が頬を撫でた。
高瀬悠斗はゆっくりと目を開ける。
視界に広がったのは、青い空だった。
雲がゆっくり流れている。
「……ここは」
悠斗は体を起こした。
周囲には草原が広がり、遠くには小さな森が見える。
空気は澄んでいて、土と草の匂いがした。
「本当に異世界なんだな……」
女神ルミエリスの言葉を思い出す。
新しい身体。
錬金術の力。
そして――女神の加護。
悠斗はゆっくり立ち上がった。
その時。
遠くに煙が見える。
「……村?」
近づいてみると、そこには木で作られた家がいくつも並んでいた。
畑では農民が作業をしている。
まさに――小さな村だった。
「ここが……アルメリア村かな」
悠斗が歩いて近づくと、畑で働いていた男が気づいた。
「おや?」
男は鍬を止める。
「見ない顔だな」
悠斗は軽く頭を下げた。
「あの、旅人です」
嘘ではない。
ある意味、本当だ。
男は少し驚いたようだった。
「旅人? こんな若い子が一人でか?」
「はい」
男はしばらく考えた後、笑った。
「まあいい。村長に会った方がいいな」
「村長ですか?」
「この村の責任者だ。事情を話せば、何か助けてくれるかもしれん」
悠斗は少し安心した。
「ありがとうございます」
男に案内され、悠斗は村の中央へ向かう。
そこには、少し大きな家が建っていた。
「ここが村長の家だ」
男は扉を叩いた。
「村長! 旅人が来てます」
中から声が返る。
「入ってくれ」
扉が開き、中には白髪の老人が座っていた。
穏やかな顔をしている。
「君が旅人かな?」
悠斗は丁寧に頭を下げた。
「高瀬悠斗といいます」
老人は頷く。
「私はこの村の村長だ」
「事情を聞こう」
悠斗は少し考えた。
転生の話をしても信じてもらえないだろう。
「旅の途中で仲間とはぐれてしまって……」
半分本当、半分嘘。
村長はしばらく考えた後、ゆっくり頷いた。
「なるほど」
「この村は小さいが、困っている者を追い出すようなことはしない」
悠斗は驚いた。
「本当ですか?」
「うむ」
村長は微笑む。
「しばらくこの村で過ごすといい」
「ただし、村の手伝いくらいはしてもらうがな」
悠斗は深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
こうして――
高瀬悠斗は、
アルメリア村での生活を始めることになった。
まだ誰も知らない。
この少年が――
やがて世界を驚かせる錬金術師になることを。




