第4話:新(あたら)しい身体(からだ)と女神(めがみ)の祝福(しゅくふく)
白い空間の中で、悠斗は静かに立っていた。
目の前には、美しい女神――ルミエリス。
柔らかな金色の髪が光に溶け込むように揺れている。
「さて、悠斗。あなたを新しい世界へ送る準備ができました」
優しい声だった。
だが、その言葉に悠斗は少し驚く。
「もう行くんですか?」
「ええ。でもその前に――」
ルミエリスは微笑みながら手を軽く上げた。
その瞬間。
空間に柔らかな光が満ちる。
「あなたには新しい身体を用意しました」
光が悠斗を包む。
暖かい。
春の陽射しのような感覚だった。
やがて光が消える。
悠斗は自分の体を見下ろした。
「……え?」
手が小さい。
体も軽い。
明らかに若くなっている。
驚いて顔を上げると、女神が楽し(たの)しそうに笑っていた。
「その身体は十五歳の姿です」
「十五歳!?」
「この世界では、十五歳で成人と見なされます。ですから、ちょうど良いでしょう?」
確かに、日本での三十二歳よりはずっといい。
悠斗は苦笑した。
「まあ……若い方が助かります」
女神は満足そうに頷いた。
「それでは、この世界のことを簡単に説明しましょう」
空間に光の地図が浮かび上がる。
「この世界の名は――エーテリア」
大陸がいくつも浮かんでいる。
「人族の王国、獣人族の国、エルフの森、ドワーフの山岳都市。さまざまな種族が存在しています」
悠斗は思わず声を上げた。
「まさにファンタジー世界ですね……」
「ええ。そしてこの世界には魔物も存在します」
地図の一部が赤く光る。
「そのため、多くの人々(ひとびと)は冒険者となり、魔物を討伐したり素材を集めたりして生活しています」
悠斗は頷いた。
「なるほど……」
「そしてあなたの能力――錬金術は、この世界でも非常に貴重です」
ルミエリスは悠斗の胸に手を当てる。
柔らかな光が広がった。
「最後に、私からあなたへ祝福を授けます」
空間に神聖な光が満ちる。
「女神ルミエリスの加護――」
「ディヴァイン・プロテクション」
光が悠斗の体に吸い込まれた。
不思議な安心感が胸に広がる。
「これで、あなたは私に守られています」
「守られている……?」
「ええ。いつかまた会える日も来るでしょう」
女神は少し寂しそうに微笑んだ。
「さあ――悠斗。あなたの新しい人生を始めなさい」
その瞬間。
床に魔法陣が現れる。
光が強く輝いた。
「転移先は――」
「人族の村、アルメリア村」
世界が白く染まる。
「がんばってくださいね、悠斗」
女神の声が遠くなる。
そして――
次の瞬間。
悠斗は柔らかな草の上に倒れていた。
頬に風が触れる。
鳥の鳴き声。
青い空。
「……ここが」
悠斗はゆっくり起き上がる。
「異世界か」
こうして――
高瀬悠斗の新しい物語が始まった。




