第三話(だいさんわ) 授(さず)けられる力(ちから)
女神ルミエリスの言葉を聞いた高瀬悠斗は、少しだけ首をかしげた。
「特別な力…ですか?」
「はい。」
ルミエリスは静かにうなずく。
白い空間の中で、彼女の体は淡い光をまとっていた。
「あなたがこれから転生する世界は、剣と魔法の存在する場所です。」
「そこでは多くの人々(ひとびと)が、魔物と戦いながら生きています。」
悠斗は静かにその話を聞いていた。
確かに危険そうな世界だ。
だが、なぜか嫌な気持ちはしなかった。
むしろ、どこか遠い物語を聞いているような感覚だった。
「ですが。」
ルミエリスは優しく微笑む。
「あなたに、勇者のような使命を与えるつもりはありません。」
「え?」
悠斗は思わず声を上げた。
「勇者…じゃないんですか?」
「はい。」
女神は小さく首を振る。
「あなたは世界を救うために呼ばれたわけではありません。」
「ただ、新しい人生を歩んでもらうだけです。」
その言葉を聞いて、悠斗は少し安心した。
「それなら…良かったです。」
「俺、戦うのはあまり得意じゃないので。」
ルミエリスはくすりと笑った。
「ええ、知っています。」
「だからこそ、あなたには別の力を授けます。」
そう言うと、女神はゆっくりと手を差し出した。
その瞬間、白い空間に小さな光がいくつも現れる。
光はまるで星のように輝きながら、悠斗の周りをゆっくりと回り始めた。
「まず一つ目の力。」
ルミエリスの声が静かに響く。
「錬金術です。」
「錬金術…?」
悠斗は聞き慣れない言葉に目を瞬いた。
「素材を組み合わせ、新しい物を作り出す技術。」
「薬、道具、装備…」
「さまざまな物を生産することができます。」
それを聞いた瞬間、悠斗の目が少しだけ輝いた。
「……それ、面白そうですね。」
彼は前の世界でも、物を作ることが嫌いではなかった。
むしろ、そういう作業は好きな方だった。
ルミエリスはうなずく。
「さらに、あなたにはもう一つ力を与えます。」
「それは――」
女神が指を軽く振る。
すると、一つの光が悠斗の胸へと吸い込まれていった。
「解析の力です。」
「解析…?」
「はい。」
「あなたは、素材や道具の情報を知ることができます。」
「錬金術を使ううえで、とても役立つでしょう。」
悠斗は感心したようにうなずく。
「それは便利ですね。」
するとルミエリスは、少しだけ楽しそうに笑った。
「まだありますよ。」
「え?」
「収納の力です。」
女神の言葉と同時に、もう一つの光が悠斗の体へと入っていく。
「あなたは、物を特別な空間に収納することができます。」
「容量は――ほぼ無制限です。」
悠斗は思わず目を見開いた。
「無制限!?」
「はい。」
ルミエリスは微笑む。
「素材集めにも、旅にも役立つでしょう。」
悠斗はしばらく黙り込んだ。
そして小さく息を吐く。
「……なんだか、本当に異世界って感じですね。」
ルミエリスは優しくうなずいた。
「あなたの新しい人生が、少しでも楽しいものになるように。」
「私からの、ささやかな贈り物です。」
悠斗はゆっくりと頭を下げた。
「ありがとうございます。」
女神ルミエリスは、その様子を満足そうに見つめていた。
そして静かに言う。
「では次は――」
「あなたの新しい体を用意しましょう。」
悠斗の転生の瞬間が、ゆっくりと近づいていた。




