第二話 女神(めがみ)ルミエリス
白い空間に現れた女性は、とても人間とは思えないほど美しかった。
長く輝く銀色の髪。
透き通るような白い肌。
そして優しい光を宿した瞳。
まるで神話の中から現れた存在のようだった。
高瀬悠斗は思わず言葉を失う。
「……えっと」
何か言おうとしたが、言葉が出てこない。
女性は、そんな悠斗を見て小さく微笑んだ。
「突然のことで驚いていますね。」
その声は、とても落ち着いていて優しかった。
「あなたの名前は高瀬悠斗ですね。」
「……はい」
悠斗は反射的に答える。
「やっぱり、俺…死んだんですか?」
女性は静かにうなずいた。
「はい。あなたの魂はすでに元の世界を離れています。」
やっぱりか。
悠斗は内心で苦笑した。
あれだけ働けば、いつかこうなる気はしていた。
「そうですか……」
だが、なぜか不思議と悲しい気持ちはなかった。
むしろ、少しだけ肩の力が抜けたような感覚だった。
女性はゆっくりと歩き、悠斗の前に立つ。
「まずは自己紹介をしましょう。」
白い衣が光を受けて柔らかく揺れる。
「私の名前は――ルミエリス。」
「この世界を見守る女神の一人です。」
「……女神?」
悠斗は目を丸くした。
ゲームや漫画ならよくある話だ。
だが、実際にそんな存在が目の前に現れるとは思わなかった。
「はい。」
ルミエリスは優しく微笑む。
「あなたはこれから、新しい世界へ行くことになります。」
「新しい世界…?」
悠斗は首をかしげた。
「はい。あなたの魂は、異世界へ転生します。」
その言葉を聞いた瞬間、悠斗の頭に一つの言葉が浮かんだ。
――異世界転生。
ライトノベルや漫画でよく見る設定だ。
「えっと……それって」
「剣とか魔法とかある世界ですか?」
ルミエリスは小さく笑った。
「ええ。その通りです。」
「モンスターも存在しますし、冒険者や魔法使いもいます。」
悠斗はしばらく黙り込んだ。
普通なら、もっと驚く場面かもしれない。
だが彼はゆっくりと息を吐いた。
「……なるほど」
そして小さく笑う。
「それなら、前の人生より少しは楽しくなりそうですね。」
ルミエリスはその言葉を聞いて、少し驚いたようだった。
「怖くないのですか?」
悠斗は肩をすくめる。
「前の人生は、仕事ばかりでしたから。」
「もし新しく生きられるなら……」
「今度は、もう少し自由に生きてみたいですね。」
その言葉を聞いたルミエリスは、優しく微笑んだ。
「……そうですか。」
「それなら、あなたに少しだけ特別な力を授けましょう。」
悠斗は目を瞬いた。
「特別な力…?」
女神ルミエリスは、ゆっくりとうなずいた。
「はい。」
「あなたの新しい人生を、少しだけ楽しくするための力です。」
白い空間に、静かな光が広がっていく。
そして――
悠斗の運命を変える力が、これから与えられようとしていた。




