第12話 村(むら)への帰還(きかん)
森の中には、まだ焦げた匂いが残っていた。
倒れたゴブリンたちの体を見ながら、ガルドが大きく息を吐く。
「まさか……あんな数が出るとはな」
カイルも槍を地面に突き立てながら頷いた。
「普通の群れじゃない」
リナは少し震えながら言う。
「巣が近いのかもしれない……」
その言葉に、三人は顔を見合わせた。
もし本当に巣があるなら――
村にとって大問題になる。
悠斗は静かにその話を聞いていた。
(ゴブリンの巣……)
ゲームや物語ではよく聞く話だ。
だが、ここは現実の世界。
もし村の近くに巣があるなら、いつ襲われてもおかしくない。
カイルが言った。
「とりあえず……証拠を持って帰ろう」
そう言って、腰の袋から短刀を取り出す。
そして倒れたゴブリンの耳を切り取った。
悠斗は少し驚く。
「それは……?」
リナが説明する。
「魔物討伐の証明だよ」
「耳や角を持ち帰れば、数が分かるから」
なるほど、と悠斗は頷いた。
(この世界のルールか)
カイルは作業を終えると立ち上がった。
「今日はもう戻ろう」
「これ以上森の奥に行くのは危険だ」
全員が同意した。
帰り道、リナが悠斗の隣に並ぶ。
「ねえ、ユウト」
「さっきの火……すごかった」
悠斗は苦笑する。
「たまたまですよ」
だが、リナは首を振った。
「違うよ」
「錬金術って、普通はそんな簡単に使えないんだよ」
「しかも……材料を拾っただけで作るなんて」
悠斗は少し困った。
説明できない。
なぜなら――
それは女神から授かった特別な力だからだ。
その時。
前を歩いていたカイルが振り返る。
「ユウト」
「お前、村長にその力を見せた方がいい」
「え?」
悠斗は驚く。
ガルドも頷いた。
「そうだな」
「この村には錬金術師がいない」
「もし本当なら……村にとって大きな助けになる」
悠斗は少し考えた。
(目立ちすぎるのは危険かもしれない)
だが――
この村には助けてもらっている。
住む場所も。
食べ物も。
少しの沈黙の後、悠斗は答えた。
「……分かりました」
「村長に話してみます」
やがて、木々(きぎ)の間から村の柵が見えてきた。
アルメリア村だ。
村人たちは彼らの姿を見ると驚いた。
「おい!」
「無事だったのか!」
カイルが袋を掲げる。
中にはゴブリンの耳。
村人たちはざわめいた。
「ゴブリン……?」
「こんな数を……?」
その時。
カイルが悠斗の肩を軽く叩く。
そして言った。
「しかも――」
「こいつのおかげでな」
一斉に村人の視線が悠斗へ向けられた。
悠斗は少し照れながら頭をかく。
だがこの出来事が――
後にアルメリア村の運命を変えることになるとは、
まだ誰も知らなかった。




