第10話 ゴブリンとの初戦(しょせん)
森の中は、村の外よりもずっと静かだった。
木々(きぎ)の間から差し込む光が、地面にまだらな影を作っている。
悠斗たちは慎重に歩いていた。
先頭を歩くのは槍を持つカイル。
その後ろに悠斗。
さらに弓のリナと、大柄なガルドが続く。
突然、カイルが手を上げた。
「止まれ」
全員が足を止める。
カイルは前方の茂みを指さした。
「……あそこだ」
悠斗は目を細めて見る。
すると、そこには小さな影が動いていた。
緑色の肌。
曲がった背中。
赤い目。
「……ゴブリン」
リナが小声で呟く。
ゴブリンは三匹いた。
石のナイフのようなものを持ち、地面を嗅ぐように歩いている。
カイルが低い声で言う。
「三匹だな」
ガルドが剣を握る。
「俺が前に出る」
だが、その時。
悠斗の頭の中で、声が響いた。
――分析スキルを起動しますか?
悠斗は一瞬驚いた。
(……これが、女神ルミナリア様がくれたスキル)
心の中で答える。
(起動)
その瞬間、視界に文字が浮かび上がった。
種族:ゴブリン
危険度:低
特徴:群れる習性
弱点:頭部・火
悠斗は少し驚いた。
(すごい……こんなことまで分かるのか)
その時、一匹のゴブリンがこちらに気づいた。
「ギギッ!!」
叫び声を上げる。
残りの二匹も振り向いた。
「見つかった!」
カイルが叫ぶ。
「行くぞ!!」
ガルドが前に飛び出す。
ゴブリンの一匹がナイフを振り上げた。
だが――
「はあっ!」
ガルドの剣が振り下ろされる。
ゴブリンは悲鳴を上げて倒れた。
残りの二匹が怒って突っ込んでくる。
「ユウト!」
カイルが叫んだ。
悠斗は深く息を吸う。
(落ち着け……)
弱点は頭部。
そう表示されていた。
悠斗は近くに落ちていた木の枝を拾う。
そして――
ゴブリンが飛びかかってきた瞬間。
「っ!」
体が自然に動いた。
枝を振り上げる。
ゴッ!!
鈍い音が響いた。
枝がゴブリンの頭に直撃する。
「ギャッ!」
ゴブリンはそのまま地面に倒れた。
カイルが驚いた声を上げる。
「今の動き……素人じゃないぞ!?」
最後の一匹は逃げようとした。
だが――
ヒュッ!
リナの矢が飛ぶ。
矢は正確にゴブリンの背中へ突き刺さった。
「ギギッ……」
ゴブリンはそのまま倒れ、動かなくなった。
森の中に静けさが戻る。
カイルが息を吐いた。
「終わったな」
ガルドは悠斗を見る。
「今の一撃、見事だった」
悠斗は少し困ったように笑う。
「たまたまです」
だが心の中では思っていた。
(分析スキル……本当にすごい)
もしこれがなければ、弱点も分からなかっただろう。
カイルが周囲を見回す。
「だが……」
少し険しい顔になる。
「三匹だけってのは、妙だな」
「え?」
悠斗が聞き返す。
カイルは森の奥を見た。
「普通、ゴブリンは群れる」
つまり――
もっといる可能性が高い。
その時。
森の奥から、複数の足音が聞こえた。
ガサガサ……
リナの顔が青くなる。
「……うそ」
茂みの奥から、次々(つぎつぎ)と姿を現す影。
一匹……二匹……
そして――
十匹以上。
カイルが歯を食いしばる。
「……ゴブリンの群れだ」
悠斗たちの前に、次の戦いが迫っていた。




