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#1『残された者達 前編』

※注意※


この物語は、[愛の形、心の形]の続編となります。

あらかじめそちらを読了した上で読んで頂くことを推奨します。

また、[愛の形、孤独の形]Prologueから分岐する物語の為、そちらを読む事を推奨します。

〈ペグマタイトタワー、最上階〉



「そんで......協力して欲しい事ってのは?」


「ふむ。説明するよりも、実際に見てもらった方が早いだろう。着いて来るといい。」


エリナは暁を連れ、エレベーターで1階へ降りる。街全体を見下ろせる建物の最上階から、地上まで下りるまでの間、2人はエレベーターの中で気まずい時間を過ごした。

1階へ降りると、建物を出て、エリナは自身の車へ乗り込む。暁が後部座席へ座ると、エリナはとある場所へと車を走らせた。2人が向かったのは、今やもぬけの殻となった生物研究所だった。数週間前、事件が起きたあの日から、研究所とその近隣は立ち入り禁止になり、大きな柵が立てられていた。


「その...すまない、君にしか頼めなかったんだ。」


「気にするな、起きちまった事だ、仕方ねぇ。」


2人が車で柵の前まで来ると、入り口の前に居た警備員が近づいてきた。警備員は運転席の隣に立ち、エリナが窓を開けると、警備員は口を開く。


「エリナさん!?何故ここに......」


「安心しろ、護衛は同行している。」


「しかし.....ここは危険です。最近では、妙なゴロツキも見かけますし.....」


「ゴロツキ?」


「はい、近頃、本能の街の方から、ガラの悪い武器を持った人達がこちらまでやってくる事がありまして。」


「ふむ.....あの場所に関しては私も知っている。いくつか対処法を考えてはみたが、未だ保留になっているのが現実だ。」


「ですので、どうかお引き取りを...」


「いや、むしろこれ以上悪化させないためにも、行かせてくれ。」


エリナは警備員と目を合わせる。お互い睨み合った後、挫けたのは警備員の方だった。


「はぁ......忠告はしましたよ。」


そう言うと警備員は柵にかけてあった錠を解き、柵の入り口を開けた。


「すぐ戻ってきてくださいねー!!」


柵の中へ走り出した車の後方から微かに声がする。エリナは窓から手を振ると、再びハンドルを握り窓を閉めた。


「そういやあんた、仮にもこの街の主なんだろ?護衛は連れて来なくて良かったのか?」


「それなら問題ない。というより、今君の横に背筋を伸ばして座っているよ。」


「ん?」


暁が隣に視線を移すと、そこにはタワーで茶や菓子を手際良く机に並べていた、エリナの秘書の姿があった。いつの間に乗っていたのだろうか。


「うおっ!?いつの間に......あんた、戦えんのか?」


「護身の術は身に着けておりますので、ご心配なく。」


秘書は無機質な声で、淡々と述べる。


「そうか....だが、一人じゃ心許無いんじゃないか?」


エリナは後方を確認するついでに、暁と目を合わせる。


「まさか......」


そのまさかだった。暁がふと窓の外をみると、そこは既に廃墟となった研究所の前だった。



〈生物研究所跡、???〉



名前にそぐわず命の気配が皆無に等しいこの場所で、唯一響く鼓動。それは2つのカプセルの中、青く光る液体に浮かぶ影。その1つが目を覚ます。それはカプセル越しに室内を見回す。まだ体に力が入らないのか、カプセルの外へ出られずに居た。


もう一つ、目覚める影。それはカプセルに触れる。初めて触れる、液体以外のもの。それは微かに出来た気泡を吸い込む。それの身体が、呼吸を始める。それは空気を体内に入れようと、カプセルの中でもがいて回る。それの手はカプセルの壁に触れる。すると、手の中から黒い結晶が現れ、それが爆ぜると共に、カプセルが木っ端微塵になる。零れだす液体。それはしばらくむせた後、精一杯呼吸する。

もう一人がそれを眺める。彼女はそれでも、カプセルから出る事は無い。だからと言って、空気に触れ悶える事も無い。外に出た彼女がもう一人に気付く。だが彼女は、結晶で彼女のカプセルを割る事はしなかった。2人は目を合わせ、暫く互いを見つめ合っていた。



〈生物研究所跡前〉



車から降りた3人は、建物を見上げる。かつての繁栄は、見る影も無く。


「そんで...ここに何の用が?」


「カイヤの研究資料を回収したい。」


「なっ」


暁はその言葉を想定していなかった訳ではないが、それでも多少動揺していた。


「あんた、まさか悪用する気じゃねぇだろうな」


「そんな事はしないさ。ただ野晒しにしておくよりは、悪意を持った人間の手に渡らない場所に保管しておいた方が良かろう。もし私や私の周りの人間が、そのような事態を起こしたのなら、彼に私を撃つように言っている。」


「はぁ...」


「さぁ、ここいらはゴロツキがうろついていると、さっきの警備員が言っていた。急ぐに越した事は無いだろう。」


エリナ達3人は、廃墟となった建物に足を踏み入れた。



〈生物研究所、???〉



「ヒッヒッヒ、嬢ちゃん、ここで何をしてんだい?駄目じゃないか、こんな所に居ちゃ......あ?」


見つめ合う2人の後方、部屋の入り口に、ならず者が1人。


「お前、なんで服を着てないんだ?俺を誘っ......」


カプセルの外の人造人間が、ならず者を見つめる、ならず者の持ってる刃物に目を向けると、目の色を変え、勢い良くならず者へ向かって行った。ならず者は為すすべなく、飛び掛かって来た人造人間に頭の前で結晶を弾かれ倒れた。人造人間はカプセルの方へ振り替えると、笑みを浮かべた。だが、カプセルの中の人造人間は、その真逆の表情を浮かべていた。


「この......よくも...!!」


倒れたならず者が、傷だらけの頭を片手で覆い、もう片方の手に持つ刃物を人造人間に突き立てようとしていた。


この刹那の時間、カプセルの中の彼女にとっては、とても長く思えた。彼女は目を見開き、刃物をしっかりと見つめる。カプセルの外に居る彼女を失うまいと思った頃には、既に身体はカプセルの外を飛び出していた。ならず者はまだ、カプセルの中に居たもう一人に気付いていない。彼女は机の上にあったペンを握ると、目にも留まらぬ速さでならず者の元へ向かい、刃物を持つ手をペンで貫いてみせた。そのままもう一人をならず者から遠ざけると、ならず者の首を絞め、顔を隠す手の隙間から見える目に向かい......


その手を掴むもう一人、ならず者の首を絞める彼女は鬼の形相で振り向くと、ペンを持つ手の力を抜いた。ペンは彼女の手をすり抜けると、そのまま地面に落ちた。だがもう片方の手は力が入ったままだったのか、首を絞められたならず者はそのまま白目を向いて意識を失った。



〈生物研究所跡、通常棟〉



3人は1つ1つ部屋を探索する。暁も建物の中へは入った事が無く、カイヤの籠っていた研究室の場所など知る由もなかった。だが、棚に並べられたファイルの中に、気になる項目を見つける。


『加賀知カイヤの助手、ルチル』


通りでルチルが堂々と研究所に出入り出来た訳だ。その題名の書類の中には、ルチルの嘘のプロフィールがぎっしりと綴られていた。


「カイヤのやつ、何食ったらこんなの思いつくんだ?相変わらずあいつの考える事は分からん。」


暁はその書類を棚へ戻す。


「.....ニュースや新聞では、この研究所に居た奴らは皆、死体も見つかって無いらしい。カイヤは、本当に死んじまったのか?」


暁は同じ部屋の、壁にかかったコルクボードに目をやる。そこには建物にある、様々な部屋の鍵がかかっていた。


「一応持ってくか。」


暁はコルクボードに打ってある釘にかかった鍵を取り、コートのポケットに入れた後、部屋を後にした。


「何か見つけたか?」


隣の部屋を探索していた2人が出てきた。暁は2人に鍵を見せた後、3人で2階へと上がった。



〈生物研究所、通常棟、2階〉



「さすがに部屋が多いな、手分けしよう。」


そう言うとエリナ達は、それぞれ別の部屋を探索する事にした。


暁が入った部屋の中は、植物が植えられた長いプランターが縦に重なり、それが何列か規則正しく並んでいた。だがそれらに光を与えていたであろう光源は、完全に光を失い、それでも植物の一部は力強く茎や葉を伸ばしていた。暁が奥へ進むと、そこには書類が散らかった大きな机があった。暁はその書類に1つ1つ目を通す。目的のものは得られなかったが、それらを机に整えて置き、部屋の隅へ向かうと、1つの扉を見つけた。暁はその扉を開けその中へ入ると、そこは事務室の様だった。

暁はデスクの引き出しを開ける。その中にある書類の中に、気になるものを見つけた。


『カイヤさんの功績』


そこにはカイヤをただひたすらに褒め称える内容のものが、何十ページにも綴られていた。どのページも同じような内容ばかりだったので、暁は途中から読み飛ばしていたが、最後のページだけ破れたものが挟まっていた。そこには、カイヤが倫理的にも、自然の法則にも反した事を行っていたという内容が綴られていた。どうやらこれを書いた研究者は、カイヤが人造人間を作っていた事を、何らかの方法で知り、こうして記録に残していたらしい。だが、それを周りに知らせなかったのは、どうしてだろうか。

暁がそのページを読み進めていると、気になるものを見つけた。


「この建物には、特別棟と言うものがあり、この階から繋がる渡り廊下から行ける。その先に、カイヤの研究室がある」


暁はその書類をしまい、そっと引き出しにしまった。だが、最後のページだけは、小さく折り胸ポケットにしまう事にした。


暁がその部屋を後にした瞬間、2人の居る方から大きな音がした。暁は小さい段差に目をやりながら、2人の元へと駆けた。


   To be continued.

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