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格差婚

作者: アヤメ

格差婚をした女性が夫のモラハラに遭い、悩みながらも自分の人生を立て直す物語。

「どうして、結婚を焦ってしまったのだろう」とユリは後悔していた。


ユリの育った家庭は、夫婦喧嘩が絶えなかったので、「結婚なんかしなくてもいい」とずっと思っていた。

「女性がひとりで生きていくには、専門分野があった方がいい」と必死で勉強し、親が望む国立大に入った。

いわゆる就職氷河期だったこともあり、大学院に行き、専門分野を究ることにした。


若いころは、就職難で自分が思うような仕事はすぐにはできなかったが、それでも、地道に仕事を続けてきたおかげで、自分が望めば仕事は長く続けられそうだ。


今の時代、70を過ぎても働く高齢者も多いと聞く。

「年金支給年齢が引き上げられたから」ということも無関係ではなさそうだ。

「人や社会とのつながりは大事だし、認知症にもなりたくない、年をとっても若々しくありたい」と願うユリは、誰かに依存する生き方を嫌っていた。


「私もいつか自分勝手な夫と別れて、自由にのびのびと生きたい」と思っていた。


あんなに気が進まなかった結婚も、30近くになり、次々と友だちがパートナーを見つけていく中で、いつでも気軽に集まれる仲間も目に見えて減っていった。

「楽しく自由な時期はとても短いんだな」とユリは寂しく感じた。


30を過ぎると、既婚男性に声をかけられることも多く、それがうっとうしくもあり、「私に声をかけてくるのはこんな人たちしかいないのか」とうんざりした。

職場のおばさんたちも、「早く相手を見付けなさい」と頻繁に言ってきて、安心できる居場所がないように感じた。

めんどうなので、架空のパートナーの話をしても、おばさんたちがしつこいので、「嘘だとばれてしまうのではないか?」と冷や冷やしてとても疲れてしまった。


結婚してよかったことと言えば、まわりのしつこい人たちに「結婚しろ」と言われなくなったことくらいだ。

あんなに「早く相手を見付けろ」と言っていた周りの人たちは、私が院卒で、相手が専門学校卒だと知ると、「なんであの人にしたの?」とまた、質問攻めにした。

私の親も激怒して、「苦労して育てたのに、大学院まで行かせてやったのに」と、ひどく不満を言われた。

祝福されない結婚は幸せになれない。


でも、そのころ、35歳だった私は、「もう私が望むような出会いはない」と感じていた。

学生時代は、優秀で優しい男子学生がたくさんいたので、数は減っても今後もそれが続くと思っていた。

私は両親の喧嘩を子どものころからずっと見ていたので、人を信じられなかった。

今思えば、親切な人や優しい人さえも疑ってしまう思考回路だった。


40後半になって気が付いたが、もっと人を信じることができたら、幸せになれたんだろう。

格差婚と言われても、当時は、「絶対に幸せになろう」と誓った。

しかし、夫は思い通りにいかないと、子どものように不機嫌になり、大声で怒鳴ってきた。

子どもなら仕方がないが、「大人の不機嫌はみっともない」とほとほと嫌気がさした。


私だけならまだいいが、活発な息子は思い通りにならなかったので、夫は息子にもよく怒鳴っていた。


学歴だけのせいではないかもしれないが、夫とは話題も価値観も全く合わなかった。

成長した息子の方がよほど話が通じて、夫だけがいつまでも「子どもおじさん」のようだった。


息子は、スポーツを続けるために、高校から寮に入っている。

憎らしい夫が家に残り、大事な息子が遠くて行ってしまい、それが腹立たしく、悲しい。

夫は普段は私を無視するが困った時だけ、自分の要求をつっけんどんに伝えてくる。


私に進路に関わるなといいつつ、結局、息子の教育費の支払いに苦労しているので、私に支払って欲しいとのことだった。

夫は憎いが息子のためなので承諾したが、息子が高校を卒業したら、別居しようと思っている。

本当はすぐにでも別居、離婚したいが、子どもが成人するまでは待とうと思う。

それは、モラハラ夫が子どもに執着するとめんどうだからだ。

親権でもめると、子どもにも迷惑がかかる。

これは大人の問題なので、子どもを巻き込みたくない。


格差婚でもうまくいっている夫婦もいると思う。

でも、私には無理だ。

過去に友だちに教えてもらった、ニンジンに嫌いな人の名前を彫って、それを食べる呪いを試してみたが、夫が弱る様子はなかった。

そもそも、そんなものは、気休めでしかないし、科学的でないことは信じない。

そんな呪いをこそこそしている私の方がどうにかなってしまう、とユリは冷静になった。


今は、遠くにいる息子のために仕事を頑張りたい。

たくさん稼いで、自分の城を買い、夫と縁を切り、自由に暮らしたい。

私が見る目がなかったせいで、息子には迷惑をかけてしまった。

その償いは、息子が困った時には支援することで、認めてもらおうと思う。


息子が小さいころは、夫を変えられないことに絶望したが、必死で過ごしているうちに、息子もすっかり大きくなった。

私と息子が自由になるまで、あと数年だ。

もう十分頑張ってきた、わがままな夫につきあうのは、もうおしまい。

私は男運がないので、もう結婚も恋愛もこりごりだ。

仲の良い女友だちえいればそれでいい。

自分を卑下するのももう、おしまい。

そう思ったら、明るい未来が開けているような気がした。






モラハラや夫婦関係に悩んでいる方が勇気づけられたら嬉しいです。

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