52…過 現状 去
「あ、あのー。オレ帰って良いですか」
「植野お前は明日、五回殺すから今日は休んでおけ」
よし逃げるか。5回殺すってなんだ?リスキルか?とりあえず逃げるぞ。
「とりあえず、シャワー浴びてご飯にしたら」
「そうだな」まぁ逃げるのは今日の夜でいっか。今は1秒でも早く飯が食いたい
シャワーを浴びご飯食べた。腹はペコペコだったがあまり食えなかった。胃袋が縮んでるのかな。
「なぁ、ミナト今聞いちゃうけど5回殺すってなに?」
「立花さんの『私の絶対領域』って能力で5回殺すらしいけど詳しいことは知らないわ」
あ〜なるほど確かに5回殺せるな…でもまぁオレのまま死んで生き返ることができるのか…よし逃げよう
生き返れるからって別に死にたくない。
「一応言っておくけど、この前のスパイの件で警備は強化されてるから逃げられないわよ」
「やだなぁ、逃げるわけないじゃん」
よーし、死ぬか。試して捕まったら多分100回ぐらい殺されるしな
「そう言えばだけど、ここで殺されるのは理解できた。納得はしてないけど…。でもそしたらなんでメイドさんの罪にオレ巻き込まれてるの?」
「東山さんだけだとすぐに終わるから足かせにツバサくんを連れてくのよ。」
「なぁ」
「なに?」
「オレなろう系主人公だよな?無双してなくね?」
「答えにくいし答えたくないわ。でももう少ししたら無双できるわよ」
一方その頃
「マリから見て植野はどうだ?」少し悩んだあと思ったことをそのまま伝える。
「植野…様は生きることに必死なように見えました。何としてでも生き延びるという気概をかんじましたね。」
「そうか…記憶なくし能力まで失った上で植野 大翔として復活しただけのことはあるな」
「どういうことですか?」
「植野 大翔は死んでんだよ。」
「死んだ人が同一個体として生き返ったってことですか?ありえません。死人を生き返らせる能力なんて神級の能力でもありません、」
「植野は俺やお前の母よりも圧倒的に強かった。記憶や能力を犠牲に復活する能力を持っていてもおかしくない。それに…」
言葉をとめる。それになんなのか気にはなったがわざわざ聞く必要は無い。今問題なのは高橋より強かったことだ。このまま行くと強くなられギフト付与狙いで殺される可能性がある。
「高橋様の脅威になりうるなら今のうちに殺した方がいいのではないですか?」無難な判断だ。後から後悔しても遅いから倒せるうちにって考えだな。
「そうなんだが…、殺せないんだ。」殺せない、最初に思いつくのは不死身、他は殺したら呪われる系と何か恩がある。それくらいか
「殺せないとはどういうことですか」
「植野が死ぬと死神が生き返らせるんだ。」
「言っている意味がわかりません。そんな存在いるわけないですし、存在したとしたら植野様はどうして昨年死んだとされていたのですか?」
「分からない…ただ、植野は死んだんだ。そしてその時死神は生き返らせなかった。」
「わけが分かりません。死神が生き返らせなかったことも、植野様が生きていることも」
「詳しいことは知らん、もしかしたら今の話は嘘で死神が生き返らせただけかもしれないがな。」
高橋が真剣な表情で言っているがマリはこの時死神なんて言う胡散臭いものは一切信じていなかった。でも何かはあると考えていた。
「死神の話しが本当なら明日植野様を殺して平気なのですか?」
「それは平気だ。マリも知ってると思うが植野が私の絶対領域から出てきた時に死神の気配はなかったからな。おそらく本当に死ななければでてこない。」
マリは少しガッカリした。本当はその死神という嘘のような存在と人が生き返る瞬間を自分の目で見たかったからだ。
「ひとつお願いがあります…」
その日の夜
ちょっと外を見に行くか…
外にでると城壁のようなもので全体が囲まれていた。来た時にこんなのあったっけ?出入口には最低2人は見張りがいると。オレが鑑定しても不可か…逃げるのは諦めるか。
「植野様、夜分遅くに出かけられますと風邪をひいてしまいますよ。」執事さんか…
「突然だけど執事さんも強いの?」
少し悩んだ後に答える。
「御屋敷の中なら二番目だと自負しております」
二番目とか何レベだよ。1番高橋さん、2番メイドさんだと思ってた。
「マジですか、ちなみに1番は高橋さんですか?」
「そうです。高橋様が本気で能力をお使いになると半日もあればこの県の人は皆殺しにできるでしょう。」
「ひょっとして執事さんもできる?」
「私とメイドのマリも可能です。」
なるほど最初の相手を選ぶ時いちばん弱かったのがパッとみゴリマッチョでいちばん強そうな剛力だったのか...詰んでたやん
「執事さんはどうやって強くなったんですか?オレも強くなりたいんですよ」
少し黙った後に答える。
「たくさん殺しました。来る日も来る日もひたすら殺しました。」
「人を殺すのに抵抗はないんですか?」
やべ、質問ミスった。これはさすがにデリカシーがなかった。
「最初だけです。今では落ち葉掃きや部屋の掃除などと同じ感覚です。ですが命を軽んじている訳ではありませんよ。」
抵抗なく人は殺せるけど命を重く考えていると…おそらくオレは逆だ。人を殺すことに抵抗はあるが命は軽く見てる。アリやミミズなどの生き物を自らの意思で殺すことに抵抗はあるが殺してしまったらしまったで別に気にならないそんな感じだ、
命を軽く見てるのに殺しに抵抗があるのは自分を守るためなんだろうな。人を殺した罪悪感や周りからの視線を想像して抵抗があるんだろう。まぁ実際にはどちらもないのだけど
「どうして命を重く考えられんですか?」
驚いた表情をしているが当たり前だ。頭で考えてた続きから話してしまった。
「大切な人の命を想像してみてください。母、父、親友、どれが死んでも悲しいと感じるはずです。植野様がこの先殺す人も大切な人がいて誰かの大切な人なんです。それをわかった上で殺してください。」
「大切な人ですか…。ありがとうございました。」
大切な人か…確かに命は重いかもな。いや待て当たり前か。でも今まで殺した人にもいたんだろうな。はぁ憂鬱な気分だ。
とりあえず部屋に戻るか




