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ラブホテルの真相と悠久図書館

 ミラを家の近くまで送った後、宿へと戻ると丁度片付けを終えたらしいアンナが厨房からエプロンを脱いで現れる。



「お疲れ」

「ありがと。ミラ、返しちゃったんだ」

「夜も更けてきたしな」

「ふーん?」



 ニヤニヤしながらゆっくりとこちらに近づいてくる。



「それならアタシが相手したげようか?」



 そう言って俺の首の後ろに両手を回して額を合わせてくるアンナ。



 少し動けばキスができそうな距離に、少し動揺するがその胸元を見て平静を取り戻す。



 ……リリアリアやミラの圧勝か



 無い、とまでは言わないが、2人に比べるとその膨らみは控えめなものだった。



 もちろん、その事を除いても十分に魅力的ではあるのだが…



「それも魅力的だが、それよりも優先したいことがお互いにある、そうだろう?」

「そうね」



 アンナは回していた手を解き、俺から離れると二階へと続く階段の方へと歩いていく。



 俺もその後を追って歩き出そうとするが、ふとアンナが立ち止まってこちらを振り返り、



「ミラには負けるけど、それ以外は割と自信があるんだからな」



 アンナは心を読むスキルを持っているのだろうか。



 ♢♢♢♢♢



 二階にある俺の借りた部屋へとあがり、今度も俺が椅子、アンナがベットとミラの時のような形で腰を下ろす。



 するとアンナがこちらを見てニヤリと笑いながら、



「見る人が見たら、これからアタシが襲われるみたいだよな」

「お望みのままにしてやろうか」

「冗談だよ。今回は話に来たんだからね」



 次回があると言わんばかりの言い方が引っかかるが、その事ばかりを気にしていても話は進まない。



「ただ、アタシが言うのもなんだけど、ここ防音性ないぜ?」

「問題ない。防音はしてあるからな」

「きゃぁぁぁあああ!襲われるーー!」



 突然アンナが大声で叫ぶ。

 もちろん、俺は襲う気配すら見せていない。



「…ふーん、今夜ここには何組か泊まってるんだけど、全く気にした様子もないね」

「お前が嫌われてるんじゃないか?」

「ジョーダン、むしろ好かれすぎてて常連客ばっかだっての」



 そんなやりとりをしている最中も、他の部屋から誰かが訪ねてくる様子もなく、一応はアンナは信じてくれる。



「変わったスキル持ってんのね」

「まぁな」

「まぁいっか。アンタ転生してきたんでしょ?」



 誰も聞いていないと知るや否や、いきなり本題に入ってくる。

 話が進みやすくて助かりはするが…



「あぁ。アンナもそうなんだろ」

「まぁねー」



 アンナは脚をパタパタさせながらつまらなさそうに、しかしその目はしっかりと輝かせながら答える。



「『ラブホテル』なんて名前の宿にしてたらアタシと同じように転生してきた人が気になってこないかなーって思ってたけど」

「それであの酷い名前だったのか」

「酔っ払ってその使い方をする人も中に入るんだって」



 イヒヒヒと笑いながらポニーテールを揺らすアンナ。



「アンナって事は、日本人なんだな」

「そうだよ。アンタは?トモギ、なんて名前どの国にも居なさそうだけど」

「俺も日本人だ。この名前は転生する時に女神がくれたんだ」

「女神?なにそれ?」

「ん?」



 どうやら話を聞くと、俺の時とは違いアンナは女神のところを通る事なくこの世界に産まれたらしい。



 産まれた、と言う通りアンナにはこの世界にも両親がいたそうだ。



「死んだわけじゃないけどね。色々あって、縁切ってんの」



 本人が話したくないのであれば無理に聞く必要もないだろう。



「アンナって言う前世の名前を名乗ってこの街に来たのはいいけど、世間知らずのアタシはどこにも相手にされなくてね…」



 その時のことを思い出しながら話しているのか、アンナの表情はいつもの強気な女性と言うより、少し儚い…似合わないだろうが、どこかの令嬢のような雰囲気をまとっている。



…まぁ令嬢なんて見た事ないが。



 今更だが、時折アンナの話し方が変わっているのも気になっていた。



「そんな時にアタシの世話をやいてくれたのがミラだったってわけ。あの子超お人好しだからね」

「そうだな…」



 ミラの話が出てきて思わず俺も口元を緩ませる。



「だからアンタ、ミラのこと泣かせたら許さないからな」

「勿論だ」

「わかってれば、いいんだよ…」



 少し寂しそうにアンナが言う。



 それにしても、ミラと言いアンナと言い、初対面の人間を信用しすぎだと思ってしまう。



 転生初日にここまで人に恵まれるとは。



「ミラがアンタを信用してる間は、アタシもアンタを信用してるから」



 そう言ってベッドから立ち上がり、部屋の扉へと向かうアンナ。



「おやすみ」



 優しげに笑いかけそう言ってアンナは部屋を出る。



 …お前も大概、お人好しだな。



 類は友を呼ぶ、と言うことわざの事を思い出していた。



 ♢♢♦︎♢♢



 数時間ぶりに1人になった俺は、ベットに寝っ転がり今日あったことを思い返していた。



「前世では考えられない濃さだったな…」



 まだ転生して1日目。正確に言えば24時間も経っていない。



 朝起きてフラフラと森にたどり着き、食事をした後2度寝をしてリリアリアの元へ行き、戻って歩いてたら盗賊に襲われ、その盗賊を捕らえて街へ行けばギルドで質問ぜめにされ、最後には同じ転生者に会った。



 そしてなより…



 …ミラに出会えたのはデカイな。色々な意味を含めて。



 今日1番の収穫だと自分では思っていた。



 そして、今日あった出来事を思い返す過程で思い出していた事を実行するべく、意識をそれに集中させる。



 …さて、『悠久図書館』の精度を改めて確かめさせてもらうか。



 数ある中で、1番不明点の多いこのスキル。自分の持つスキルは沢山あるが、1番使用頻度が高く1番謎なのはこのスキルだろう。



 もっとも、まだ全体の1割もスキルを使っていないが。



 …そう言えば、魔術師と魔法師、2つの違いは何なんだろうか…



 今日のミラとの会話で出てきたこの2つの職業。その違いはイマイチわかっていない。



「いや、それよりあっちで調べるか」



 防音の魔法が展開されているのをいいことに、俺はなにも気にする事なく独り言を言う。



『悠久図書館』のスキルを使う際、脳内でキーワードを入れて検索するのだが、今回はここに"職業"といれる。



『職業』ーー15歳で迎える成人の儀の後に天から与えられるもの。その者が持つ適正に合わせて選ばれることが多く、15歳までに剣技を鍛錬していれば剣士系が、鍛治をしていれば鍛治職が、魔法の勉強をしていれば魔法及び魔術系が選ばれやすくなる。

 また、下位職・中位職・上位職・最上位職・特異職があり、特異職には"王"や"教皇"などがある。特異職は任命されて始めて選ばれる事ができ、その力は絶大である。



 …なるほど。なら次は、職業の種類について…



『アクセスエラー

 アクセス権限レベルを満たしていません。』



「は?」



 まさかエラーメッセージが出るとは思わず間の抜けた声が出てしまう。



「ならこれは…?」



『魔法師』ーー魔法師系の上位職。魔法を操ることに長けており、その能力は個人に依存する。


『魔術師』ーー魔術師系の上位職。魔法を分析し、魔法理論の構築などに長けている。魔法を使える者も少なくはないがその力は魔法使いに劣る場合が多い。


 関連項目 『魔法術使い』『魔法使い』『魔術使い』『魔導師』『賢者』



 関連項目が出たのは初めてだったため、そのままそれぞれについても調べる。



 まとめると、魔法術使いが1番下位の職業で学ぶ内容と適正でそれぞれ魔法使いと魔術使いにわかれ、更に個人の能力によりその職業の頭に『風の〜』などが入るようだった。


「魔法使い系は実践向きで、魔術使い系は研究職。その考え方が1番ハマるだろう」



 更にそのどちらも極めた魔法関連の職の最上位が魔導師と言う…ん?



 そこではじめて俺は違和感に気づく。



 はじめに賢者について調べた時、間違いなくそこには魔法関連職の最上位と書いてあった。だが、今ここに書いてあるのは魔導師こそ最上位だと。



「…おかしい…」



 そう思い賢者について改めて調べる。すると、その内容は以前とは変わっておりーー



『賢者』ーー魔法関連職の最上位()()()()()1()()。現在この世界で確認されている賢者はおらず、書記にのみ残る伝説上の職業の1つとされている。



「何故だ……?情報が増えた?」



 理由はわからない。だが、確かに以前見たものとは変わっていた。それは間違いなく。



「どう言うことだ…このスキル…」



 そこでふと思い至った俺は、検索するキーワードにこういれる。『悠久図書館』



『悠久図書館』ーー世界の全てが記された書物が集まる次元の狭間にある図書館。ここに置かれた蔵書は一切朽ちることなく、時間の影響を受けることなく司書によって管理されている。



「司書…?」



 そしてそもそもスキルとしての『悠久図書館』というより、実際に存在する場所として出てきているように思える。



『スキル悠久図書館』



『アクセスエラー

 アクセス権限レベルを満たしていません』



「またこれか…」



 思わずため息が出る。

 だが、権限レベルという事は、レベルを満たす条件も存在するのだろう。



 そしてもうひとつ気になった『司書』という言葉。これも調べてみるが一般的なものしか出ず、『悠久図書館の司書』と調べるとエラーが出てしまった。



「……残りは明日にするか」



 今日一日で割と頭を使ったせいか、激しい眠気に襲われ、そのまま夢の世界へと旅に出る。



「危機管理能力の激しい欠如!これは問題よ!」



 声がして目を開けてみると、旅に出たのは夢の世界ではなく和風の家だった事を知る。



 そこで俺を見下ろすのは淡いピンクの髪を一部編み込み、人間離れしたその美貌を持った着物姿の女神ーーリリアリアだった。



「再登場が早くないか?」



 俺がそう言うと、リリアリアはこちらを睨みつける。だが、その表情はなぜか嬉しそうだった。


読んでくださりありがたかです


えっ?前回から2時間も経っていない?勢いで書いてしまったので投稿します。



書けるうちに書いて、今は少しでも多くの方に読んで欲しいですので!



次も今日中に!

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