■最も罪深いのは誰だろう(ドキュメンタリー風)
かつて、バブル期に公費で建築が始まり、一度も営業することなく破産した曰く付きの高層リゾートホテルがありました。
当初は外観完成後に内装工事のち什器搬入という段取りでしたが、バブル崩壊で白紙撤回。その後は長期不況で工事再開の目処が立たず、そのまま廃墟と化したホテルには、怖いもの見たさて不法侵入する旅行客、窓が割れてラクガキだらけの巨塔が景観を乱していると嘆く地元民、解体したいが予算が付けられなくて頭を抱える役人が存在する状態でした。
取り壊せないまま、朽ち果てるに任せていた建物には、ついに放火犯が現れる始末。
通報で駆けつけた隊員によって火は消し止められたものの、建物は全焼し、放火犯の目撃証言や物的証拠は見つからないまま、捜査は打ち切りに。
焼け残った残骸は、放火前に概算されていた解体費用の百分の一で処分が完了し、公地が民間に売却されてからは、イメージが一新。
更地になった跡地には周囲の環境を活かした自然体験施設が完成し、今では往時の面影は無く、家族連れに人気のレジャースポットになっています。
ただ、放火犯が見つからなかったためか、公地を買収したオーナーが、裏で事件に関与しているのではないかとの噂だけが、周辺住民のあいだで広まっているそうな。