strange man
ヘブロン・リクイッド合同軍を破り、再び3カ国を平定したヴァルデミリアン。
他の惑星の文明に多大な干渉は禁止されているため次の旅へ出ることに。
レムリアの涙を後に次の冒険が始まる。
ヴァルデミリアンはスキッドガルドから西へと移動していた。
ユースミールからの情報だと、スキッドガルドはロジール大陸に位置し
地球の地図に照合すると、フィンランド辺りだ。
ドローンによる周辺地図のデータを作成すると、この惑星は地球と同じ
地図となっている。
やはりここは地球なのか?
しかし、プレストルの資料では魔王軍という存在は記録されていない。
また魔法というテクノロジーも一切明記されていない。
滞在すればするほど知識と謎が増えていく。
”生命体反応があります。近くに着陸します”
ポルト号が着陸したのは、小高い丘の上であった。
「反応はどの方向だ?」
”この森の奥2kmほど先です”
上空にドローンを帯同させつつ、森へと入っていく。
鬱蒼とした森林は月明かりも届かず、ヘルメットがなければ1m先
もわからないほどだ。
「ポルト、本当にこんなとこに生命体がいるのか?」
”反応を確認できました”
「本当かよ・・・」
しばらく歩くとドローンから情報が出力される。
この先に古城が存在しているようだ。
しばらく進むと、森林が途絶え平原が広がる。
そこには人気のない古城が見えた。
「こんなとこに人間が住んでるのか?」
サーモグラフィーで確認すると、城の中に確かに反応がある。
城門までたどり着くとまるで俺を待っていたかのように勝手
に門が開いた。
「招待客として認識されてるようだな」
俺が歩き始めると次々と扉が開いていく。
階段を登り一番大きな扉が開くと、そこには男が立っていた。
(おかしいな・・・サーモグラフィーには体温が表示されてない)
「100年ぶりの来客と思ったが、かなり珍しい客のようだ」
部屋には明かりが一切なく、人気もない。
男は椅子に座るとヴァルデミリアンにも座るよう促した。
「おっと失礼。私はデミトリウス伯爵。この城の主でもある」
「貴公は・・・言葉はわかるかね?」
「ヴァルデミリアンだ」
「ほうほう、これは驚いた。魔王軍のイントネーションではないか」
「しかし・・・君は魔王軍ではないだろう」
デミトリウス伯爵と名乗った男は自分勝手に話していた。
「あぁ・・・申し訳ない。私の悪い癖なのだ。相手を洞察して言い
たい事などを先走って言ってしまうのだよ」
「寂しがり屋なのか?」
「!!!!まさに!その通りだよ。私は孤独と共に生きているからね」
テーブル越しにお互いを見る。
異形の戦士と青白い肌をした紳士。
「たぶんだが・・・君のその鎧のせいで光がなくても私を確認できる
のかな?」
「そうだな。それにあんたに体温がない事もわかる」
「そこまでわかるのか!素晴らしい・・・」
「心拍数も感じないし、敵意も感じない」
「おぉぉ・・・長生きはしてみるものだ。こんな珍しい来客は300年
ぶりだ」
「300年も生きているのか?」
「300年以上だ。それに君はこう思ってるだろう。魔王軍なのでは?と」
伯爵は2つのグラスにワインを注ぐと、1つは浮いてヴァルデミリアンの
前に置かれる。
伯爵はワインに口をつけると、一気に飲み干す。
「先程の答えだが、半分は正解で半分は不正解だ」
「ある時は魔王軍として戦い、ある時は人間側として戦った」
「結果、どちらからも忌み嫌われる対象となってしまったがな」
伯爵は悲しそうな顔をしていた。
「今じゃ誰もここには寄り付かず、死ぬこともできない暮らし
をしているんだ」
「お前の存在は何なんだ?」
「それは私も貴公に問いたいが、まず私から答えよう」
「私は便宜上、吸血鬼といったところだ。ただ、彼ら
のような様々な制約の下、永遠の命を与えられてい
るわけではないがね」
「貴公は何者なんだね?」
「俺はこの惑星の生命体ではない。別の惑星からきた」
「惑星!それはどういうことなのだ?」
伯爵はワインを新しく注ぐと興味深く話を聞いてきた。
「あそこに見える月はわかるか?」
「あぁ、夜空に浮かぶとても美しい物だ」
「あれより遠い星からここにきた」
伯爵は頭の中で今の話題を反芻していた。
すると目が妖しく赤みを帯びる。
「素晴らしい!実に素晴らしい・・・。普段なら信じられない話でも
貴公を見ていると信じられる」
「貴公も私同様、永遠の命があるのか?」
「我々の一族はだいたい100歳前後が寿命と言われてるな」
「そうなのか・・・」
伯爵は寂しそうにする。
「貴公とはもっと語り合いたい。できれば30年ほど時間をかけたいが
寿命があるなら難しいな」
「もし予定がなければ我が城にてしばらく滞在するといい」
この謎めいた男の提案に俺は一瞬考えたが、特に敵意も感じられないし
知的レベルが高そうなので受け入れることにした。
これがデミトリウス伯爵との出会いであった。