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仮説検証



「……そろそろ魔王軍の幹部でも倒すか」


ベルトランが焚き火の前でつぶやく。


「強い敵が消えていくから、こっちは強くなる。正しい循環だろ」


「正直、今の研究してる魔法は色々使いづらいんだ。相手が強い方が効果がわかる」


マテウスが指先で小さな火花を弄ぶ。

火花は踊り、すぐに握り潰された。


「魔王軍の中核を攻めるのは時期尚早です」


ミーナが言う。声が乾いている。

彼女は“常識”を持っているが止める力がない。


「ミーナ、心配しすぎだ。俺が盾になる。いつも通りでいい」


ジャクソンはそう言った。

言ってはいるが、瞳が鈍い。疲労は積み上がっているはずなのに、彼は“疲れていない顔”をしていた。

回復で押し潰された疲労が、どこにも逃げ場を見つけていない顔だ。


ベルトランが立ち上がる。


「魔王軍の拠点に踏み込む。遅れたら、他の勇者候補に結果を持っていかれる」


結果。結果。結果。

仲間は結果のための駒。

本人は気づいていないか、気づいていて見ないふりをしているか。


マテウスが頬を歪めた。


「魔王軍の中核なら、たぶん……面白い。俺の魔法がどこまで通るか」


ミーナが息を呑む。


「のんびりしてたら名声を取られる」


ベルトランがそう締めた。

全員、違う場所を見ている。

それでも結果が出るから、誰も止まらない。

周辺の国々も結果しか求めない。

この歪みは肯定され続けてきた。

彼らは近隣諸国から一目置かれている勇者パーティだった。

実力、装備共に選ばれし者では?と囁かれていた。

それに伴う実績がさらに必要だった。


そして彼らは古い城を見つける。

“魔王軍の拠点”そう聞かされていた。



ポルト号内部


「そうだ。この辺に馴染みのある古城があるのだよ」


デミトリウスが突然語り始めた。


「昔から魔王軍と人類の拠点争いになってた古城でね。今はどっちの勢力内か。そもそも、まだあるのか」


「そんなとこ行く必要あるのか?」


「読みかけの書物があるんだ。それを取ってきてもいいかね?」


「断っても行くんだろ?」


デミトリウスはニヤリと笑う。


「ポルト、その山を二つ越えたとこに着陸してくれ」


ポルト号が着陸した森の先に古城はあった。

しかし、ボロボロの状態のため今は所有者が不明のようだった。


「うーん、ここはもう使わなくなったのか」


デミトリウスは少し寂しそうだった。



ベルトラン達は城門をくぐると、冷たい空気が肌に張り付く。

廊下の奥。崩れた広間。

そこに――黒い鎧。


異世界の戦士。

邪悪に見えた。というより、そう“見えたくなる”雰囲気があった。

強者の気配が、空間に滲んでいる。


ベルトランが剣に手を掛ける。


「……いたぞ。魔王軍だ」


「違うかも…」


ミーナが不安そうに言う。


「違ってもこの強さは“邪魔”だ」


ヴァルデミリアンから放たれる空気は彼らにとって

排除対象だった。


マテウスの口元が上がる。


「色々試せそうだな」


ジャクソンが前に出る。盾を構え、いつもの隊形。

ベルトランが斜めに立ち、マテウスが後方、ミーナがその更に後ろ。


「名乗れ」


ベルトランが言う。

ヴァルデミリアンは答えない。

代わりに、広間の奥から声がした。


「可能性のお出ましだ」


振り返ると、壁際に男がいた。

デミトリウスはワインを片手に、古い書物を眺めている。


「この城は、昔“勇者の死”が記された場所だ。皮肉だね」


デミトリウスが笑う。

その笑みが、どこか子供じみている。


ベルトランが苛立ったように踏み込む。


「猶予は与えたぞ」


マテウスの魔法が先に走った。


詠唱破棄と共に指先から高レベルの光線魔法が放たれた。

しかし、それはヴァルデミリアンのプラズマシールドで遮られる。


「やはりお前は“邪魔”だな!」


マテウスが呪文の詠唱を始める。


「ベルトラン、ジャクソン、時間を稼げ!」


二人がヴァルデミリアンとの距離を詰め、攻防一体

となって押し寄せる。

ベルトラン 850+

ジャクソン 600


(+てことは何か隠してるのか)


ベルトランの素早い連撃が繰り出される。

それをスウェーで避けるとジャクソンが大盾で体当たり

をしかけてくる。

膠着したその時、ベルトランは自身に攻撃力上昇の

バフをかける。


ベルトラン 1000+


(ほう、魔法剣士か)

デミトリウスはほくそ笑む。


そして間髪入れずヴァルデミリアンを切りつけた。

激しい金属音と共に兜に火花が散る。


「やるじゃねーか!」


ダメージは全く通っていなかった。

ベルトランは驚愕した。

今までこの攻撃でいくつもの命を仕留めてきた。

なのになぜ…?


「怯むな!次で仕留めろ!」


ジャクソンの声にベルトランは我を取り戻す。


「雷の力よ!我が敵を蹴散らせ!」


ベルトランの剣が雷を帯び斬りつける。


「受けて立つぞ」


ヴァルデミリアンもスピアのプラズマを上げて受け止めた。

互いの武器が交差した瞬間、火花が飛び散る。

ベルトランは吹っ飛ばされ、両腕が無くなっていた。

ジャクソンは上半身が焦げついてる。


「ベルトラン!ジャクソン!」


ミーナは回復魔法を唱え始める。


「ミーナ!ベルトランを先に回復しろ。俺はこいつを止めておく!」


ジャクソンは瀕死ながらヴァルデミリアンにタックルをした。


「仲間想いだな」


ジャクソンを投げ飛ばそうとした瞬間、マテウスが

叫ぶ。


「火龍の彷徨よ、焼き尽くせ!」


マテウス 1150


「ほう、魔法lv10か。人間にしては勉強してる」

デミトリウスは嬉しそうに言う。


マテウスが召喚した火龍からブレスが放たれる。


「おいおい、仲間ごとかよ」


炎はジャクソンとヴァルデミリアンを飲み込む。


「ジャクソン!」


ミーナの叫びが鳴り響く。


「詠唱に時間かかったが、これに耐えられまい」


マテウスは自分の魔法に酔いしれている。

しかし、目の前には無傷のヴァルデミリアンが

立っていた。


「ばかな!」


炭化したジャクソンを抱き抱えている。


「ひでーな、お前らの仲間じゃないのか?」


「ミーナ!蘇生しろ!」


ミーナは高位蘇生唱える。


ジャクソンの体に血と肉が戻り始める。


「俺が仕上げてやる。狂戦士転生!」


「ほう、二重魔法か」


デミトリウスが笑みを浮かべる。


蘇生と同時にジャクソンの魂を狂戦士に上書きし、

殺戮マシーンへと変える。


「マテウス!なんてことを…」


ミーナは驚きを隠せていない。

しかし、マテウスは薄ら笑いをしている。


「研究していた邪法が使えたぞ!これを量産すれば

俺たちは無敵だ!魔王も倒せるぞ!」


殺意だけが存在するジャクソンはヴァルデミリアンへ近づく。


「お前は頑張ったよ。楽にしてやる」


ヴァルデミリアンはジャクソンを労うとlv5のショルダーキャノンで撃ち抜く。

ジャクソンは爆散し、跡形もなく消えていた。


「ミ、ミーナ!蘇生だ!早くしろ!」


ミーナは呆然としている。

(蘇生?誰を…何を…?)


「その状態の蘇生はさらに高位の魔法が必要だね」


デミトリウスがアドバイスをする。


「う、うるさい!俺に指図をするな!ベルトラン!一旦退却するぞ!」


マテウスが転移魔法を唱えようとした時、両肩に毒酸のハンターディスクが刺さる。

マテウスの肩が溶け始める。


「ひぁー!なんだこれぇ!」


「死んで詫びろ」


プラズマキャノンがマテウスの頭を吹き飛ばした。

先ほどとは違い静寂が訪れる。

ミーナは呆然としている。


「まだだ!」


ベルトランが剣を手に立っている。


「俺が、倒す。俺が――勇者だ」


ここからは駆け引きがない。

純粋な戦闘能力。


ベルトランの剣技が走る。

鋭い。速い。

だが致命には届かない。


「闘神の加護よ、我に力を!」


ベルトランが輝き始める。

命を犠牲にし、すべての能力が上昇する。


ベルトラン 1350


互いに走り寄り交差する。


キィーーーン!!


金属がぶつかる音と共にベルトランが鎧ごと真っ二つになった。


「ベルトラン!!!」


残されたミーナは笑い始める。


「あははは…蘇生、誰から…蘇生…」


自我を支えられる精神力が尽きていたようだった。


デミトリウスが近づくとミーナに魔法をかける。


「仮初の安息を」


ミーナの記憶をパーティを組む前まで消した。


「こいつら、何者だったんだ?勇者とかなんとか」


「勇者候補といったところだね」


「え、あれ本当だったのか?」


デミトリウスは嬉しそうに笑う。


「彼らは可能性を秘めていた。推進力、自己犠牲、探究心、慈愛。でも、同じ方向は向いてなかった」


「勇者パーティてのはね、それが強固じゃないとダメなんだ。崇高でも狂信的にもね」


「あいつらは何で襲ってきたんだ?」


「貴公の存在が危険だったのだ。魔王軍であれば倒さなければならないし、勇者だとしたら自分達の名声の邪魔になる」


「傍迷惑だな」


「それでも貴公がこの惑星に来た時だったら、勝てなかっただろう?強くなってるのだよ」


「急に褒めるなよ。気持ち悪い」


「もし貴公に出会わなかったら、そこそこの勇者パーティになっていたかもしれない。いまとなってはだが…」


デミトリウスの目にはもう一つの事実を観ていた。

ヴァルデミリアンが現れた意味の仮説を進めていたが、それが確信へと変わっていた。


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