漂流1日目
成人の儀式のため、地球を目指した俺は緊急事態によりコールドスリープから起こされる。
とりあえず不時着した先は地球ではない惑星だが、どこなのかさっぱりわからない状態だった。
ここは一体どこなんだ?
「ポルト、ここは地球じゃないのか?」
”適切な情報を現在はお答えできません”
「参ったな・・・。この惑星から出ることは可能か?」
”航路情報の再計算に膨大な時間が必要となります”
「つまり、しばらくここにいるってことか」
”緊急事態マニュアルに沿って行動してください”
仕方なく船が故障していないかチェックをする。
特に外傷及び内部破損もないようだ。
窓から見る風景は森が広がっており、先に丘のような
物が見える。
「ここの自然環境はどうなんだ?」
”惑星プレストルと差異のない自然環境のようです”
「ヘルメット無しでも生きては行けるのか」
どっちにしろしばらく滞在することになったので、俺は
ノーマルスーツを着ると探索に向かうことにした。
サポートドローンを帯同し、周囲の情報を集める。
光学迷彩をオンにし森の中を走り始めた。
途中、この惑星の生物を何度か見るが特に好戦的でもなく
ある程度共存しているのが確認できた。
30分ほど探索をすると、廃村のような集落にたどり着く。
サーモグラフィーには特に生命体は表示されない。
次の場所に移動しようとした瞬間、突如生命体の反応が
出た。
屋根の上で確認すると、人型の生命体が2体確認できた。
この惑星の上位生物なのか、手には武器のような物を持っている。
また今までの生命体と違い、敵意のような反応も見られる。
「ふむ、とりあえず殺すか」
俺はロックオンするとプラズマキャノンを撃つ。
「グアー!」
緑色の皮膚をした生命体が絶叫と共に死んだ。
「ナ、・・・ダ! ド・・ラダ?!」
この惑星の言語が翻訳されて聞こえるが、サンプルが足りない
ためか所々聞こえない。
とりあえず武器が効くことがわかったので、もう1体の方で
色々試してみることにした。
俺は目の前に接近すると、光学迷彩を解除した。
「ナ・・!?オ・・・カラキ・・・?」
俺に驚いたもう1体は羽があって、飛び去っていく。
俺はロックオンするとハンターディスクを凍結モードにして投げる。
10m先で着弾し、地面に落ちていった。
「あー、俺の言葉わかるか?」
羽が凍結されて身動きの取れない生命体は恐怖に慄いていた。
「お前たちはこの惑星の上位種か?」
「ジョ・・・・?ナン・・・・リワ?」
うーん、やはり翻訳にはまだ時間かかるな。
俺はこの生命体を船に持ち帰ることにした。
船内の生命体保管室に入れ、体を固定する。
「ポルト、これを使って情報を構築してくれ」
”わかりました。個体の生命についてはどうしますか?”
「情報が取得できなくなった段階で用済みだ。破棄しろ」
”わかりました。それでは作業に移ります”
「オ・・・!・・・オウグ・・・!ヤ、ヤ・・ロ!」
その間、俺は奴らがもっていた武器を調べていた。
殺した方は木の棒のような物だ。
こんなもので戦うのか?
そして調べてる方は動物の歯のような物がついた剣をもっていた。
こっちは攻撃目的がはっきりとわかる。
この武器を見る限り、文明レベルはさほど高くなさそうだ。
携帯ゲームでしばらく時間を潰していると、ポルトから知らせがきた。
”あの個体を使って取り出せる情報は全て取得しました。死体は焼却
しました”
「で、どんな奴らなんだ?」
”知的レベルはそれほど高くはなさそうですが、組織として動いて
いるようです。彼らは斥候役として所属していたようです”
「言語はどうだ?」
”脳を調べた結果、彼らの組織専用の言語とこの惑星共通の言語が
存在するようです”
「ということは、少なくとも2つ種族が存在してるってことか」
”喜怒哀楽の感情も確認できたので、地球にいる人間に近い種族
と予想されます”
「とりあえず言語データの精査をしてくれ。会話が成り立つなら
より情報は集めやすい」
”わかりました。データベース化の作業に移ります”
「惑星プレストルとは通信はできないままか?」
”通信網は遮断されているようです。こちらも復旧作業を行います”
通常、儀式の間は通信は許されないが、緊急事態の時は許可されている。
しかし、今回の場合はそれ以上の状態のようだ。
一度に多くの事が起きた今日はえらく疲れ感じ、俺はポルトの作業を
待っていると自然と眠りについていた。