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惑星の意思

東の駐屯地にリディウスと向かうヴァルデミリアン。

選んだ理由を知るため、あえて突き放す。

その結果、リディウスは二重人格の忍者ということがわかった。

二人で強敵エルダーワイトを倒し、無事駐屯地を確保する。

東のモンスターを制圧し、二人は無事リューンに帰還する。


「あの、私の事は内密にお願いします」


「わかってる。その方がお前は生きやすいんだろ」


ギルドに寄ると冒険者たちが出迎えていた。


「本当にエルダーワイトを倒したのか?」


「あれって不死身じゃなかったのか」


「無敵過ぎる・・・」


冒険者たちの羨望の眼差しを受けながら賞金を受け取る。


「お前にやるよ」


「え、私に全部ですか?」


「あぁ、その働きを充分にした」


12万Gという大金を渡されたリディウスは、右往左往している。

するとキプルス騎士団の男達がやってきた。


「おい、本当にお前も手伝ったのか?」


「木に隠れてたんじゃないのか?」


男達はリディウスをバカにしている。

ヴァルデミリアンは男の肩を掴むと出口に放り投げる。


「ぐわ!」


「何もできない子犬が狼を侮辱することは許さん」


「こいつが狼だと?」


リディウスを見ると首を振っている。

それを察したヴァルデミリアンは無言でギルドを

後にした。


僧院へと向かうとイルフェは目が覚めていて、掃除の

手伝いをしていた。

ヴァルデミリアンの存在に気づくと恥ずかしそうに

近づいてくる。


「あ、えーと・・・この前は命を助けてくれてありがとう」


「なんじゃ、もっとしっかり礼を言うと思ったぞ」


「こ、これでもちゃんと言ってるつもり!」


イルフェは顔を赤くしながらマスター・クワイに噛み付いた。

ヴァルデミリアンは布を巻いた杖をイルフェに渡す。


「え、これ私に?」


「戦士には相応の武器が必要だ」


イルフェは布を取ると、そこにはエルダーワイトの杖があった。

杖全体を氷の結晶が薄く覆っており、上等な装備だとわかる。


「これ、凄い物よ・・・。いいの?」


「快気祝いだ。それに俺は杖は使わん」


杖を持ったイルフェをスキャンすると、個体値が530+αと出ている。


「使い方はわからんが、持ち主は同時に3つの魔法を使っていた。

 奴の資質なのかその杖の性能かはわからん」


「それはエルダーワイトだからよ」


「お前は氷魔法は使えないのか?」


「つ、使えるわよ!この杖だって使いこなしてみるわ!」


「して、ワシには?」


マスター・クワイが笑顔で待っている。

ヴァルデミリアンは余った薬草を手渡した。


「とほほ、ワシが作ったのが帰ってきただけか」


ヴァルデミリアンは二人への用事が済むと、ポルト号へと戻った。


「お帰り。結構苦戦していたようだね」


伯爵が笑顔でヴァルデミリアンを出迎える。


「お前は相変わらず映像で楽しんでたのか?」


「それはもう。ワインのいい肴になった。臨場感が凄いので

 私自身も血湧き肉躍ったよ」


「そいつはよかった。永遠の命を楽しんでるようでな」


「あまり自分だけ楽しんでるのも悪いので、私からも貴公に

 お返しがしたい。何でも聞くがよい」


ヴァルデミリアンは色々と考えたが、大きな疑問を伯爵に

問いかけた。


「最近戦っているこいつらの目的は何なんだ?なぜリューン

 が狙われているんだ?」


伯爵は片目で見つめると微笑んだ。


「リューンはどの勢力にとっても、非常に勝手のいい土地なのだ。

 山岳による自然の壁と大きな湖よる土壌の良さ。周辺の国に

 行くには必ずリューンを通らなければならない。そこに税金を

 課せれば金を生む」


「エルフってのはどんな種族なんだ?」


「彼らは非常に長生きでね。時に人間に対し協力的でもあり非協力

 的でもある。世界の傍観者という意味では私と同じだ」


「魔王軍とは関係していないのか?」


伯爵は意地悪な笑みを浮かべると、ヴァルデミリアンを子犬を見る

目つきで見つめた。


「君にはこの世界の根本を教えないといけないね」


「根本?」


「この世界は単純なようで単純ではないんだ。魔王軍、人類、太古の神

 の三つ巴なら単純なんだが、そのようにはできていないんだ」


「どういうことだ?」


「それぞれの勢力内で敵対していたりもする。現に貴公は人間同士の

 争いを経験しているだろう?それが勢力内に収まってるわけもない。

 敵の敵は味方であったりするんだ」


「それとリューンとどう関係してるんだ?」


「言っただろう?あの土地は誰にとっても都合がいい。つまり欲しがって

 いる者は沢山いるんだよ」


ヴァルデミリアンは頭の中のモヤが少し晴れそうになる。


「つまり、魔王軍だけの動きじゃないと?」


「そういうこと。人間だって利益が一致すれば魔王軍と組んだり

 する。会話ができるんだ、話し合いで済ませる

事もある」


「てっきり人間側は他の勢力に対してそれなりに団結している

 と思っていたけどな」


「この世界では人間の勢力も沢山ある。それぞれが世界統一を

 目指してるわけではないが、野心のある国はそう考えている

 だろうね」


「代表的な勢力はどこなんだ?」


「私が知ってる限りでは3つ。東の大国ボルトレス、西の大国ハーデルン

 南の大国オブリビルドだ」


「それぞれの違いは?」


「まずこの3つの国の共通点があるのだ。それぞれの国王は元勇者なの

 だよ。過去にパーティを組んで魔王を倒し、それぞれのやり方でその後の世界を

 統一しようとしているんだ」


「仲間だったのか」


「ボルトレスの王は人間の勇者でサムディーン。伝説の装備を駆使し、

 魔王の首をはねた者として知られている。魔王討伐後、力による

 支配を推し進めている。かなりの強硬派だ」


「ハーデルンの王女はエルフのルイツァ。世界の魔法を熟知し、魔法

 の力によって世界統一を考えている。ただ、選民思想があって

 人間としては疎外される恐れもあるだろう」


「オブリビルドの王は魔族と人間のハーフであるサイクリス。魔族の

 強さと人間の叡智を兼ね備えた男だ。彼は人間と魔族の共存を考えて

 いる。自身の生まれによる価値観がその思想に繋がっているようだ」


「随分詳しいな」


「ちなみにサムディーンは300年以上生きている。その時の魔王を倒

 した際、神からそれぞれの願いを叶えられた結果だ。まぁ、ルイツァ

 とサイクリスは元々寿命が長いから、別の願いをしたのだろう」


伯爵はまるで自分の仲間を回顧するような言い方をしていた。


「今回のリューンでの事はその3国は絡んでいるのか?」


「たぶん絡んでないだろう。もっと小さく野心的な国が絡んで

 いるだろうね」


「なぜ言い切れる?」


「彼らはもっと大きな視野で世界を動かそうとしている。世界の片隅

 にある小金など興味もないだろう」


「ところで、この惑星はそんなに勇者と魔王が存在しているのか?」


伯爵は笑いを堪えながら質問に答えた。


「この世界は不思議でね。どの勢力が強大になっても、必ず敵対勢力が

 生まれるんだ。そして統一されることなく争いが続いている。これの

 意味がわかるかい?」


「この惑星がそれを望んでいるのか?」


「そうかもしれない。私も700年以上生きていて、自分がそのバランス

 を取るための駒ではないかと思ったのだ。だからここ300年は傍観者

 として生きているのだが、世界は私以外の存在を創造し同じことを繰り

 返している」


「俺の存在はどう思う?」


「貴公はどうなのだろう。初めて見る存在なのだが、これはどんな意思

 によってここに呼ばれたのか私もわからないのだ」


「俺が自分の星に帰れないのも何か要因があるかもしれないと」


「そうだね。貴公の存在がこの世界に必要で、そのために帰れないと

 考えてもいいだろう」


俺はこのままこの惑星で生きることになるのか?

プレストルに戻れない今、この惑星の意思に背くことができるのだろうか。





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