合体魔法
ガキーン!!
魔続の持つロッドが、ディーノの頭を叩きつけようとしたのを寸での所で銅の剣で防ぎ、勢いでディーノのは後ろへヨタヨタとよろめく。
「うおっ!?」
「私の初手を防ぐとは、なかなかですね坊や? ならばこれはどうです!? 」
そう言うと灰色のローブを着た魔法使いであろうその魔族は左手をディーノにかざし、火属性魔法を放ってきた。
すかさずアルバートがディーノと魔族の間に入り左手で放たれた魔法を受け止めかき消す。
「魔族だからって必ず強いわけじゃないんですね? 私程度のレベルの人間に受け止めれてしまうのですから」
アルバートは余裕の表情を見せながら、垂れてきた銀色の髪の毛をかきあげる。
後ろではディーノが体勢を整え、アルバートの横に並んだ。
「アルバート、ありがとうな。助かった。」
「この村を救うことが第一優先なのでしょう? だったら、協力しないと奴を倒せないと判断したまで。」
アルバートはディーノには顔を向けずに魔族を見ながら語る。
ニタニタと下卑た笑みをこぼしながらこちらを見ている魔族。左手の指輪が赤色に光り、右手のロッドは緑色に光っている。
あの光は······まずい!
「ディーノ!すぐ私の後ろに!」
ディーノはきょとんとした顔で「え?」という顔をしている。こっ!このバカ脳筋が!
すぐに動かないディーノの腕を強引に引っ張り自分の後ろに。
魔族はニタァ~とよだれを垂らしながら詠唱を始めてる。人間と違い魔族は初級魔法なら詠唱を必要としない、つまり中級魔法以上が来る!
「我は火と風を使役する者、我は命じる、火は風によって火力を増し標的を襲わん。合体魔法炎の大嵐!!」
魔法を合体!?合体させただと?そんな魔法は私が魔王の時は存在しなかった。否!今だって聞いた事がない。
くそ!私に使える魔法防御は初級の物しかないが、ないよりはマシだ。
「魔法防御壁!!」
アルバートの目の前に透明な壁が現れる。
「ひゃひゃひゃひゃ! そんな薄い壁で私の合体魔法を防げるとでも? あなた達も今までの冒険者より多少強いというだけで大した事はありませんでしたねぇ! あなた、人間の癖に詠唱なしで魔法を使えるのは気になりますが、稀にいる『才能ある者』ってだけでしょう。さようなら坊や達」
魔族の放った魔法が襲いかかってきたが、なんとか防げてる。密度を······魔力をもっと注ぎ、集中し強固な防御壁に···。
突然横に気配を感じ視線そちらに向けるとあの魔族がこちらに向けて魔法を今まさに放とうと左手をかざしている。
「あなたがた人間は、どうして一発の魔法攻撃を防ぐ事しか考えてないんでしょうねぇ? 横ががら空きなんですよ! ファイア!」
くそ! 無理だ···。
ビキビキビキビキッ
しまった! 集中力を削がれて防御壁にヒビが!
「ファイア程度なら任せろ! はぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 」
この脳筋バカ!銅の剣なんかで魔法を防ごうというのか!?
くっ! こっちは···もう······抑え···。
パリーン!!
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
砕ける音がした瞬間に炎の嵐に巻き込まれる。
ディーノ···ディーノは?
炎の嵐に上空へ吹き飛ばされ下を見るとディーノがいない。気配も感じ取れない。意識が···と···お···の。
ドン!!!!っと体を地面に叩きつけられたその一瞬だけ気を持ち直し、視界に入ってきたのは満身創痍のディーノが、あの魔族と対峙している姿だった。
それを見たらまた闇が視界を覆い、音も聞こえなくなった。