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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
最終章. 天使との運命の文化祭
39/40

39. あなたのいない夢

怒涛の投稿ラッシュですが、今年が残り一時間となりました。最終話まであと少し……。

 夜、結局眠れずにリビングに向かうと、そこにいたのは幼女女神だった。


「あんたも寝れないのか?」

「明日のお仕事の事とか考えると憂鬱でね」

「へぇー、そうなのか」


 俺はコップに水を入れると、幼女女神とは反対の椅子に腰掛けた。ちょっと水を飲もうとしただけなのに、思った以上に面倒なことになった。

 この時、あれだけニコニコしていた女神は笑っていなかった。むしろ思いつめているような、そんな表情だった。


「奏くん。一つだけ質問。素直に答えてね」

「な、なんだよいきなり」


 急に始まった質問。どんなことを聞かれるのか警戒しながら聞く。


「奏くんはさ、このままエリスと別れていいの?」

「え、な、何?」


 幼女女神はちょっとムスッとする。


「だーかーらー、このままエリスとお別れしていいのかって聞いてるの!」

「このままって、だってエリスは明日には

 天界に帰るんだろ?」


 はぁ、と大きくため息をつく幼女女神。なんか態度が腹立つな。


「あのね、私が聞いてるのはきみがエリスと別れたくないのかって聞いてるの! 帰る帰らないは関係なくて!」

「そ、それは……」


 俺の中で何かが渦巻く。でも、それはやっぱり不可能なことで、俺のわがままで。


「ちっ、」


 露骨に舌打ちをしてくる幼女女神。圧倒的に俺に対しての態度が悪い。だが、俺のせいなのか向こうも不機嫌になっている。


「向こうが誠意を見せてるって言うのに、こっちはなんでこんなヘタレなのかな」

「なっ、ヘタレってお前」


 すると、机をバンっと叩いた。一瞬驚いてビクッとしてしまう。女神の顔は怒っている、というより冷酷に見える。


「なら、自分で確かめてくるといいよ。エリスと別れたいのかどうかを」

「お前、何言って……」


 すると、女神は俺に手をかざした。その瞬間、俺の意識が徐々に薄れていく。まるであの小さな手に吸い込まれていくように、俺の意識は消えていった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 うっすらと開いた目には、眩しい日の光が射していた。時刻は六時半。そろそろ起きないと学校に遅刻してしまう。

 俺は布団から出ると、部屋から出て一階のリビングへ向かう。


「あ、奏。おはよう」

「え、あ、おはよう」

「どうしたの? そんなぼんやりして」

「いや、なんでもない」

「そう。なら早く支度しちゃいなさい」


 珍しく今日は母さんが帰っていた。俺は朝食を済ませると着替えて学校へと登校する。

 俺は学校までは電車で登校するが、最寄り駅までは地元の友達と行くことになっている。


「おー、奏おはよう」

「おはよう奏」

「おはよう、翔、美香」


 昔からの友達、翔と美香。ここ最近になって、久しぶりに二人に再開した。中学ではいじめにあったりして二人と険悪になってしまったが、二人の気持ちを聞いて俺の気持ちを伝えて再び仲良しに戻れた。

 いじめがあったこと、辛かったことは変わらないけど、俺としては過去の話になってしまった。

 三人で歩きながら、他愛もない話をする。


「でね、翔が本当バカでさ」

「お前なー、そういう美香こそあれはないだろ」

「何よ」

「何だよ」


 翔は美香のことが好きだったらしい。最近聞いた話だが、中学くらいから気になってたようだ。

 それを最近美香に言ったらしく、二人はそれを少し意識してるみたいだ。俺は二人が付き合うのは賛成なんだけだ。


「ほんと二人って仲良いよね」

「「よくない!」」

「息ぴったり……」


 すると、急に美香が「そういえば」と話を振ってきた。


「この間行ったカラオケ楽しかったよね」

「ああ、うん。すごく楽しかった」

「え、何? 二人でカラオケ行ったの?」


 翔が驚く。そういえば、ちょっと前に美香がカラオケに誘ってくれたことがあった。あの時、何故か二人で行ったんだよな。


「そういえば、俺も奏と二人でファミレス行ったな」

「えー、そういう翔も奏と二人で楽しんでるじゃん」

「いや、あの時なんで二人で行ったんだっけ?」

「えーと、なんでだっけ?」


 翔とも二人で行った記憶がある。でも、何故あの時に二人で行くことになったのか、理由が思い出せない。

 翔には美香が好きなことを告白された。美香からは翔から告白されたことを相談された。

 でも、二人と何故そういう流れになったのか、思い出せない。

 と、そうしてる間に最寄駅に着いてしまった。二人は地元の公立高校だからここでお別れだ。


「それじゃあ、奏またなー」

「またね、奏」

「うん。また」


 そうして俺は、地下鉄のホームへと階段を降りていった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「と、いうわけで文化祭まで後数日だ。お前ら、気合入れていけよ」

『おー!!』


 学校は週末に控えた文化祭一色になっていた。うちのクラスはタピオカのカフェをするらしい。

 何故だか俺は文化祭のクラスの実行委員に立候補していて、クラスをまとめる役をやっていた。なんで立候補したんだろう。


「柏木くん」


 声をかけられた方を向く。声をかけてきたのは、祠堂さんだった。祠堂さんは同じく文化祭の実行委員だ。


「これなんだけど、これで合ってるっけ?」


 祠堂さんから一枚の紙を手渡される。それは貸し出し物品のリストだった。俺は言われた箇所を確認する。


「うん、合ってるよ。ここは急に数が足りないって増やしたところだね」

「そっかー。ありがとね」

「どういたしまして」


 お礼を言うと、祠堂さんはすぐにクラスメイトのところへ戻っていく。祠堂さんとは、仲が良くないわけじゃないけど特別親しいわけでもなかった。

 だけど、ここ最近はかなり親しく接していた気がする。実行委員が一緒だったからか? それだけで、距離が縮まるのか?

 それに、何ヶ月も一緒に過ごした人がいたような気がする。でも、思い出せない。誰か、大切な人がいたような……。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「それじゃあ、体調管理もしっかりしとけよ。日直、号令」

「起立、礼」


 ようやく授業が終わり、俺は帰宅を始める。俺は部活には特に入ってないため、学校が終わると即帰宅する。

 構内には部活に勤しむ生徒の声が聞こえてくる。


「利麻! 早く料研行こ!」

「やばっ! もう始まっちゃう」


 廊下で部活へと向かうだろう祠堂さんとすれ違った。料研、料理研究部か。そういえば、料理なんてしたことなかったのに、この間何故か簡単な料理作れたんだよな。

 最近は不思議なことばかり起こる。記憶に不明瞭なことが多々あったり、変な違和感があったり。疲れてるのかな?


 キーンコーン、カーンコーン

 キーンコーン、カーンコーン


 夕焼けが照らす校舎に、チャイムの音が鳴り響く。すると、どこからともなく声が聞こえ始めた。


「これが、本当に望んだことなの?」


 だ、誰? チャイムが鳴り終わる瞬間、景色は一変した。校舎は闇に包まれる。今まで見えていた空が、暗黒の黒で満たされる。


「な、何が起こって……」

「答え合わせしよ。本当に望む未来はどれなのか」


 パチっ


 指が鳴る音が聞こえた。そして、急激に頭に激痛が走る。


「うわぁ、ぐあぁぁ!!」


 激痛が走るたびに、俺の頭の中に何かが流れ始める。それは、記憶、今までの、今までの? そう、今までの記憶。エリスとの過ごした記憶が。


「ぐっ、え、えり…す?」


 夢のように忘れていた。俺が全てを取り戻すための日々。俺に、手を差し伸ばしてくれた人との日々。


「えりす、エリス、エリス!」


 ようやく、全てを思い出した。俺は、エリスとともに全てを取り戻して、それで、あの幼女女神に質問された。


「このままエリスと別れていいの?」


 俺はその答えがわからなかった。いや、わかってた。決まってた。でも、それは叶わない望みで、それを忘れようと、隠そうとしてた。

 でも、今見せられた夢。エリスがいなくなってからの世界。それは、元に戻っただけのようで、全然違っていた。

 今までの、エリスとの日々が、楽しかった、嬉しかった、幸せだった。幸せすぎた! だから俺は、エリスのいない日常に違和感を感じた。


「俺は、エリスとまだ一緒にいたい、もっと一緒に暮らしたい! バカみたいな発言して、俺のことをかき乱すけど。そのくせ変な時に頼りになったり、ならなかったりするけど。でも、俺はまだ、エリスと別れたくない!」


 何もない暗闇に、俺は叫んだ。どこかで聞いてるだろうあのムカつく幼女女神に向かって。


「なら、その覚悟を見せてよ。いい加減起きないと、時間なくなっちゃうよ?」


 パチっ


 幼女女神の声とともに指が鳴る。その音とともに、俺はまた意識を失った。

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