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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
最終章. 天使との運命の文化祭
38/40

38. 幼女女神

今年が終わるまで残り二時間。とうとうお話もラストスパートです!

「すみません。こちらどうぞ」

「あ、いえいえお構いなく」


 テーブルの上にお茶が四つ、真ん中にお茶菓子がお皿に乗っている。俺と母さんが並んで座り、その対面にはエリスと、女神と名乗る幼女が座っている。

 女神は小さい手で、お茶菓子を食べるとお茶を啜って一服する。


「あっと、自己紹介がまだでしたね。改めまして、私が天使たちを統べる女神、エルシー・ウテリアと申します。この度は奏くんの件でお騒がせしました」

「いえいえ、そんな。ご丁寧にどうも。私が奏の母です」


 何故か女神はポケットから名刺を取り出して母さんに渡した。もう驚きはしないが天界には会社みたいな理念でもあるのだろうか。

 家に帰るなり家先には幼女が待ち構えていた。この幼女は女神で、エリスの上司にあたる存在らしい。

 そして、話があるとのことで家に上がることになった。家にはちょうど仕事から帰ってきた母さんがいて、男の姿に戻ってたことに驚いた、よりは悲しがってたけど。

 母さんと二人で女神の話を聞くことになった。


「奏くん」

「は、はい」


 見た目は幼い女の子。なのに、何故かかしこまってしまう。まるで、彼女に威厳があるかのように、ライオンに睨まれているように。


「今回の件で君に発生してた不幸の感情は正常値に戻りました。これで、私たちが行うサポートも終了になるの。今回は色々あったから女神の私自ら挨拶に来たってわけです」


 サポートの終了。それはつまり女としての、奏向としての生活が終了することを意味する。


「明日には全て元どおりになります。あなたの生活も、人間関係も、全てが男として生きていた通りに変更されます。もちろん、仲直りした友達とは仲を戻したままになるから安心してね」


 エリスは終始顔を暗くしている。女神は話を続ける。


「そして、エリスも天界に帰るわ」


 その言葉に、エリスはハッとすると話始めた。


「えと、短い間でしたがお世話になりました。ここで暮らしてた日々はすごく楽しくて、帰っちゃうのが悲しくなります」

「エリスちゃん帰っちゃうんだ。明日から寂しくなっちゃうわね」


 申し訳なさそうにするエリスに、母さんは寂しそうに話す。


「その代わり、今日は私がお世話になったお礼も兼ねて腕によりをかけた料理を作りますから。お母様も良ければ食べてください」

「悪いわよ。私も手伝うわ」


 二人はそう言ってキッチンへと向かう。いきなりの出来事に俺の頭はまだ状況を把握できていない。

 明日には、エリスが帰って元に戻ってしまう。もう、エリスにも、会えない。

 考え事をしていると、ふと視線が女神の方を向く。女神はニコニコしながらこっちを見ている。


「えーと、何かあります?」

「ううん。ただ、君がエリスが選んだ子なんだなーと思って」


 表情を変えず、じーっと俺を見てくる女神。


「エリスが選んだって?」

「エルシー様は何食べたいですか?」

「わたしー? 私はねー、唐揚げ!」

「わかりました。そしたら私はお買い物に行ってきますね」

「エリスちゃんよろしくね」


 なんだかんだで俺の質問は流れてしまった。それからも、掴み所のない女神と他愛のない話をしつつ料理が完成するのを待った。

 はっきり言ってめちゃくちゃ疲れた。精神的な疲労感をすごく感じる。

 エリスたちが作ってくれた料理は豪勢だった。初めてエリスに作ってもらったときのように、俺の好物もいくつか作られていた。


「ん! 美味しい! 流石エリス、料理はお手の物ね」

「お褒めいただきありがとうございます」

「私の料理はお口に合いますか?」

「はい! お母様の料理もすごく美味しいです」

「それは良かったわ」


 美味しい食事のはずなのに、なかなか料理が喉を通らない。そんな中、女神が話を始めた。


「それにしても、エリスがこんなに楽しそうにしてて安心しました」

「エルシー様!」


 エリスは少し恥ずかしそうに女神に抗議した。女神は笑いながらそれをいなす。


「実は、エリスはこの天使の仕事があんまり好きじゃないんですよ」

「エリスちゃん、そうだったの?」

「いえ、好きじゃないわけではなくて、その……」


 エリスは困った顔で返答を迷っていた。それでも女神は気にせずに話を続ける。


「この仕事、人の不幸を幸福に変えるってことは結構骨太なメンタルが必要でして。今回の奏くんみたいに塞ぎ込んだり、話を聞いてもらえなかったりってことも多いいんですよ。ねえ〜、奏くん!」


 ニコニコ笑顔の幼女女神は俺に挑発的態度をとってくる。


「あんたなぁ」

「ふふふ、それでエリスはここ何回かキツイ案件に当たってしまいまして。この子、この性格だからかなり落ち込んじゃって」

「もう、エルシー様やめてくださいよ!」

「これからがいいところなのに。それで、そんな時に出会ったのが奏くんなんです」

「奏、ですか?」

「それって」


 ニコニコしながらこちらを見ている女神。対してエリスは顔を赤くして俯いていた。


「そうです。まだ少年だった奏くんに出会って、それでこの子は元気をもらったんです」

「っ〜〜!!」

「そうだったの? エリスちゃん。ん? 奏、どうしたの?」


 昔出会ったことで、エリスに元気を与えていた。そんなことをいきなり言われたら誰だって赤面するだろ!


「は、はぃ、お話の通りです」

「というわけで、奏くんの不幸をどうにかしたいってことで今回の件をエリスに任せたんです」

「そうだったの」


 嬉しそうな顔をする母さん、対して当人二人は顔を赤らめ俯き、元凶はニコニコと俺たちを見て楽しんでいる。

 食事会はそんな感じで幕を閉じた。結局、料理の味は最後までよくわからなかった。



 食事が終わるとそれぞれで過ごすことになった。母さんはキッチンで食器を洗っていて、幼女女神はテレビを見ながら爆笑してる。


「奏、脱衣所のタオルとか無くなってるから持ってきてくれない?」

「はいはい」


 俺は二階に上がると、ベランダのある部屋に置かれてる洗濯物からタオル類を畳み、脱衣所に持っていった。


 ガチャっ


「あ」

「あ」


 ちょうどよく風呂場から出てくるエリスに遭遇してしまう。目があっても、特に何もなくタオルを棚に置くとエリスに一枚渡した。


「あ、ありがとうございます」


 そして、そこでようやくエリスが全裸であるということに気がつく。


「あっ、ご、ごめん!」

「い、いえ」


 今までは同性同士だったし、何回か一緒に入ってたからすっかり忘れていたが、今は俺は男であって流石に女の裸を見るのはまずい。

 少し照れつつ部屋を後にしようとすると、エリスに声をかけられた。


「奏。前は一緒に入ったりもしてたのに、なんだか不思議ですね」

「そう、だな」


 話したいこと、きっとお互いに言いたいことがある。けど、それはもう変えられないことで、俺たちはそのことを話すことが怖い。

 そのまま「じゃあ」と言って脱衣所から出ていく。エリスと、距離がポッカリできてしまったように感じた。

 そのまま、夜は過ぎていき寝る時間になってしまった。幼女女神はエリスと一緒に寝るらしい。挨拶を済ますと、部屋へと上がっていった。

 俺も母さんに一言言うと部屋へと向かう。布団に入るがなかなか寝付けない。と思っていたら、意外にもすっと寝てしまった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 目が覚めた。時間は寝始めてから一時間しか経ってない。まだまだ夜なのに、さっきまで寝れていたはずなのに目がぱっちりと覚めてしまった。

 とりあえず、水でも飲んでくるか。そう思って俺は一階に下りてリビングへと向かう。すると、一つの人影が見えた。


「やあ、奏くんも眠れないの?」


 リビングで椅子に腰掛けていたのは幼女女神だった。彼女はリビングの窓から差し込む夜空を見上げていた。

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